第46回 チェック・メイト

オレ流超人批評
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サンシャインヘッドの秘蔵っ子。高潔にして残虐な実力者が落ちた罠とは?
出身 モナコ公国
超人強度 121万パワー
必殺技 馬式誉れ落とし
ルーク・スカイツイスター
主な戦績 キン肉万太郎●

飼い殺し超人・チェック・メイト

 スポーツ選手にとっての一番幸せは、試合に出場することだと思うんですよ。地道に練習してきた成果を、晴れの舞台で発揮する。

 しかしこの単純なことが、不幸にして叶わない場合があります。FA移籍選手で溢れていた時期の巨人の生え抜き選手しかり、トッティとポジションが被っていたASローマ時代の中田英寿しかり。いわゆる“飼い殺し状態”ってやつです。

 実は『キン肉マンⅡ世』という作品において、この“飼い殺し状態”の先頭をぶっちぎりでひた走っている超人がいることを、皆さんはご存知でしょう。そうです。チェック・メイトです。

 いったいなぜ彼はこんな状態を独走しているのでしょうか。今回は彼の個性を分析するとともに、その原因を考察してみたいと思います。

生い立ちと特性

 彼はサンシャインの弟子、つまり直系悪魔超人として、万太郎たち新世代超人の前に立ちはだかりました。

 西洋将棋・チェスをモチーフにしたその容姿は勇壮にて気品に満ちており(サンシャインヘッド談)、たとえ馬と城のせいで左右の視界が不明瞭であろうとも(笑)、ケビンマスク以来のイケメン超人であることは間違いありませんでした。

 さらにはシリーズのボス的扱いの登場に加え、兄弟弟子のレックスキングがちょっとアレな容姿だっただけに(笑)、彼に対する期待感は試合開始前から高かったといえるでしょう。

 そんなイケメン超人である彼は、幼少期にデーモンプラント(d.M.p)のゴミ捨て場を漁っていたところをサンシャインに見出されるという、なかなか素敵なスカウトのされ方をしています。

 無法地帯と思われがちなd.M.pのアジトにおいて、きちんと可燃・不燃ゴミの分別と、回収曜日が徹底されたコミュニティが存在していたことについては驚きを隠せませんが(笑)、とにかくそこで拾われた彼は、師であるサンシャインより、徹底した悪魔超人教育を受けることになります。

 彼のファイトスタイルの大きな特徴は、キング、ナイト、ルークといったチェスの駒の特性を利用した3変化スタイルです。

 1つのキャラの中に3つの特性を持ち込むという特性は、すでにアシュラマンが実践していますが、彼の場合はその身体や体重、材質までもそれに応じて変化させるというものであり、対戦相手にとってはアシュラマン以上に1対3の負担を強いられる印象があります。

 ナイトモードの蹴り足の力強さ、ルークモードの堅さや重さなど、各モードの特性もよく表現されており、そのバリエーションの多さに対応しなければならない対戦相手にとっては、かなりの負担としんどさを感じさせる特徴になっているといえるでしょう。

痛感神経を遮断

 また、彼はサンシャインの教育方針により、“痛い・苦しい・辛い”といったいっさいのネガティブな概念を取り去る特訓を受けます。

 その結果、彼は見事そういった感覚を持たない超人に成長し、その特性は闘いにおいて相手の技を無効化させる効力がありました。

 これを見て思うのは、悪魔将軍の“痛みを感じない”という特性です。悪魔将軍を尊敬し、そしてその体の一部でもあったサンシャインがこのような特性を弟子に仕込むことは、何か悪魔超人の伝統系譜のような感じがしてとても興味深いです。

 ただしこの能力は悪魔将軍のそれとは違い、あくまで痛感神経を麻痺させているだけで、肉体そのものはしっかりと傷ついていました。

 それを不死身と過信したために、彼はキン肉万太郎戦において墓穴を掘ることとなります。

無垢な悪という矛盾

 そして彼の持つ最大の魅力というのは、“礼儀正しいくせにやっていることはワル”というギャップでしょう。

 さらに言うと、そのワルぶりが“サンシャインの洗脳教育によって育まれた、純粋な思考の基に行われている行動”にあると、私は考えています。それら2つの個性が折り重なって、彼の残酷性をさらに際だたせているのです。

 例えば彼はその立ち振る舞いの高潔さから、ゴージャスマンに握手を求められますが、そこで彼は変則的な手の組み方をし、そのままゴージャスマンの腕を極めて破壊するという、極めて残虐な行為を行っています。

 これは彼の悪意がそのような行動をさせたわけではなくて、彼自身の素直な思考から生じた行動なんですね。言うなれば彼は無垢な悪なんです。

 無垢と悪が両立するなど到底考えられないことですが、彼は赤子のような純粋さで行動しているに過ぎないんです。

 それだけに悪意に満ちた悪よりも、かえってタチが悪いともいえるでしょう。本人の思考回路に己の行動が悪である、という認識がないのですから。

 つまりは“礼儀正しいワル”、“無垢な悪”、そんな2重に張り巡らされた背反するギャップこそが、彼・チェック・メイトが作品中において魅力的なキャラクターとして存在しうる所以なのです。

万太郎戦後の転落の理由

 しかし万太郎戦後の彼はどうでしょうか。

 万太郎の“火事場のクソ力チャレンジ”で万太郎のセコンドについて以来、彼は心の底に生じた“闘いの清々しさ”への思いを実感し、その心は正義超人にシフトしていきました。

 そうなるとどうでしょうか。彼は単に“礼儀正しい正義超人”という、ギャップも何もない一超人に転落してしまったのです。

 礼儀正しい正義超人って、極めて普通ですよね? キャラクターという観点からすれば、これは大きな損失です。

 さらに言えば、チェック・メイトというキャラクターが消滅してしまったに等しいと思うのです。

 このことは、その後彼の試合が一度も行われることなく現在(2010年)に至っていることに大きな関わりを持っていると、個人的には推測しています。

 思うにゆで先生は、キャラ的に個性が無くなってしまった彼を、試合で動かせなくなってしまったんですよ、きっと。

 でなければ、常に主人公の近くにいるのに、10年以上も飼い殺しなんてひどい目にあいませんよ(苦笑)。

 しかもネプチューンマン&セイウチンの『クロスボンバー』を食らって以来、ここ数年は主人公の側にもいられないですからねえ。同じく『クロスボンバー』を食らったスカーフェイスがほぼ復活しているのに…。

 さらに、実はヘルメットの下は坊主だったという、バッファローマン(禿)、アシュラマン(大仏)に続く、衝撃ヘアスタイルの仲間入りも果たしてしまいました。

 また、『クロスボンバー』後は筋肉組織がモロに描かれた醜い姿を長時間晒すなど、徹底したキャラいじめの餌食にあってしまい、踏んだり蹴ったりの待遇が続いています。

おわりに

 フォーク・ザ・ジャイアントに苦戦する万太郎のセコンドについたとき、彼は万太郎を激励するためにこんなことを言っていました。

チェック・メイト
チェック・メイト

わたしに勝利したおまえにそんな惨めな弱い姿を晒されては、これから偉大で華麗なる超人生活を送る予定のわたしに唯一の汚点が残るじゃないかーっ!

 この一言こそ、彼が悪行超人から正義超人にシフトした瞬間であると思われるのですが、その内容が現在の彼とあまりにもかけ離れているところが涙を誘います。

 そう考えると、彼は正義化した時点で己のキャラ生命を、その名の通り“チェック・メイト(詰み)”してしまったのかもしれませんね。

 …な~んて、読んでる皆さん、これオチで使うと思ったでしょ? やっぱりって感じ(苦笑)?

※今回はリュゼさん、BOBさん、ザ・ニンザさん、梵天丸さん、ひでちゃんさん、JOJOA55さんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。

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