人格・風格ともに非の打ち所がないキン肉マンの兄。『真・友情パワー』を提唱した彼の功績とはいったい⁉
作品衰退期に差し込んだ一筋の光明
『キン肉マン』という作品において、『キン肉星王位争奪編』というシリーズは、個人的には評価が高くありません。
長期連載におけるネタ切れというか、マンネリというか、一世を風靡した物には必ず訪れる衰退期を連想させるからです。
まあ主な要因はラスボスであるフェニックスの、あまにりもセコく小ズルい小悪党さにあるのですが。
そんな『王位争奪編』において高く評価できるのが、このキン肉マンソルジャー(キン肉アタル)の存在でしょう。
彼は主人公であるキン肉マンの兄という、最終兵器的な設定で登場しました。
しかもキン肉マンが生まれる前に、キン肉王家の英才教育に嫌気がさし、キン肉星の王子という肩書きを捨てて家出をしたという、かなりベタな過去まで持っています。
ロビン王朝の英才教育に反発して家出をした、ケビンマスクと少しかぶりますね。
親に抗って家出をして24年、彼は己の行動を反省し、弟の最大の危機に帰ってきました。正体を隠してキン肉マンソルジャーと名乗り、王位争奪団体トーナメント戦に参加したのです。
その参加目的の大きな理由として、
- 弟であるキン肉マンの戴冠を陰からサポートすること
- “馴れ合い”化しつつあった正義超人軍団の友情パワーに活をいれること
があげられます。
このソルジャーの行動により、『王位争奪編』のドラマ性はぐっと深まることになりました。
もしソルジャーの存在がなければ、この『王位争奪編』はただ小悪党と格闘するだけの、それこそ救いようのないシリーズとしてその最後を飾ったことでしょう。
キン肉マンソルジャーの功績
ではストーリーに厚みを持たせた以外の彼の功績とはなんでしょうか。私は以下の3点を評価しています。
- あぶれキャラクターの引き受け役
- “真・友情パワー”という近親イデオロギーの提唱
- スケープゴートとしての役割を完全遂行
こんな感じです。一つずつ見ていきましょう。
1.あぶれキャラクターの引き受け役
少年マンガの宿命として、“昨日の敵は今日の友”という現象は避けがたいものです。つまり主人公を取り巻く仲間キャラが、年月が経つにつれて際限なく増えていくんですね。
そうなるとなかなか全てのキャラを活躍させることが難しくなるわけです。
ただでさえこのシリーズは「5人=1チームの勝ち抜き団体戦」というルール的縛りがありました。そのせいでキン肉マンチームに入れるキャラは限られてしまうんですよ。
すると当然、主要キャラなのにどうしてもあぶれてしまうキャラがでてきてしまうわけです。
そのあぶれキャラを活躍させるためには、彼らを束ねるカリスマがもう一人必要になるのです。それがキン肉マンソルジャー(アタル)だったわけです。
つまりキャラを効果的に活躍させるために、増えすぎた正義超人を2チームに分けたんですね。
そのあぶれたキャラ…といっては失礼ですね(笑)。選抜されたキャラの面子のすごいこと。
キン肉マンソルジャー ブロッケンJr. バッファローマン アシュラマン ザ・ニンジャ
はい、伝説のユニット『超人血盟軍』のできあがりです。
当時ザ・ニンジャの選抜には“?”でしたが、その後の異様にかっこいい活躍ぶりをみれば、このユニットがいかに凄まじい面子かがわかるでしょう。
そんな彼ら4人をソルジャーがスカウトにいく話があるのですが、あの話はマンネリ化しつつあった『キン肉マン』において、久々にドキドキさせられましたね。
彼らの持ち味を存分に発揮させたソルジャーのカリスマ性は、高く評価してよいと思います。
2.“真・友情パワー”という近親イデオロギーの提唱
少年マンガというものは、わかりやすさが重要な要素を占めるものです。つまり善悪の二元対立概念が中心であり、お互いのイデオロギーというものは正反対のものが好まれるわけです。
そういったマンネリの中で、ソルジャーが提唱した“真・友情パワー”というイデオロギーは、ある種変化をつけた対立概念となりました。
やみくもに助け合うというきらいのあった、スグルたち正義超人が標榜する“友情パワー”を馴れ合いと切り捨て、“超人一人一人の固い自立心と信念なくしては真の友情パワーは生まれない”という考え方を彼は“真・友情パワー”と呼んだわけです。
これは単なる善悪二元対立の構図ではなく、善の思想をさらに発展させた近親イデオロギーでした。
つまり善と善との対立という、『キン肉マン』という作品にしては珍しいパターンを演出させたのです。これもマンネリ打破という面においては、大きく評価できると感じるわけです。
3.スケープゴートとしての役割を完全遂行
ソルジャーはかなりの人格者として描かれています。品位・風格・威厳・実力ともに非の打ち所がありません。
アホで下品なスグルやセコい小悪党のフェニックスよりも、よっぽど王位を継ぐのに適していたといっても過言ではないでしょう。
しかしです。どんなに人格者であろうとも、彼は決して王位につくことはできませんでした。なぜならば、彼ははじめから死ぬことを義務付けられたキャラだったからです。
彼の最終的な役割は、弟スグルの精神的成長を促すこと、新必殺技のヒントを与えること、そして怒りのパワーを生み出すために、フェニックスの策略にはまって死ぬことでした。
つまりストーリーを盛り上げるための、スケープゴート(生贄)だったわけです。
彼はその全てをそつなくこなし、シリーズ中盤以降のストーリーを大きく盛り上げてくれました。『キン肉星王位争奪編』におけるピークは間違いなくこのソルジャーVSフェニックスでしょう。
個人的には評価の低いこのシリーズですが、ここだけは高く評価できるのです。
キャラ成功度はほぼ満点
ただせっかく彼が盛り上げた流れも、その後のフェニックスの小細工の連発で無駄になってしまいましたね。そう考えるともったいなかったなあというのが率直な感想です。
結果的には残念でしたが、彼個人の功績は素晴らしいと思いますよ。1キャラとしての成功度でいえば、かなり満点に近いのではないのでしょうか。
※今回はサトシさんからリクエストをいただきました。ありがとうございました。


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