英雄となったキン肉スグルの父でキン肉星の大王。献身的なバックアップをするも、巷にはびこる“クズ”評価の理由とは? 彼は本当にクズなのか?
出身 | キン肉星 |
超人強度 | 65万パワー |
必殺技 |
アイアンクロー? |
主な戦績 | ハラボテ・マッスル△(エキシビション) ハラボテ・マッスルー(ノーコンテスト) |
統治者とその評価
江戸時代の徳川五代将軍といえば、犬公方と言われた徳川綱吉です。
犬や動物を虐待した者は重罪!
という(かなり雑解説ですが)“生類憐みの令”を制定したことで有名ですよね。
言い伝えでは蚊を殺したことで罰を受けた小姓もいた、なんていう極端な話もあり、人間よりも動物を優先して世の中を混乱に陥れた“天下の悪法”などとも言われています。
そのおかげで綱吉は長らく暗君という評価を受けてきたのですが、近年では
捨て子や病人、高齢者も保護する対象だったんですけど…
という事実があったことが見直され、実は綱吉は名君であったという再評価もされています。
このように、人物の評価というものはそれを見る角度、時代によって真逆に変わることも少なくなく、国を統べる統治者の評価は特に、そのような影響を受けやすいともいえるでしょう。
キン肉真弓は名君?暗君?
では『キン肉マン』という作品において、大王という統治者ステイタスを持つキン肉真弓は、どのような評価を受けているのでしょうか?
彼は連載初期からあれだけ目立った行動をしているにもかかわらず、若い頃の描写がほぼなく、実際にどのような活躍をしたキャラなのか、いまだに謎が多いキャラです。
ですので、公平な評価をするのは難しい人物であるはずなのですが…世に出ている彼の評価は、お世辞にも高いとはいえない気がします。つまり
彼は素晴らしい名君だよ!
という評価は聞こえてこないのです(苦笑)。それどころか
彼はクズだよ
なんていう、かなり辛辣な評価をする方も多いようです。
では彼の評価が低い理由は何なのでしょうか。思いつく要因をあげてみましょう。
- 超人オリンピック覇者としての経歴に疑問符がつく
- キン肉族三大奥義、フェイスフラッシュといったカリスマ的特技を会得せずに戴冠
- アタルに厳しい英才教育を施し、家出される
- 生まれたスグルの不細工さに首を締めかける
- 旅行中にブタと間違えて、赤ん坊のスグルを地球に放り捨てる
- 行方不明となった二人の息子をほったらかす
- 帰還したスグルが弱いと知るや、すぐに養子をとる
- 子どもじみた行動で威厳ゼロ
こんな感じでしょうか。このように、彼は“名君”と評価されるには、失策が多すぎるのです。
これらの失策を大まかにカテゴライズすると
- 格闘面
- 育児面
- 威厳面
となるでしょうか。ではその失策について、それぞれ深掘りしてみましょう。
格闘面
彼の格闘実績については、スピンオフの物語が発表されていないため(2023年12月現在)、断片的な情報でその現役時代を想像するしか手がない状態となっています。
そして断片的な情報によって判明している、彼の大きな経歴は
となります。
この情報は作中において自らの口で語られているので、ウラの取れた確実な情報だといってよいでしょう。チャンピオンベルトの裏にも、しっかりと“MAYUMI”の文字が刻印されていましたからね。
他にも第9、10回と連覇している、第11回は決勝でハラボテ・マッスルに敗れている、などの情報がありますが、作中にその描写はありません。
仮にそれらが事実だとすると、その実績はスグル並み、いや、三連覇をしかかった分、スグル以上だともいえるでしょう。
つまり彼は超人プロレス界において“キン肉真弓黄金期”という、一時代を築いた人物だと言えます。そんな彼が、なぜに格闘面においてこんなにも評価が低いのでしょうか。
それは二回に渡って行われた、超人オリンピックでのハラボテ・マッスルとの前座試合が、とても観客から不評を買っていたからでしょう。
作中において彼の唯一の実戦となったこの試合は、激しいファイトに慣れた観客からは、やや牧歌的雰囲気漂う試合に見えてしまったためか(苦笑)、かなりの野次と罵声の中、行われるという結果となりました。
その姿は、過去に一世を風靡したバンドが40年後に再結成するも、明らかに衰えを感じさせるステージを披露してしまい、初見の若者に刺さらなかった感じと言えばよいでしょうか。
さらに全盛期を大幅に過ぎた二人の試合は予定調和のコントのようでもあり(苦笑)、
あの人たち、ホントに強かったのかな…?
と、彼らが現役当時の実力と当時のオリンピック大会のレベルを、いささか疑問視してしまうことは否めません(苦笑)。
そしてその思考は、バラクーダたるロビンマスクが二人の闘いを
くだらん試合
とこき下ろしたために、さらに決定的となってしまったのです。
また、真弓最大のライバルがハラボテ・マッスルであるという事実も、彼の実力に疑問符が浮かぶ要因でしょう。
ハラボテ・マッスルも真弓同様、作品中では若い頃の格闘実績をアピールした描写がありません。それどころか、スグル&真弓のコンビにイジられまくるお笑いキャラ、というイメージが強かったため、どうしてもシリアスな格闘面を想像しにくいのです。
そのため、ハラボテはスグルにおけるロビンやウォーズマン、万太郎におけるスカーやケビンといった間柄にはとても見えず
宿敵がボテちんかあ…ちょっとなあ…
となってしまうので、それが影響して真弓の実績も素直に評価しづらくなってしまうんですね。
ですので、ウソでもロビンナイトやドリーマンといった、明らかに強豪と思われる超人を撃破して優勝した、という事実があればまだよかったんですけどね。そうすればもう少し違ったイメージとなるのでしょうけど…(苦笑)。
また、彼はキン肉王族がキン肉王族たる象徴ともいえる
- 火事場のクソ力
- フェイスフラッシュ
- キン肉族三大奥義
という3つの特殊技能において、1の“火事場のクソ力”しか習得できていません。
これはカリスマ性を求められる大王や統治者にとっては致命的といってもよく、この事実が彼の格闘能力における評価を大きく押し下げていることは間違いがないと思われます。
特に三大奥義については、
チャレンジしたが、体のかたさが災いし断念した
と語っています。
これは事実を正直に語っているだけなのですが、キン肉王族という彼のステイタスが
なんだよ、情けねえな…
という評価をどうしても連れてきてしまうんですね。これを見る限りでは、とても国民憧れの大王様とはならないんですよ。
それなのに彼はキン肉星の王位に就いてしまったがために
というレッテルを貼られてしまい、それこそ
スグル以上にラッキーな男!!
なんて揶揄されてしまうのです(苦笑)。
そしてそんな幸運な状況で頂点に上り詰めたのにも関わらず、彼は恐るべき能天気な明るさを爆発させた行動をとっているので
この人…幸せな人生を過ごしているよな…
なんていう、皮肉たっぷりのお気楽キャラ評価をされてしまったりするんですよね。それは我々が彼について“とても無能な大王”というイメージを抱く、大きな要因となっていると思われるのです。
育児面
彼の評価を貶めている一番の要因が、この育児面における失策ではないかと思われます。とにかくこれについては失策だらけなんですよ、彼。
それこそ野球素人が作った野球チームくらい、エラーだらけなんです。もうね、『がんばれ!ベアーズ』状態です。ちと古いか(苦笑)。
まずアタルに過度な英才教育を施した件ですが、アタルが左腕を扉に激突させて、大怪我を負ってまで逃げ出すくらいなので、そのカリキュラムはかなり厳しく、相当なハードスケジュールだったのでしょう。
結果的にそれは現代でいうところの“教育虐待”となってしまったわけです。
真弓としては、多くの国民を預かる責任に耐えうる後継ぎを作らねばならない、という気持ちが、勇み足となったのかもしれません。
それがキン肉王族に生まれし者の責任じゃ!
といった感じでしょうか。
ところがそれを課している親が、世間的にはチャランポランと評価をされている人物なため(苦笑)、
あなたがそれを言うのですか?
という反感を、より買いやすいんですね。
スグルに対しては、外見上のアホ面に耐えかねて
何度首を締めかけたことか…
と、恐ろしい過去を口にしています。
もちろんこれは誇張を含んだ冗談であったと信じたいのですが、それでも言ってよい冗談と、いけない冗談があるので、その意味では“言ってはいけない冗談”であったのは間違いがありません。
その辺のセンスのなさも、彼が読者から不評を買ってしまう原因でもあるのでしょう。口にしてしまった時点で、それは“幼児虐待未遂”となってしまいますからね。
そして旅行中にスグルをブタと間違えて地球に捨ててしまった件に関しては、百歩譲って、いや、千歩譲って不慮の事故だったとしましょう。
しかしながら、その後の処置行動がとてつもなく大きな失策でした。結果的に彼はアタルの失踪も含め、行方不明となった息子二人を、彼らが成人に達するまで放置してしまったのです。
これは現代でいうところのネグレクトそのもので、この事実は彼の生涯最大の失策といってよく、読者から
とんでもねぇ親だ!
と、総スカンを食らってしまった感があります。
そしてようやく見つかった息子の能力が著しく劣っていると判断するや、まったくの相談もなしに突然“シゲルくん”という養子縁組をしたりしています。
このあたりのドライさはスグル個人の存在否定をしているに等しく、さらにはそれを笑顔で報告できる無神経さに、大きな嫌悪感を抱いた読者も多いのでしょう。
これらの事実をみるに、彼の育児における行動は、かなり問題視されるものばかりだと言わざるを得ません。
ですので、スグルが超人同盟による真弓の写真を使った“踏み絵”テストにおいて、容赦のないストンピングを浴びせる親不孝ができた気持ちも理解できるし、それを咎める気持ちも薄くなってしまうんですよね(苦笑)。
威厳面
彼は登場以来、徹底してスグルとふざけ合う、じゃれ合うという行動をしています。
その姿は第二のスグルといってもよく、特に連載初期はミートくんをツッコミ役とした、スグル&真弓のWボケトリオ漫才の体を成しています。
このスタイルはギャグマンガという視点で見ると、とても優れた仕組みとなっており、切れ味鋭いギャグを連発できた大きな要因だったといえるでしょう。
しかしながらその反動で、そんな彼から統治者としての威厳を感じ取ることは、とても難しいと言わざるを得ません。それどころか、笑いがとれるメリットはあるものの、
いい年してこんなおバカ行為しかしないなんて…
仮にも彼は一国の統治者なんだよね…?
と、呆れられるデメリットがあったことも事実です。
このあたり、ボケをかましても笑いと好感度しか生まれないスグルと比べて、“年長者”、“統治者”という設定があるがために、彼は同じボケ担当でも評価を下げる結果を生んでしまうわけです。
そんな彼に大王としての威厳を求めるのは、そもそも難しい要求となってしまいました。そしてその“威厳のなさ”は、彼を大王として評価するにおいて、大きなマイナス要素となってしまっているのです。
結論?
以上、彼の格闘面、育児面、威厳面において彼を深掘りしてきましたが、それらを統合すると
キン肉王族のカリスマ的格闘技術なし
子育ても無責任
アホばかりして威厳ゼロ
というイメージとなり、どう客観的に判断しても
ちょっと…いろいろとマイナス面が目立つよね…
という厳しい評価が巷に蔓延するのもうなずけてしまうのです。
となるともう、彼の統治者としての評価は
キン肉真弓は暗君!
と結論づけられてしまうのは致し方ないのかもしれません。
しかしですね~、私は彼のこと、実は嫌いじゃないんですよね。それは彼の人間性に陰湿な面が見られず、竹を割ったような明るい陽性に魅力を感じるからなんです。
五代将軍徳川綱吉も一時期は暗君扱いでしたが、角度を変えてみれば名君だという評価もあるわけじゃないですか。そう考えると、真弓にもそのような面があるかもしれないのです。
ですので、彼に対する評価の結論は、もう少し待っていただけませんか? できれば少し別の視点から彼を考察し、その上で彼の評価がどう変わるのかを見てみたいんですよ。
というわけで次回に続く、です。ではまた。
※今回はcollateralさん、岩佐さん、デイト&かりんさん、一気さん、マロピチさん、加藤さんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。
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