第60回 キング・ザ・100トン

オレ流超人批評
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100トンという超人界最重量を誇る実験器具超人。その格闘スタイルは重さ一辺倒ではなく、実は様々な物理化学を絡めたとてもアカデミックなものだった!?
出身 アメリカ・デトロイト
超人強度 6500万パワー
必殺技 ジェット・ローラー・シーソー
主な戦績 アレキサンドリア・ミート○
テリーマン△

典型的な“学校アイテム超人”

 彼は『キン肉星王位争奪編』において、マリポーサチームの副将として登場しました。チーム見参の見開きページで現れたその姿は、大きな金属の塊に手足が伸びたような姿で、

ずいぶんとずんぐりむっくりとしたヤツが出てきたな

と思わせる、なかなかに直感的なフォルムをした超人でした。

 そしてそのデザインのモチーフは、おそらく分銅であろうと思われます。おそらくじゃないか、絶対に分銅です(笑)。

 つまり彼は“超人募集”という『キン肉マン』名物のキャラクター製造システムにおいて、一派閥を確立している“学校アイテム超人”であり、当時のファン層が小学生のちびっ子であったことを如実に物語る超人なんですね。

何か、何か新超人のアイデアはないのか…あっ! これだっ!!

てな感じで、理科の時間にでも思いついたんでしょうかね(苦笑)。

 このように、超人を考えたちびっ子のバックグラウンドが透けて見えてしまうような、なんともほっこりとしたノスタルジーを感じさせる超人に仕上がっていたと思います(笑)。

典型的な“理科超人”

 そんな学校由来の超人であった彼は、その能力においてもアカデミックさを存分に発揮していたといえるでしょう。

 その様は格闘をしつつも理科の学習のようでもあり、テリーマンとの副将戦は物理化学テイストあふれる一戦となっています。

 系統的には惑星の特性がふんだんに盛り込まれたプラネットマン戦にも通じるところがありますね。ではキング・ザ・100トン戦における理科的演出を振り返ってみましょう。

1.自由落下とシーソー

 キング・ザ・100トンを表す技として、真っ先に上がるのが『ジェット・ローラー・シーソー』です。リング内に仕込むギミックを伴う技としては、作品史上でも1、2を争う派手さでしょうか(笑)。

 そしてシーソーというギミックを扱う時点で、

支点、力点、作用点!

なんていう理科の授業が始まりそうです。そこからの“てこの原理”の学習、みたいな(笑)。

 ただそのシーソーですが、キング・ザ・100トンが分銅をモチーフにしているだけに、シーソーというよりは“上皿天秤”に形状が近いなあと個人的には感じています。よって絵面がより理科の実験ぽいんですよね。上皿天秤と分銅で

“つり合い”の実験でも始めるか

みたいな(笑)。

 でも実際は“つり合い”の実験なんて生易しいものではなく、100トンという自由落下の重さを利用した“超高速跳ね上げ”実験でした。実験に付き合わされたテリーマンにとっては災難でしたね(苦笑)。

2.質量と形状記憶合金

 次の実験は質量と形状記憶合金の特性でしょうか。キング・ザ・100トンは自身を2つの鉄球に分割することで、片方(50トン)をテリーに持ち上げさせるように試合を運びます。

 しかしそこですかさず残りの50トンを上乗せすることにより、100トンの全体重をテリーに課し、そのままバーベルに変形することで、強みである“質量攻め”を存分に発揮します。ただこれを持ち上げるテリーマンも相当ですけどね(笑)。

 そしてマリポーサがかざすプラカードのシルエット図に自身の体を変形させる能力は、形状記憶合金を彷彿とさせます。

 形状記憶合金は熱に反応してその形状を変えるので、厳密にいうと違うのですが、そこは例のプラカードから熱が放射されてキング・ザ・100トンを温めている、ということで(笑)。

 いずれにせよ、金属の不思議な特性をイメージさせるには十分な攻撃だったと言えるでしょう。

3.分子配列と応用集中

 キング・ザ・100トンの硬いボディに悩まされたテリーマンは、彼の分子配列を狂わせることで、そのボディを破壊することに成功しています。

 これはいかに硬い物質であろうとも、傷や欠けがあることで配列の連続性が途切れると、そこを力が迂回することで別の部分に圧力が集中するという“応用集中”が発生し、その限界点を超えると物質が破壊されるという現象を利用した、といえるでしょう。

 この“応用集中”を起こさせるための下準備としてテリーが行ったのが、『ジェット・ローラー・シーソー』を利用してキング・ザ・100トンに体当たりする『反逆ジェット・ローラー・シーソー』です。

 この体当たりでテリーはキング・ザ・100トンのボディに亀裂を与えることに成功します。そして『カーフブランディング』による衝撃力で、その亀裂部に“応用集中”を起こし、キング・ザ・100トンを見事に破壊するんですね。

 このような物理的な視点を得てこの試合をあらためて見直すと、とてもアカデミックな趣のある闘いだったと思いませんか?

テリーの“逆シーソー速度”を計算してみよう

 以上のように彼らの試合は今から思うと、かなり学術的な要素が大きい理科的な闘いであったことがわかります。

 というわけでこのアカデミックな流れにのり、劇中の攻防における物理現象の数値をひとつ、解き明かしてみましょう(笑)。

 その題材に選ばれたのは、『ジェット・ローラー・シーソー』においてテリーマンがキング・ザ・100トンに重さで打ち勝った、『掟やぶりの逆シーソー』の場面です。

 100トンの相手にシーソーで打ち勝つには、その支点を相当ずらすか、相手以上の質量を加える必要があります。

 ただ試合で使われたシーソーを見る限り、その支点は中央にあります。ですので、テリーは純粋に100トンという質量に打ち勝つ必要があるわけです。

 ではここで、テリーがキング・ザ・100トンに打ち勝つためには、いったい時速何キロで上皿に落下しなければならなかったのかを計算してみたいと思います。

 実際にはその時のキング・ザ・100トンは80トンの状態だったのですが、わかりやすくするためにテリーが100トンの衝撃を与えるための速度を求めてみますね。

 テリーの体重もわかりやすく100kgとします。

Q:100kgのテリーが100トンの衝撃を与えるための落下速度は時速何キロ?

 まずはテリーが上皿に乗っかったときの衝撃が何Gだったのかを求めます。上皿に乗ったときに100トンの重さを出さなければならないので、それをテリーの体重(100kg = 0.1トン)で割れば、衝突Gが計算できます。

100t ÷ 0.1t(100kg) = 1,000G

 つまり上皿にテリーがかけた衝突Gは、1,000Gということがわかります。そして1Gの加速度は

1G ≒ 9.8m/s2

ですので、テリーの加速度は

1,000G × 9.8m/s2 = 9,800m/s2

となります。

 ここで衝突の力が上皿にすべて伝わるまでの時間を0.05秒と仮定すると(ほぼ正面衝突ですが(笑))、

9,800m/s2 × 0.05s = 秒速490m

となり、これを時速換算すると

490m/s × 3,600s = 1,764,000 m/h
1,764,000m/h ÷ 1,000m = 1,764㎞/h

となります。

 つまり、テリーはあの時点でなんと時速1,764キロもの超スピードで上皿に落下したことがわかります。

A: 時速1,764キロ

 マッハ1が時速1,225キロですので、時速1,764キロはマッハ1.4です。そう考えると、あの時テリーは必死な行動の裏で、実は音速をも超える戦闘機なみのブーストをかけていたのですね。さすがは超人です(笑)。

 ただ上皿に落下したときに1,000Gもの衝撃があったってことは、その時点でテリー、体がグシャグシャになっているはずなんですけどね。

 自分自身で『ジェット・ローラー・シーソー』と同等、いや、下手するとそれ以上の衝撃を作り出しちゃった、ともいえます(苦笑)。

 ちなみに以上の計算は、普段やらないことをしているので、あまり自信がありません(汗)。間違っている可能性も大です。もし大きく間違えていたらゴメンなさい(苦笑)。

アヴァンギャルドすぎる軽量フォルム

 さて、彼についてどうしても触れずにいられないのが、軽量時のフォルムです。

 彼は分銅ボディを5分割(ひとつ20トン)することができ、それを重ね着することで本来のウェイトである100トンとなる体構造をしています。

 ですので上部のボディを脱ぎ去ると、上半身で残るのは頭を兼ねた支柱と両腕のみになるんです。そしてその両腕が…浮いているんですよね、宙に(苦笑)。

 その姿を見たときの違和感のすさまじさときたら…

あれ…表現としてアリなの…?

と、全国のちびっ子数千万の脳裏に“?マーク”を浮かばせた瞬間ですよ(笑)。

 それは表現としてあまりにも前衛的アヴァンギャルドであり、それだけで彼は読者の記憶の片隅に引っかかるキャラになったと思います。

 また、当時の中井画伯がどのような思いであの表現方法を選択したのか、とても興味深いです。ぜひその時の心境を聞いてみたいですね(笑)。

血殺のVサイン

 もう一つ、彼について印象的なのが“血殺けっさつのVサイン”でしょうか。人差し指と中指の、第一関節のみを鋭角に曲げた独特のVサインです。

 これ…真似しようとしてもできないんですよね。人体の構造上、第一関節だけ鋭角に曲げるなんて、絶対に無理なんですよ(笑)。おそらく多くのちびっ子が

…くっ…無理だ…!

と、その再現ができずに涙を飲んだことと思われます(苦笑)。

 そんな再現不可能なサインの意味は、自身のフェイバリットである『ジェット・ローラー・シーソー』において、2撃で相手を仕留めるという“予告ホームラン”ならぬ“予告KO”です。

 でもこれってよくよく考えると、案外イマイチな予告ですよね。というのも、必殺技は“一撃必殺”がいいに決まっています。

 なのに彼は“二撃必殺”を高らかに宣言していることになり、

オレの技は、一撃では相手を仕留められないぜ

と言っているのに等しいです(苦笑)。

 そしてそれは一撃後に相手の反撃を許す可能性があることにつながり、実際にその隙でテリーマンの反撃の糸口をつくる結果となりました。

 というわけで彼の“血殺のVサイン”は、形状的にも内容的にも読者のツッコミを得るべくして生まれたポーズである印象が強く、

あれはさすがに突っ込んじゃうよね

という意見を持っている人が多いのではないのかなぁと、個人的には感じています(苦笑)。

“仕込み”頼みが強い

 その他、彼の戦闘能力で感じることは、

ちょっと…仕込みに頼りすぎかな…

といったことですかね。

 今まで書いてきたように、彼は

  • シーソー
  • プラカード

というアイテムがないと、その戦闘能力を十分に発揮できないわけです。

 シーソーについては試合の度にあんなに派手な仕掛けを用意せねばならなく、とても面倒くさいファイトスタイルだといえます。

 また、形状変化についてもリングサイドで協力者がいないとその発動ができないため、1対1の勝負という観点から見ると

結局一人じゃ闘えないのね

というそしりを受けてしまう恐れがあることは否めません。

 このように、純粋な実力についてはいくつか疑問符がついてしまう超人だったと思います。理科的なギミックが多かった分、どうしても協力アイテムが必要となり、そちらにしわ寄せが行ってしまったという感じですかね。

おわりに

 以上、キング・ザ・100トンについて考察してみました。

 正直な話、リアルタイムで彼を見ていた時はここまで深く考えずに読んでおり、時の流れと共に彼の印象は薄まってしまいました。つまり彼はいわゆる“消費型超人”の一人だったわけです。

 しかしながら彼のギミックを深堀りしながら読み込んでいくと、とても面白いキャラクターであったことが再確認でき、個人的にはとても興味深かったです。

 そもそも論でこの『オレ流超人批評』というコンテンツは、このようなどうでもいいことちょっとしたキャラクターの深掘りにその存在意義があるわけです。

 よって学術的な彼のキャラクターというのはこの企画にひじょうに合っていたのかなと、この年になってあらためて感じてしまったのでした。

 書く前はちょっと予想していなかっただけに、少し驚いております(苦笑)。それだけに嬉しい誤算でしたね(笑)。

※今回はアクメ将軍さん、マキタさん、すりゴマさん、ハニードーナツさん、ポーカーさんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。

コメント

  1. アツシーニョ より:

    いつも楽しいコンテンツをありがとうございます。

    両腕が浮いているで爆笑しましたww

    そういえばサンシャインの両腕や両脚も胴体との関節が浮いてる様に見えますが、
    キング・ザ・100トンの場合はめちゃくちゃ強引ですよね。

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