第93回 キン肉マングレート

オレ流超人批評
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キン肉マンのマスクデザインを踏襲した第二のキン肉マン! 主人公類似キャラがもたらした特異な個性と、その後の作品への偉大な影響力とは一体何だったのか?
出身 アメリカ・日本・イギリス
超人強度 95、200、117万パワー
必殺技

マーシャルアーツキック
テキサス・コンドルキック
キング・ジャーマン

主な戦績 四次元殺法コンビ○(マッスル・ブラザーズ)
はぐれ悪魔コンビ○(マッスル・ブラザーズ)
ヘル・ミッショネルズ●(マッスル・ブラザーズ)
※マシンガンズで勝利
地獄のカーベンターズ○(マッスルブラザーズ・ヌーボー)
2000万パワーズ○(マッスルブラザーズ・ヌーボー)
世界五大厄●(マッスルブラザーズ・ヌーボー)
※坊っちゃんズで勝利

作品における元祖“ダッシュ”キャラ

 ヒーローマンガや特撮に付き物なのが、主人公のデザインに近しい仲間や、偽者キャラの登場です。

 『仮面ライダー』には1号とデザインがほぼ同じ2号が、『ウルトラマン』にはザラブ星人が化けた、ややツリ目な偽ウルトラマンが登場しています。

 格闘マンガの先輩としては、『タイガーマスク』においてビッグ、ブラック、キングという名を冠した三名の悪役タイガーが、そしてラスボスとしてタイガー・ザ・グレートという最後のタイガーが登場しました。

 これらの演出はヒーロー物の王道というか、お約束エピソードだといえるでしょう。味方として登場すれば

おおっ、強力な仲間が増えた!

頼もしい!

と、ヒーローに準ずる能力が無条件で期待できる、刺激的な戦力増強にワクワクするし、敵として登場すれば

なんだ、ニセモノめ!

こんな不届き者は叩きのめしてやれ!

と、その失敬な存在が一方的に憎悪の対象となって、ヒートアップすること請け合いなのです。つまりどちらに転んでも盛り上がるという、鉄板の優良設定なんですね(笑)。

▲仲間、敵…どちらでも鉄板展開です。

 そして『キン肉マン』においても、この演出は当然のことながら採用されています。その役割を担ったキャラこそが、キン肉マングレートでした。

 彼は『夢の超人タッグ編』において、キン肉マンのタッグパートナーというポジションで登場しました。その正体は皆さんご存じの通り、キン肉マンの師匠であるプリンス・カメハメです。

 はぐれ悪魔超人コンビの呪術的策略により、テリーマンやモンゴルマンという、パートナー候補から次々とタッグ結成を断られていたスグル。この八方塞がり状態の中で、救世主として登場したのが忘れられていた存在である師匠のカメハメでした。

 このストーリー展開にはリアルタイムで読んでいた当時、

その手があったか!

と、ゆで先生の話の持っていき方に、かなり感心させられた思い出があります。

 そしてゆで先生はこのカメハメを下地として、ヒーロー物の伝家の宝刀であった“味方の類似キャラ”演出を被せてきたわけです。

 それを数学的な表現で言い換えるのであれば「’(ダッシュ)」であり、キン肉マングレートはキン肉マン’(ダッシュ) として、その特殊なダッシュキャラ人生を歩み出したのです。

色の謎が残るフォルム

 その風貌はキン肉マンのダッシュキャラのため、当然のことながらキン肉マンと酷似しています。

 とくにマスク部はトサカ頭にダンゴ鼻、タラコ唇といったキン肉マンの特徴を完全に取り込んでおり、額にはキン肉マンの象徴ともいえる“肉マーク”が燦然と輝いています。

 唯一異なっている部分が眼の形状で、直線的な多面体で表現されるその眼は、どちらかというと厳しい表情を印象づけます。

 しかしグレートはその上になだらかな曲線の眉毛を描くことでそれを打ち消し、全体を柔和な表情にさせて、主人公のパートナーとしてのとっつきやすさを演出していたと言えるでしょう。

 コスチュームは白のランニングシャツと赤系のパンタロンを掛け合わせたマーシャルアーツスタイルです。これは当時ジャッキーチェンの『スパルタンX』にも登場した、70年代後半に活躍したキックボクサーであるベニー・ユキーデのスタイルを踏襲したものと思われます。

▲怪鳥・ユキーデ

 そしてそのコスチュームイメージに影響されて、初代グレートはローリングソバットなどの、派手な蹴り技を駆使するようにもなります。

 ただ当時高齢キャラだったカメハメにこれをさせるのは

さすがに無理があるのでは…

と、子ども心に少し違和感を感じましたけどね(苦笑)。

 そして今でもよくわからないのが、彼のボディカラーです。カメハメが用意したマスクを見て、キン肉マンは

ああ!! 黒のキン肉マンマスク…!?

と口にしているのですが、知らぬ間に赤に変わってしまっているんですよ(汗)。ジャンプやコミックスの表紙にカラーで登場するグレートは、マスクもボディスーツも真っ赤っかなんです(苦笑)。

▲不思議な現象が起きます(苦笑)。

 このあたりの真相はよくわかりませんが、おそらくは中井画伯がカラー原稿を執筆する際に

…せっかくのカラーページなのに、黒じゃいつもと同じでつまらんよな…派手に色つけたいなぁ

という誘惑に勝てなかったのだと、勝手に推測しております(笑)。観光地に来てその土地の名物料理を食べずに、チェーン店で食事をとるような行為に耐えられなかった、みたいな(笑)。

▲左のお店に行ってしまいました(笑)。

 ちなみに2013年に発行された復刻版コミックスでは

ああ!! 赤のキン肉マンマスク…!?

と変更されているようですね。今回調べるまで全然知らなかったです…つまり現代においては黒のグレートというのは、闇に葬られた幻のキャラとなってしまったのですね(泣)。

依り代超人としてのグレート

 そんな黒だか赤だかよくわからない(笑)彼の大きな個性は、マスクを介した“依り代”超人という特徴でしょう。

 というのも、彼はその中身をカメハメだけに限定をせず、マスクマンというメリットを活かして様々なキャラクターが代替わりでそのマスク被り、グレートというキャラに同化していったからです。

 具体的には

  1. カメハメ
  2. テリーマン
  3. カオス
  4. (イケメン・マッスル)
  5. ケビンマスク

と、5人もの超人が入れ代わり立ち代わりでそのマスクを受け継ぎ、活躍をしました…ってまあ、イケメンはここにラインナップしなくてもよいかもしれませんが(笑)。

▲様々なキャラが中に入ります。

 このように、マスクを介して中身が入れ替わっていくコンセプトは、当時大人気プロレスラーだったタイガーマスクを彷彿とさせます。

 タイガーマスクも初代タイガーであった佐山聡を皮切りに、三沢光晴の二代目、金本浩二の三代目…と、違うレスラーに虎のマスクだけが受け継がれていきました。

 そう考えると、グレートのパンタロン姿はベニー・ユキーデ由来というよりは、初代タイガーマスクがキャリア後期に身に着けていた赤パンタロンスタイルに、ゆで先生が影響を受けたのかもしれませんね。

 ちなみにそれぞれのキャラの二代目誕生の時系列は、

  • 二代目グレート誕生…1983年暮れ(1984年4号)
  • 二代目タイガー誕生…1984年8月26日デビュー

となっており、かなり近しい時期にマンガとプロレスとで似たようなコンセプトが誕生したことになります。

 この時期的な偶然はたまたまだったのかもしれませんが、とても興味深い偶然だったと言えるでしょう。両者ともに同じデザインのキャラが、中身が入れ替わって活動を再開したわけですからね。

 そんな依り代超人であるキン肉マングレートですが、特筆すべきは

同フォルムキャラながら中身が入れ替わるたびに、その正体に属した個性を滲み出していた

という点です。

 つまり見た目は同じなのに、その言動やしぐさによって、まったくの別人に見えるんですよね。視覚から入ってくる認識信号は同じなのに、他の感覚器から入ってくる認識信号の違いでキャラクターの差別化がなされ、それぞれのグレートが生き生きと動いているんです。

 このようなコンセプトは、とても新しいマンガのキャラクター設定法だったと思いますね。では以下にそれぞれのグレートの特徴や、個性の表現方法を考察してみましょうか。

初代グレート

 初代のカメハメグレートは、大人の落ち着きと冷静さが多分に表現されていました。また、自分のことよりも、正義超人界全体を救おうとする高尚さにあふれており、高い次元での精神性が見て取れます。

 ただその行動原理は自己犠牲を伴う行動となることが多く、ゆえにこの『夢のタッグトーナメント編』においては、超人年齢が一番高い彼が、一番体を酷使するという矛盾が生じています。

 そして我々はその正体を知っているがために、彼の行動をとても痛々しく感じるのですが、同時に去り行く世代が現役の世代のためにできることを命がけで行うという献身に、

カ、カメハメグレート…なんて素晴らしき人格者なんだ…

と、深い感動を覚えたものです。

 そのため、初代グレートに感じる個性というのは“自己犠牲”と“導き”だったのではないかと思いますね。

二代目グレート

 二代目のテリーグレートは、それこそ偉大(グレート)なる初代のプレッシャーに悩みぬきながらも、途中で吹っ切れて自分らしさを押し出したキャラでした。

 この“吹っ切れて自分らしさを押し出した”という行動こそが、その後脈々と続いていく

グレートはそれぞれ個性が違ってよい

という基本フォーマットを作ったターニングポイントだったと思っています。

 これがあったからこそ、二代目グレートは若々しさと、粗さの中にキラリと光る強さと、のびのびとした爆発力を感じさせる個性を発揮しました。

 おそらくですが、二代目タイガーである三沢タイガーもテリーグレート同様、偉大なる初代佐山タイガーの築いた実績に対するプレッシャーは相当大きかったと思います。二番煎じの野次も多々あったことでしょう。

 しかし彼もそれに屈することなく三沢光晴自身の個性を打ち出すことで、立派な二代目タイガーとなりました。このあたり、二人の共通性が垣間見られて興味深いですね。

 そしてテリーグレートはスグルとのコミュニケーションにおいても、カメハメグレートとの違いを大きく感じさせました。

 同じいでたちなのに、彼には風格や威厳という壁がなくなっているため、とっつきやすさと自然体のコミュニケーションが、読み手の立場からも感じ取れるんですよね。

▲同じデザインなのに別人に見えます。  ©YUDETAMAGO

 このテリーグレートが発したオーラは、タッグパートナーであるスグルが彼への接し方を大幅に変更するという、大きな影響力を与えています。

 具体的にはカメハメグレートに対しては敬意を前面に押し出した接し方をし、テリーグレートに対しては気の合う仲間の信頼感を前面に押し出した接し方をするようになりました。

 しかも物語の進行上、彼はグレートの中身が入れ代わったことは知らずに、相棒への接し方を変えているのです。

 このように、事情を知らずに発せられた彼のナチュラルなコミュニケーション遷移は、同じ風貌のグレートの見え方をまるで別人に変えさせるという、見事な演出となっているんですよね。

 そしてこのスグルの態度の変化については、モンゴルマンも作中で

以前のキン肉マンとグレートの関係は師弟のようであったが、今の二人は親友同士のようだ

指摘しています。

 このように、タッグパートナーへの接し方の違いを第三者に語らせることでもまた、間接的に同フォルムの異個性という差別化表現を補足しているわけです。これはなかなかの高等表現テクニックだったと思いますね。

三代目グレート

 三代目のカオスグレートについては、万太郎との外見的共通性を持たせるために前髪を露出するスタイルとなったため、そのフォルムにおいては今までのグレートとの差別化がなされました。

 しかし中井画伯は外見での差別化に胡坐をかくことなく、カオスグレートの表情に幼さを追加することで、カオスの若さと経験不足からくる自信のなさを見事に表現することに成功します。

 それは初代、二代目と同様に、フォルム差に頼ることのない、これまた新しいグレート像を確立したと言えるでしょう。

 三代目グレートの特徴としては、マスクを被ったカオスが強豪超人として覚醒するまでの、弱虫毛虫だった情けない姿を包み隠す役割が大きかったように感じます。つまり真の実力が開花するまでのモラトリアムキャラの依り代、という意味合いが強かったわけです。

 それだけにカオスグレートには初代および二代目にはなかった“臆病”な部分が色濃く表現されており、歴代のグレートの中では一番ヘタレな印象を持っている方も多いでしょう。

 しかし皆さんご存じのように、彼がグレートコスチュームを引き裂いて覚醒してからは、初代グレート同様の自己犠牲精神を伴った、八面六臂の活躍をしています。

 そう考えると彼にとってのグレートとは、美しき蝶がかえるまでのサナギの期間であったようにも感じられますね。引き裂かれたグレートマスクやコスチュームは、彼の脱皮後の抜け殻だったのかもしれません。

五代目グレート

 四代目のハラボテグレートは…まあネタキャラなので置いときまして(苦笑)、ラストは五代目のケビングレートです。

 彼のマスクはカオスが覚醒してビリビリに破れたものを、がきんちょハウスのシスターが修復したツギハギマスクでした。ゆえに前髪が露出したカオスグレート同様、外見上での差別化がある程度なされていたグレートだったといえるでしょう。

 彼がグレートに扮していた時間は歴代グレートの中でもかなり短く、グレートという依り代に同化したとは少々言い難いかもしれません。

▲情けない三代目とギダギダな五代目。  ©YUDETAMAGO

 しかしながら、ケビングレートからは自分の命を救うために壮絶に散った先代カオスグレートへの深い敬意と、崇高たる彼の意思を受け継ごうという覚悟と悲壮感が、体中から滲み出るほどに漂っていたことが印象的です。

 そしてこの“先代の尊い犠牲を真正面から受け取った継承者の奮闘”という展開は、カメハメからテリーマンへのマスク継承の流れととても近しく、それはある意味この二人の物語のオマージュだったとも言えるでしょう。

 そしてケビングレートはパートナーであるキン肉万太郎と紆余曲折のやり取りがありながらも、そのタッグチームを『マッスルブラザーズ・ヌーボー』から『ザ・坊っちゃんズ』へと昇華し、見事時間超人コンビの野望を阻止したのです。

グレートの特異性とは

 以上、五代続いたそれぞれのキン肉マングレートの特徴や個性を考察してみました。

 こうしてみると、彼らはひとつのマスク、もしくはフォルムを“依り代”としながらも、それぞれが別個のキャラとして独立している点が印象的です。

 しかし彼らは独立した個性をあてがわれたとはいえ、それぞれが好きなように動いたわけではなく、“初代→二代目”、“三代目→五代目”というキャラクターの引継ぎにおいては、共通した因縁をバックボーンに持ち、同じベクトルで行動をしていた点も特徴的でしょうか。

 そしてその因縁深きバックボーンとは

先代は偉大な功績を残して志半ばに散る

次代は先代が遺していった志を継承する

といった悲壮感漂うものであり、そのキャラクターの引継ぎは、大いなる使命という運命の鎖で強く結びつけられたものだったことが、とても印象深いです。

 つまりキン肉マングレートとは、グレートマスクを依り代としたそれぞれが独立した個性あふれるキャラクター像を確立しながらも、“大いなる使命”を血脈として一つのマスク依り代に同化するという、ある意味二律背反した特性が融合する特異なキャラクターだったのだと、あらためて感じましたね。

“正体暴かれ”のスリル提供

 キン肉マン、ロビンマスク、ウォーズマン…彼らはグレート同様、マスクマン超人であり、その正体は謎というスタンスで作品に登場しています。そのため

素顔はどんな感じなのだろう?

という興味を常に読者に抱かせるキャラでした。

 そしてその興味がドラマを生み出す要因にもなっており、それがあるがゆえに我々はキン肉マンvsウォーズマンの覆面はぎデスマッチ、そしてヘル・ミッショネルズの“マスク狩り”という無慈悲な行為に大きく興奮したわけです。

 また『キン肉マンⅡ世』であれば、ウォーズマン扮するクロエの正体暴きもこの楽しみ方の範疇に入るでしょうか。初登場時はその正体が全くわからないミステリアスキャラでしたからね。

 しかしキン肉マングレートは、読者にはじめからその正体を知られているキャラでした。つまり素顔や正体についての好奇心が発生しないキャラなのです。

 これだと今までのような好奇心を刺激する盛り上がりが期待できないのではないかな、なんて少し心配してしまうのですが、それは杞憂でした。

 というのも、この設定はキャラと読者が秘密を共有しているという感覚を生み出すことになり、グレートの正体が暴かれそうになると

まずい、まずい、まずい!

とキャラクターと一緒になってあせるという、感情移入の度合いが激しくなる現象を生み出したからです。

 カメハメグレートの時は、その高い実力に衝撃を受けたライバルたちがこぞって彼の正体を探り出し、スタミナに難があるという弱みを見せた瞬間に

あの疲れ方はスタミナの消耗だけだと思っていたが…

あれは年齢からくるものだ!

少なくとも超人年齢50以上のベテラン超人!

つまり長期戦に持ち込めば必ず勝てる…!!

見えた、弱点が!

と、皆さんかなり悪い顔を披露し(笑)、我々読者を慌てさせています。

 テリーグレートの時は削られたボディスーツの下から、浅黒い肌ではない白い肌が露出するという危機を見てアタフタし、ミッショネルズのマスク狩り予告が達成され

これがグレートの正体だ!

と開き直ったテリーマンに

あちゃ~

と頭を抱えた思い出のある方も多いかと思います(苦笑)。

 しかしそれくらい彼の正体が暴かれることについては、キャラの気持ちと一緒になってその秘密を守ろうとしたのではないでしょうか…まあ我々は何もできないんですけどね、実際は(苦笑)。でも気持ちはそうだったでしょ(笑)?

 ただこのように

正体がバレちゃう~~っ!

とドキドキしてしまうグレートのキャラ設定手法は、よくよく考えてみると往年のヒーローたちとまったく同じパターンであることに気づかされます。

 ウルトラマンであることを知られてはいけないハヤタ隊員。タイガーマスクであることは絶対に秘密にしたい伊達直人。そして“誰も知らない知られちゃいけない”のデビルマンの不動明。

 巨悪に真っ向挑みながらも、その正体がバレないように立ち回るという、ある種“枷”のついた状態での不自由でリスキーな闘い。しかしそれが大きな共感を呼んだんですね。

 そう考えると、『キン肉マン』という作品では

  • 順目の正体暴き…スグル、ロビン、クロエ etc…
  • 逆目の正体暴き…グレート

という、同じマスクマンたちでもアプローチの違う、二種類の正体暴きストーリーを設定していたことになります。

 そしてこの手法が作品内容のバラエティ化につながり、高密度なコンテンツ形成の一翼を担っていたのではないかと思われます。

 この手法を推理小説やミステリ小説に置き換えるのならば、

  • 犯人が誰かわからない通常ミステリ…スグル、ロビン、クロエ etc…
  • 犯人周知で正体を暴く倒叙ミステリ…グレート

ということになるでしょうか。そして『キン肉マン』は二種類のミステリを楽しめる、お得な作品となっているのです。グレートは後者の『古畑任三郎』タイプだったんですね(笑)。

▲二種類のミステリが楽しめるキン肉マン(笑)。

…じゃあモンゴルマンはどっちかな…?

 モンゴルマンは…正体(犯人)がわからない通常ミステリ設定でありつつも、読者に正体が誰だかモロばれだったという、実質倒叙ミステリ設定の珍しいパターンのマスクマンだったといえるでしょうか…う~ん、ややこしいな(苦笑)。

じゃあさ、じゃあさ、ネプチューンマンは?

 ネプチューンマンは…通常ミステリ設定でありつつも、すぐに正体候補が暴露されちゃった、実質倒叙…ってああ、めんどくさいな、もういいよ(笑)!

運命の五王子への橋渡し

 このように、正体暴きの盛り上がりや、その崇高な立ち位置を含め、キャラクターとして大成功をはたしたキン肉マングレート。それは

  1. 強力な味方
  2. 不届きなニセモノ

という、ダッシュキャラが持ち合わせる二系統の設定のうちの、前者パターンでの成功だったと言えるでしょう。

 そしてグレートに手応えを感じたゆで先生は、次のシリーズでは後者パターンである“不届きなニセモノ”設定での成功も目論み、多種多様のキン肉マンダッシュを登場させました。

 そう、それが運命の五王子であり、『キン肉星王位争奪編』です。このシリーズはまさにグレートで得た利益と経験則を、ゆで先生が全額ベットしたようなシリーズだったといえるでしょう。

 しかしながらそのシリーズは、不届きなキャラがちょっと不届きすぎてやや暴走してしまった部分があり(苦笑)、グレートと同様の大成功だったとは言えなかったかもしれません。

 とはいえそんな中でも、不届き者だと思っていたのに、知らぬ間にとんでもなく強力な味方にすり替わっていたダッシュキャラもいたりして、全体的にはドラマチックな起伏に富んだシリーズだったと思います。

 さらにはここで登場した多くの“不届きなニセモノ”キャラが、令和の世(2024年現在)では総じて前者系統設定である“強力な味方”に大きく成長したことは、

あの不届き者たちが…

これは感慨深いなあ

と、読者にしみじみとした感動を与えたと思いますね(笑)。

 そしてこのような感動を生み出した根源は間違いなくキン肉マングレートであり、彼は作品におけるダッシュキャラの開祖として、その後に続くダッシュキャラへの橋渡しをするという重責をも担ったのです。

▲その後のダッシュキャラの源流となったグレート。

おわりに

 以上、キン肉マングレートについての考察でした。

 そもそも論で、ゆで先生がなぜ彼に“グレート”という名前を授けたのかはよくわかりません。

キン肉マンの師匠、カメハメが正体だから?

タイガーマスクのラスボス、タイガー・ザ・グレートのオマージュかもよ?

という推測はできますけどね。

 そこで彼を深堀りした今、これをあらためて考えてみると

大いなる使命をマスクという依り代を介して遂行し、多くのダッシュキャラの父となった

という功績が偉大であったからこその“グレート”なのかな、と感じました。

 もちろんこの考えは結果ありきの後づけであり、名付けの理由にはなり得ません。しかしながらここまで

名が体を表す

キャラに成長したのであれば、それでもいいのかな、なんて思いますね。そしてまた大いなる使命が発生したときに、彼は新たなキャラと同化し、偉大な活躍をしていくのでしょう。

 このようにマスクがあれば何度でも甦り、時を超えて存在できるキャラクター。それがキン肉マングレートの本質なのではないかと感じました。あなたはどう感じられたでしょうか。

 そして2024年現在、新たなグレートが産声をあげる雰囲気が漂ってきていますね。それ楽しみに待ちながら、今回はおしまいにしたいと思います。ではまた。

※今回はcollateralさん、岩佐さん、デイト&かりんさん、一気さん、マロピチさん、加藤さんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。

【リクエストはこちらから】

    コメント

    1. アトール より:

      アキラさんこんにちは

      自分もグレートは黒だと思っていたのですがマスクとボディカラー、そしてスグルのセリフが変わっていたんですね!全然気づかなかったです(笑)
      そしてコスチューム、ファイトスタイルに関してもモデルとなる選手がいたとは勉強になりました(笑)
      カメハメが作ったマスクには色々な思いや使命がありそれが脈々と受け継がれているってカッコいいですね!
      そしてダッシュキャラとしてもニセ王子やネメシスに発展していくわけですからグレートの功績はかなり大きいですね。カメハメ本人もびっくりしてるでしょうね(笑)

      グレートと言えば中の超人が変わる事でも有名ですが(笑)ネプのパートナーの武道も入れ替わってるんじゃないでしょうか?
      決勝戦の1本目まではネプの同僚?が武道役で2本目からはネプキンなんじゃないかと…
      テリーがリングの下に潜ってスグルに変装した時に武道もリングの下に潜りネプキンと入れ替わったのではないかと…(笑)その後ネプキンのマスクが外れかけたのは急いで着替えたからではないかと…そんな訳ないか(笑)

      • アキラ アキラ より:

        アトールさん、こんにちは。

        そうなんですよ、セリフから変更されているらしいんですよ。これにはびっくりしました。
        グレートはやはりマスクを通した使命があるという点がドラマチックだと思いますね。
        武道の入れ替わりは面白い推測ですね。たしかに二本目から人が変わってますからね(笑)。では旧武道はどこに…? リング下(笑)?

        • アトール より:

          旧武道のことまでは考えていませんでした…(笑)なので試合が終わるまでリングの下にいたと言う事で(笑)

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