第54回 ベンキマン

オレ流超人批評
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作品一のお下品超人! しかしその出オチな外見とは相反する、素晴らしき彼の魅力とは?
出身 古代インカ
超人強度 40万パワー
必殺技 恐怖のベンキ流し
主な戦績 ヒガンテマン○
キン肉マン●
ギヤマスター●

出オチ超人ベンキマン

絶対にスベらない超人

 小学生男子にウケる鉄板ネタは、いわゆる“うんこちんちんネタ”であることに異論を唱える方はいないと思います。

 彼らはうんこをネタにした話に

きったね~~

と言いながらも必ず食いつき、ちんちんをネタにした話にも、その潜在的タブーさをにおわす好奇心からか、ゲヘラゲヘラと下品な笑いを惜しみなく繰り出します。

 そんなうんこちんちん好きの彼らの、どストライクゾーンにゆで先生が投下した超人、それがこのベンキマンです。

 もうね、フォルムが下品の幕の内弁当ですよ(苦笑)。体が便器そのもので、頭の上にはちびっ子が大好きなうんこをあしらっている。

 よくゆで先生は、小学4年生を読者に想像してマンガを描いている、と言っていますが、このベンキマンに関しては言えば、“ぜったいにスベらせない”という、ゆで先生の目論見を感じさせる超人でした。

 実際初めて彼を見たときは、子どもながらに

アホな超人だなぁ~

と思いましたから(苦笑)。トーナメント抽選会の時に、応援団がみんなしてうんこを投げているギャグなど、大笑いをした記憶があります。

 その当時私は小学5年生だったので、ゆで先生の目論見は見事に達成されたことになりますね(笑)。

下品さの中に見える上品さ

 このように、どこをどう見てもふざけた彼なのですが、顔立ちだけ妙に凜々しいんですよ。紳士然としているというか、理知的というか、なにやら上品なんです。

 なのにその上品さが、上にうんこ、下に便器という下品さにサンドイッチされるという摩訶不思議なギャップが、彼のキャラクターをより深みのあるものにしているんですよね。

 それに伴ってか、彼の挙動、言動はとても落ち着いており、思慮深さを感じさせます。

 これは個人的には大正解だったと思っていまして、もし彼の性格も下品だったら、コロコロコミックのキャラクターっぽくなってしまい、少年誌に多々居るバカバカしいキャラクター群に、逆に埋没してしまったのではないのかな、と思ったりしています。

ファイトスタイル

 ファイトスタイルの特徴は、やはり相手を自身の便器に流し込んでしまう、『恐怖のベンキ流し』でしょう。というか、初期連載時はそれしかありませんでした(笑)。

 ただそのインパクトは抜群で、アホらしくも説得力があるという、なんとも不思議な必殺技でした。

 それだけに彼のファイトがキン肉マンとの一戦のみ、というのはちょっともったいなかった気もしますが、よくよく考えてみれば、彼は試合外のデモンストレーションを複数回行っていたんですよね。

 必殺技紹介の手始めに、まずは頭についた火の消火を求めに来たキングコブラをフンジャーからのポンポンポン…(笑)。

 なぜにキングコブラがこんな仕打ちを受けたのかは謎です。ベンキマン、虫の居所でも悪かったのかな(苦笑)?

 さらにはキン肉マンとの闘いの前に、予選敗退超人を集めて

ベンキマン
ベンキマン

自分に指一本でも触れられたら、決勝トーナメントで戦う権利を譲る

という、なかなかに自信過剰な条件を提示したパフォーマンスを開催。

 カニベースを軽くフンジャーすると(笑)、体格差のあるタイルマンをも手玉にとり、これもまたフンジャー(笑)。

 そのふざけた見かけからは想像もできない実力者ぶりを満天にアピールすることに成功しています。

 このときのアリダンゴ戦法は、子ども心にもびっくりしましたし、感心しましたね。あの小さな便器に、それを超える大きさの超人が入るわけないことなど、子どもでも容易に想像できます。

 それを昆虫の持つ生態を利用し、対処するという理論武装に、簡単に納得させられた(笑)覚えがあります。

 このように、結果的に彼のキャラクターをアピールする機会はふんだんにあったので、本戦は一戦のみでよかったのかもしれません。その方がテンポもいいですしね。

 そもそも彼はシリーズにおける、出オチ的なインパクトを提供するのがその役割であり、一発屋としての使い方がゆで先生の意向だったのでしょう。

セカンドブレイク

きっかけは超人総選挙

 ところがです。超人の人生には何が起きるかわからないもので、彼は一発屋で終わることなく、平成の世でセカンドブレイクを果たすことになります。

 きっかけは、平成の超人人気投票といえる『超人総選挙2013』において、たまたま29にく(肉)位という順位をゲットしたことでした。

 このときの総選挙では、29位を獲得した超人の読切作品をご褒美として掲載する、という企画があり、彼はその権利を見事手にしたわけです。

 それにより、一発屋だったはずの彼の過去が描かれることとなり、さらに『オメガ・ケンタウリの六鎗客編』においては、オメガの侵攻を食い止める正義超人軍団の一人として選抜され、強敵・ギヤマスターと死闘を繰り広げることになります。

 時代を超えて再ブレイクするその様は、まるで超人界の有吉弘行…は言い過ぎか。ルー大柴くらいにしておこうかな? それだと逆にわかりづらいか(苦笑)。

 まあとにかく彼を幼少期から見ていた者としては、とても感慨深いものがあります。

 この平成の世における彼の活躍は、そのキャラクターを深掘りすることとなり、彼をより魅力溢れる超人として描くことに成功しています。キャラクターの厚みが増した、という表現が適切でしょうか。

 具体的には2点、特筆すべきことがあると思っています。

セカンドブレイクでの特筆点

①インテリ超人キャラの開花

 前述しましたが、彼はふざけた外観に似合わず、その立ち振る舞いが落ち着いていて凜々しく、理知的です。平成における彼の活躍は、そのキャラクター性を存分に膨らませることに成功しました。

 キン肉マン戦をよくよく読み返してみると、実はまともな格闘はまったく行われていないことに気づかされます。

 いやホント、当時は気づかなかったんですけど、衝撃的なくらい格闘していないですよ(苦笑)。

 逃げ惑うスグルと追いかけっこをし、ベンキに流す、流さないの攻防があり、アリダンゴがあり、パンツをつまらせ水が逆流、それだけです(笑)。

 これでは彼の格闘能力を測ることは不可能で、ヒガンテマン戦、ギヤマスター戦にてやっと彼本来のそれを見ることができた次第です。

 ここで彼は、本来はねちっこい寝技を得意とし、地味ながらも確実に勝ちをつかむスタイルの超人であることが判明します。

 この寝技主体のファイトスタイルというのは、理詰めで無駄なく闘うことを意味しており、思慮深く理知的な彼のキャラクターにはとてもスウィングしているという印象を与えました。

 そして超人オリンピックペルー予選決勝におけるヒガンテマン戦において、彼の代名詞とも言える『恐怖のベンキ流し』を身につけることとなり、地味なファイトスタイルに派手な一発を加えるという、バランスの取れた超人に進化しています。

 時系列的にはその次がスグル戦なのですが、まああの試合は前述した通りなので置いといて(笑)、その次のギヤマスター戦こそが彼のファイトの集大成とも言えるものでした。

 ここで彼は、その頭脳的で理詰めのファイトをふんだんに披露します。

 AだからB、よってCが効果的である、といったようなそのファイトスタイルは、直情的な闘いを行うキャラクターが多い中、ひときわ異彩を放ち、まさに“インテリ超人”と呼ぶにふさわしい特異性を感じさせることに成功しました。

 その落ち着いた闘い方は、読んでいるこちらに安心感すら与えることになり、実際の話、彼の金星が現実になるのではないかと私は感じたほどです。

 あの時ギヤマスターに『恐怖のベンキ流し』で勝利したとしても、展開的にはまったくおかしくなかったですからね。まさにインテリ超人たる彼のキャラクター性が開花した瞬間だったと思いますね。

②正義超人としての優しさと精神

 彼はあんなにふざけたなりをしているくせに、その心根がとても優しいです。

 その優しさはまさに正義超人としてのそれであり、“人間の窮地を救うのが超人の務め”という信念を根幹に持っています。

 それが顕著に現れているのが、ヒガンテマンに奴隷のように扱われていたセコンドのマルコとのやりとりです。

 便意を催したマルコの窮地を、自身の便器を提供することで救ったエピソードはとても下品なものでしたが、彼の優しさと奉仕精神、そして大きな包容力でそれを緩和させています。

 そしてなによりも彼が子どもにナチュラルに優しいという点がサラリと醸し出されており、このあとマルコがヒガンテマンから暴力を受けたことを知るやいなや、怒りに打ち震えるといったくだりと合わせて、彼の魅力をひじょうに大きくしています。

 その優しさは、仲間を思いやるという精神性にも転化されており、それはオメガ・ケンタウリの六鎗客との闘いでもふんだんに表現されていました。

 彼は自分のためではなく、仲間のために勝利を得ようとしています。この精神はとても高尚であり、彼の正義超人としての矜持を感じさせ、その優しさを再確認するのに充分すぎる表現だったと思いますね。

最後に

 こんなにも素晴らしい信念を持つ超人が、頭にうんこをのせ、体が便器だというギャップ。しかしそれを下品と感じさせない高尚な精神性。

 この相反する特性を高度に掛け合わせ、キャラクターとして昇華させている様を見るに、もはや彼を奇跡のキャラクターと呼ばずして何と呼べばよいか、私にはわかりません。

 それくらいキャラクターとしての完成度が高い超人に成長したと思いますね、彼は。

 そんな彼を見るにつけ、ギャップという要素はキャラクターを確立する上で本当に大切であることを、あらためて認識させられます。

 見かけだけでは計り知れない奥深さ。そんな驚きを与えてくれる超人ですね。

※今回はレオパルどんさん、望月さん、マスクンさん、バルカン聖人さん、アクメ将軍さんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。

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