凶器を操る奇術師超人! 容姿、特性ともに類まれなるポテンシャルを持っていた彼が、ブレイクに至らなかった原因とは?
出身 | スペイン |
超人強度 | 60万パワー |
必殺技 | トランプ攻撃 凶器攻撃 |
主な戦績 | 凸凹ブラザーズ○ ジ・エンペラーズ○ ザ・マシンガンズ● 超人師弟コンビ● |
私をだました詐欺師超人
彼と私には、大きな因縁があります。
というのも、『超人批評 ウォーズマン』の回でも書かせていただいたのですが、私はウォーズマンが活躍するコミックスを買いたかったのに、彼をウォーズマンと勘違いし、別の巻を買ってしまったという苦い思い出があるからです(苦笑)。
私は友達の家でたまたま読んだジャンプで『キン肉マン』にハマり、コミックスを購入する決意をしました。第3巻でしたね。擦り切れるほど読みました(笑)。
ただ友人の家で読んだリアルタイムのジャンプでは、ウォーズマン vs バッファローマンや、テリーマン vs 魔雲天の激闘が繰り広げられていたんですね。
そこでですね、例の“光の矢”攻撃のカッコよさにメロメロになり(笑)、
よぉ~し、ウォーズマンが最初に登場したコミックスも買うぞ~!
と意気込んだのです。
ただ当時はウォーズマンがいつ頃初登場したかなど知らないし、ましてやコミックス何巻から登場するかなんて見当もつきません。
本屋に並ぶコミックスはビニールでラッピングされており、立ち読みで内容を確認することも不可能でした。
となると、もう表紙からの情報に頼るしかありませんよね。当時はコミックスが9巻まで出ており、私はそれらの表紙とにらめっこしながら、ウォーズマンが登場していそうな巻を推測します。
確実にウォーズマンが確認できたのは8巻です。ここでそのまま8巻をレジに持っていけば問題はなかったのですが…そこで私の目は6巻を見てしまったんですよ。
あれって…ウォーズマン…かな?
と、そこに描かれていたデビル・マジシャンを見て、ふとそう思ってしまったんです。いや、実際は
にしては…ちょっとのっぺりとしているよな…
と、ちゃんと違和感を感じてはいたんですよ(苦笑)?
ただ私は“ウォーズマンが初登場した巻”が欲しかったんですよ。途中からじゃなくて。
ですので、8巻よりも前の6巻にそれっぽいキャラクターがいるのならば、当然そっちの方が初登場に近いのでは? と思ってしまったわけです。
そういった理由で、私は6巻を買ってしまったんです。その結果は
1ミリもウォーズマンおらんやんけ!
でした(笑)。あれはショックだったなあ。デビル・マジシャンには悪いけど(苦笑)。
そんなわけで、彼は私にとっては“してやられた感”がある詐欺師超人でした(笑)。
将来を嘱望された超人?
しかしながら彼が登場する『アメリカ遠征編』をよく読むと、彼は実はスター超人になるポテンシャルを持っていた超人だったと感じています。
その理由をいくつかあげてみましょう。
ゆで先生自らの紹介
彼は初登場時に、ゆで先生自らその名前を紹介してしてもらうという、破格の待遇を受けています。このような待遇を受けた超人は、後にも先にもおそらく彼ひとりでしょう。
いうなれば、彼はゆで先生自身がその後の活躍を期待していたキャラであったともいえ、その将来性を買われていたともいえます。
これは想像ですが、当時のゆで先生はこのデビル・マジシャンが超人募集で投稿された際、かなり気に入ったのではないかと思います。でないとあんな紹介シーンにはならないと思うんですよね。
それこそ先に控えた『アメリカタッグ選手権編』における主要キャラクターとして、派手に活躍させようと意気込んでいたのだと思います。
引き算の美しさを感じさせるフォルム
そのフォルムは私がメロメロになったウォーズマンと見間違えた(笑)くらいなので、かなりかっこいいです。
能面を思わせるその顔は、無駄な線がなく非常にスタイリッシュで、シンプルかつクールです。引き算の美しさがそこにあるといってもいいでしょう。
さらに全身がモノトーンのセパレート仕立てとなっており、顔、上半身、下半身で色がスイッチングされています。この配色もモード系を彷彿とさせ、彼をスマートかつオシャレに見せています。
そんなシンプルモード系の中に、ワンポイントとして左肩の肩当があり、そこにデザインされた★マークがアイキャッチ的なアクセントとなっています。
そしてこの★マークこそが彼の名であるマジシャン、もしくは奇術師といったイメージを説明する役割を果たしており、これ一つでキャラクターの全体像を表現するというデザインの秀逸さを持っていると思います。
このように、造形においてこれほどの美しさを持つ超人も稀有なため、将来的な大ブレイクの可能性を十分持っていたと私は感じているんですよね。
余談ですが、令和の時代に入ってから、新日本プロレスのエル・デスペラード選手がキン肉マンとのコラボTシャツで、このデビル・マジシャンを指名し商品化しておりました。
いや~、目の付け所が玄人ですね、デスペラード選手!
人気投票1位の実績
さらに彼は『アメリカタッグ選手権編』において企画された超人人気投票で、悪役超人の部門で見事1位を獲得しています。
『キン肉マン』はその連載中に何度か人気投票を開催していますが、おそらくこの時の人気投票が、初めての開催だったと思います。
そんな初企画において、彼は栄誉ある1位を獲得しているんですよ。もちろん“悪役超人の部”というカテゴライズであったとはいえ、初代1位であることには変わりありません。
その後ラーメンマン、ロビンマスク、バッファローマンと名だたる超人がその栄誉に就いたことを考えると、当時の読者がどれくらい彼に魅了され、期待をしていたかがわかろうというものです。
それだけに、彼がその期待を十分キャリアに転化できなかったことは、ひじょうに悔やまれます。
ちなみに“人気超人の部”ではテリーマンが栄えある1位を獲得しています。もともと連載初期からの主要キャラであり、『アメリカタッグ選手権』ではほぼ主役だったので(笑)、当然といえば当然なのかもしれません。
なぜ彼はブレイクできなかったのか
ではブレイクポテンシャルを備えていた彼が、なぜそうはならなかったのかを考察してみましょう。
刃物使い超人
彼のデビューが破格の扱いであったことは、先に述べた通りです。
その時も“元世界チャンプ”のハンサム・レイスマンの首を手土産に、超人同盟の入団試験を堂々と突破するという凄みを与えられています。まあハンサム・レイスマンがどのくらいのレジェンドなのかはさっぱりわかりませんが(苦笑)。
このように、しょっぱなのキャラクタライズにおいては十分なインパクトを与えたのですが、本編の『アメリカタッグ選手権』における彼のファイトは、単なる刃物使い超人という印象が前面に押し出されてしまいました。
彼の使用する刃物には
- トランプ
- 短剣
- 仕込みドス
などがあり、短いシリーズにおいてこの凶器の数は、ちょっと多すぎな感は否めません。
この中で唯一許されるのはトランプでしょうか。トランプは“マジシャン”という彼のギミックにとてもマッチしているだけでなく、ダイレクトな“刃物”ではないからです。
それどころか己を象徴するアイテムを、刃物として利用するという発想の転換が素晴らしく、彼のキャラクターをより熟成させることに一役買っています。
しかし短剣、仕込みドスは直球すぎます。これらは超人が使わなくても、それこそ子どもが使っても相手を殺傷することができます。
それだけに超人の、もっと言えば“残虐超人”の凄みを演出する方法としてはとても安易な表現であり、大きな失策だったと言わざるを得ません。
これについてはゆで先生も途中から失策に気づいてしまったのか、いたたまれなくなったのかはわかりませんが、そのアンチテーゼとしてラーメンマンをレフェリーに起用し、デビル・マジシャンの凶器志向について苦言を呈しています。
このことは、ゆで先生自身が“彼のキャラクターの広げ方を間違った”と告白しているようにも感じます。
つまりその時点で彼は、ゆで先生から“戦力外通告”を受けたも同然となってしまったのではないでしょうか。あくまで私の想像ですけどね。
格闘能力の実力が見えない
残虐さを表現する手立てとして、安易な凶器志向に走ってしまった彼ですが、それをフォローするべき格闘能力があまり目立っておらず、そのレベルがいまいちよくわかりません。
それどころかジ・エンペラーズにやたら捕まったり、マシンガンズの猛攻になす術がなかったりと、超人としての土台が確立されていないような印象を受けます。
それこそ彼はまだまだグリーンボーイの域を抜け出ていなく、その経験値の浅さが露呈してしまったイメージです。それゆえ彼はまだブレイクするには早いキャリアだったのかもしれませんね。
でもそう考えると、ハンサム・レイスマンを討ち取ったのも、
だまし討ちでもしたのかな…?
なんて勘ぐってしまいそうです(苦笑)。
打ち切り連想超人
実はこの『アメリカ遠征編』で、『キン肉マン』は連載打ち切りの危機にあっています。
ちびっ子に馴染みのないアメリカという土地、3団体の権力抗争というややアダルトなテーマ、そして中井画伯の画力向上によるアメコミタッチ偏重という作風に、今まで作品を推していたちびっ子たちが
何か…意味わかんねぇ。
と、蜘蛛の子を散らすように“サァ~~~~ッ”と引いていったらしいのです(苦笑)。
これはまずいとあせったゆで先生がとった軌道修正が、『第二回超人オリンピック』による原点回帰なんですね。
というわけで、ゆで先生にとってはこの『アメリカ遠征編』におけるキャラクターには、苦い思い出があるのでしょう。
それだけに意識の切り替えというか、マイナスのスパイラルを打ち切るということで、当時の超人たちをあえて避けていたのかもしれませんね。
実はウォーズマンのプロトタイプだった?
作品の軌道修正のために開催された『第二回超人オリンピック』において、ブレイクしたのがウォーズマンです。
これは私の想像なのですが、ゆで先生はウォーズマンを使ってデビル・マジシャンで表現できなかったことを、リトライしていたのではないかと思っています。
特にその“残虐性”の表現において、それが顕著のように思われます。ええ、もちろん“ベアクロー”の表現についてです。
ベアクローはどう見ても凶器です。しかも直球表現の凶器です。その点だけを見れば、ウォーズマンもデビル・マジシャン同様、“残虐超人”の凄みを演出する方法としては、大きな失策を犯していることになります。
しかしながら、ウォーズマンのそれは
- あくまで“トドメの一撃”としてそれを使用していた
- 『スクリュー・ドライバー』というフィジカルを伴った技として昇華させていた
という点が、デビル・マジシャンと大きく違っていました。要は“超人でなくてもできる殺傷能力”というデビル・マジシャンの弱点を見事に補強していたのです。
そしてその凶器使用の思い切りがよく、残虐表現も突き抜けていました。ティーパックマン、ペンタゴン、ラーメンマンの末路を見れば、いかに手抜きがないかがわかろうというものです。
このような徹底した残虐表現は、ただ短剣を投げつけるだけのデビル・マジシャンとは違い、ウォーズマンの個性として読者に強烈な印象を与えました。
また、ウォーズマンはデビル・マジシャンの反省として、その格闘面においても“ファイティング・コンピューター”という個性が割り振られました。
これにより、ウォーズマンはベアクローを伴わない格闘においても優れていることが強調され、より深みのあるキャラに醸成されていったのです。
さらにダメ押しとして、誰しもが強豪超人と認めるロビンマスクの弟子という設定を付加することで、その揺るぎないキャラクターを確立することに成功しました。
以上を見るに、ウォーズマンはデビル・マジシャンで犯した失敗をことごとく塞いだ超人である、という予想が立つわけです。
つまり結果的には、デビル・マジシャンはウォーズマンの試作キャラだった、という推論に至るわけなんですね。プロトタイプだったらね、そりゃあ見間違えてコミックスを買っちゃうよね(笑)。
そんなわけで、彼を改良したウォーズマンがブレイクした以上、彼の将来が閉ざされてしまったのは自明の理なわけです。そう考えると、ちょっと不幸な超人だったともいえるでしょうね。
根は真面目?
彼はあまり自分をさらけ出さないタイプの超人だったので、実際のところどんな性格をしていたのかはよくわかりません。
ただ思うに、根は真面目な性格をしているのではないか、と感じています。というのも、練習熱心で根性があるんですよ、彼。ええ、デビル・マジシャンではなく、デビル・マジメジャンです(苦笑)。
そもそも論で、彼が超人同盟に入ろうとした理由は、おそらくは現状打破だったのではないかと思います。くすぶっている環境から己の力ひとつでのし上がるために、ハンサム・レイスマンの首をとり、超人同盟入りしたのではないでしょうか。
そして彼は超人同盟入りした後も、スカルボーズの地獄のスパーリングを耐え抜き、さらには入場時によろけるくらい、己を追いつめて練習をしていたことがわかっています。
このことは、彼が凶器攻撃だけに執着しているわけではなく、基礎的な練習も真剣に取り組んでいたことのあらわれであるとも思うんですよね。そこに真面目な彼のハングリー精神が見えるんですよ。
ですので、彼にもう少し格闘面での描写を与えてあげていれば、もっと印象的なキャラクターとして活躍できたのではないかと思います。
その後のマジシャン
ウォーズマンが大成したことにより、彼の出番は封じ込まれてしまったので、その後彼に活躍の場は与えられませんでした。
唯一『宇宙超人タッグトーナメント編』において、超人師弟コンビの実力を強調させるためのかませ犬として、スカルボーズと共に久々の登場をしています。やはり哀れな末路だと言わざるを得ません。
彼らは超人師弟コンビにダブル・ジャーマンをかけられてあっさりKOされてしまいますが、ここでデビル・マジシャンにジャーマンをかけたのはウォーズマンではなく、ロビンマスクというニアミスが起きています。
これは偶然なんですかね。それともあえての配慮なんですかね。もしウォーズマン ➡ デビル・マジシャンだったら、
改良版がプロトタイプのトドメを刺したよ!
てな感じの、とんでもない神コマだったなあと、今では思っています(笑)。
化けるポテンシャルはピカイチ
そんな不遇なキャリアとなってしまったデビル・マジシャンですが、そのイカしたフォルム、手品師という個性を持っているだけに、化けるポテンシャルは十分にあると思うんですよ。
特に手品師、奇術師といった個性は、アイデアを無限に広げられるという意味では大きな武器です。『HUNTER × HUNTER』のヒソカなんて、その典型ですよね。
さらにヒソカのような“トリックスター”というキャラは、一癖も二癖もあるという、捻りのあるキャラにしやすいため、読者の支持を得やすいともいえます。
ですので、このポテンシャルがピカイチのデビル・マジシャンを、成熟した今のゆで先生が描いたら、どんなに魅力的なキャラクターになるんだろうと、興味がつきないです。ぜひお願いしたいですね。
おわりに
以上、デビル・マジシャンについて書いてきましたが、やはりいろいろともったいないですね、彼は。それだけに、余計に彼のトリック・ファイトを見てみたくなります。
でもあれかな、ゆで先生はどちらかというとトリックストーリーは苦手っぽいので、その辺で敬遠してしまうかもしれませんね(苦笑)。
冨樫義博、荒木飛呂彦といったマンガ家であれば、大喜びで起用するんでしょうけど(笑)。
となると、これはないものねだりなのかな~? 彼のトリックを見られる日は遠いのか…いや、待てよ?
よくよく考えたら、私はすでに彼のトリックにかかっていたんですよね。そう、“ウォーズマンすり替わりトリック”に(笑)。
※今回は上野さん、シシカバさん、カマーンダスさん、ねごとさん、死んだポンポコリンさんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。
【リクエストはこちらから】
コメント
アメリカ遠征編の画風はアメコミと言われるだけあってか、デビルマジシャンはアメコミヒーローになっても違和感の無い格好よさですよね。
彼の試合にラーメンマンがレフリーに立った事でモンゴルマンがレフリーになる下地になったのかなと個人的に考えてます(笑)
凶器に対してのレフェリングで悪魔将軍戦のフォークやパイプ椅子を咎めてますし……。
デビルマジシャン+スマイルマン+αっぽいですよね、ウォーズマン(笑)
ウォーズマンの投稿時の名前がブラックデビルかなにかで、デビルマジシャンみたいな名前だった様に思いますし……。
今後本編でスポットが当たるかは分かりませんが……個人的に闘将!!拉麺男のような、本編とは別人設定で彼が主人公の特撮ドラマが観てみたいです。
柩幸さん、こんにちは。
たしかにラーメンマンはレフェリーづいていますよね。悪魔将軍戦に凶器を持ち込んでいたスグルには笑わせてもらいました(笑)。
デビル・マジシャンのスピンオフはすごく見てみたいです。
デビル・マジシャンはデザインの格好良さに関しては秀逸だったので、本当にもったいなかった印象になっております
技が凶器攻撃のみなのは残念でありましたね
もし、名前の通り「悪魔の手品師」としての能力を現在のゆで先生が描きこなしたら、ブラックホールやザ・ニンジャの様なトリックスターとしての魅力が出たかは解らないものの、もしかしたら後発の悪魔超人達に受け継がれた可能性も考えてしまいましたよ
ブースカさん、こんにちは。
デビルマジシャンは秀逸なデザインですよね。手品師、魔術師というギミックもとてもマンガ向きなので、表現の幅も広げやすいと思います。
ただおっしゃる通り、そのキャラを別のキャラが引き継いだ面があるので、表には出づらいのかもしれません。ですので、何かのミッション等での再登場を期待したいですね。