「1億パワースクリュー・ドライバー」をオニキスマンに炸裂させたウォーズマンだったが、自身もまた深いダメージを負いそのままダウン。半機械同士の一戦は、まさかのドローという結末を迎えた……。
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ロボ超人による哲学問答
激闘を経た二人。“ドロー”という初の裁定で、その後の展開がどう動くのかが注目されます。
そんなエピローグは“機械の善悪”というテーマでの、哲学的な問答となりました。それこそNHKスペシャルで企画されるような(笑)。
パネリストはシュピー大学教授のオニキスマンさんと、コーホー大学准教授のウォーズマンさんです(笑)。
問題提起はオニキスマンから。

機械化において、美醜は関係ない。
なぜ機械であることを恥じる?
機械であることは悪なのか?
これに即答できないウォーズマン。自問タイムがはじまります。う~ん、この問いかけには

機械そのものに善悪はない…
と私は答えざるを得ませんね。
ウォーズマンからの返答がないため、オニキスマンは続けて

どう考えるかは人それぞれだ。
認識を強要するつもりはない
と、先に己の思想スタンスを述べます。
これはウォーズマンがどんな回答をしようとも、それを否定をしないことを宣言したに等しいです。
こんな態度を取られたら

な、なんて紳士的な思想なんだ…!
なんてリスペクトしちゃうじゃないですか、オニキスマン教授!! やばい、魅力の引き出し、また開けてきた!
レギュレーションと逸脱
そして自分が所属する組織においても

神の中にすら私の身体をよく思わぬ者もいる
と、この事象に対する賛否があることを口にします。
これについては“闘い”に対する、それぞれの観念の違いかな、と思いますね。つまり

闘いとは鍛錬を重ねた肉体と戦闘技術のぶつかり合いである
と定義する人は、外的にアドオンされた機械をおそらく“反則”と捉えるでしょう。
その思想は完璧超人、つまりザ・マンの思想がそれに近いのではないでしょうか。私もどちらかというと、この考えに近いです。
それは『キン肉マン』という作品が、プロレスや格闘技を基礎にしているからだと思われます。ですので、それらのレギュレーションの遵守思考が無意識に働くのでしょう。
しかしながら、『キン肉マン』はそんなレギュレーションを超越した展開や、キャラの能力で面白さを発揮する場合も多々あります。
その代表例がウォーズマンだと私は思います。ベアクローは凶器だし、コンピューターによる予測は、利用の仕方によってはチートです。
しかし彼は説明の必要がないほど魅力的です。つまりはすべて、根本たるレギュレーションからどのくらい逸脱し、それを作品の魅力とするか、なのでしょう。
『キン肉マン』という作品は、そのさじ加減が本当に難しい。やりすぎると

何でもありか
と呆れられてしまうし、派手さが少ないと

単調だな
と言われてしまうわけです(苦笑)。
そんな綱渡りをゆで先生は毎週のように行っているんですよね。ありがたいなあ。
オニキス哲学
そしてオニキスマンは

機械そのものに善も悪もない。
それが入る余地があるのなら、それは使う者の心がけ次第
と、とても腑に落ちる哲学を披露します。その上で彼は

そこでお前に問う。
機械であることに恥を感じる…お前の心がけは…悪なのか?
と、ウォーズマンに対して再び機械を使うことの善悪を問います。
その様は古代ギリシャ・アテナイの街角で、ソクラテスが市井の人々と哲学問答を戦わせているかのような雰囲気すら感じますね。
そんなオニキスマンの問いに対し、ウォーズマンが出した結論は

悪だった
という“過去形結論”でした。
それはロボ超人であることによる幼少期の人種差別があり、それに対する復讐で機械の身体を悪用してきたから、という事実があったからだそうです。そして

それがひどい間違いであることを教えてくれたのが…キン肉マンだ
と、己の間違いに気づかされ、自身が恥に思うようなこの力の使い方をやめた、と告白します。
このあたり、ウォーズマンがどれほどスグルに感謝しているかがしのばれるシーンですね。一人のすさんだ思想を浄化するダメ超人。それがスグルの真骨頂です。
ニコライ哲学
そしてここから彼が口にする、自身の考え方の変遷については、その一言一句に含蓄があり、とても趣深いシーンとなっています。
テキスト量が多くなるので部分的な割愛も考えたのですが、サラッと通り過ぎるにはもったいなさすぎるので、ほぼすべて記載します。

自身が恥に思うようなこの力の使い方をやめた

この力をオレは…本当に正しいことのみに使えるようになったのか?

まだ密かに世間に復讐戦を続けているんじゃないのか?

正義超人になってからも、確固たる自信はなかった

しかし今日、機械であることを全肯定するアンタに畏怖し、堂々とした立ち振る舞いに触れた

そして今の問いに答えを出せたことで、ようやくオレは迷いから解放された

アンタの言うとおり、機械そのものが善悪ではなかったんだ

使う者の心がけ次第…ならばオレはそれを誇るべき強みにしたい

格闘のイロハをロビンに教わり、人の心をキン肉マンから教わった

オレに欠けていた最後のピース、それを埋めてくれたのはオニキスマン…オレと同じ機械の身体を持ったアンタだ

そのことに心から礼を述べたい。ありがとう
いかがでしょうか。深いですよね。そして心情告白のトーンがとても落ち着いていて、聞く者を引き込みます。
また、話の組み立てが論理的で、結論に向けてひとつひとつ丁寧にブロックを積み重ねるようであり、おかげで聞き手は耳をそらすことができません。
このあたり、やはり彼がコンピューター超人である、という背景があるようにも思えます。だからといって人の心が希薄なわけではなく、それどころか血肉が通っていてとても熱い。
つまり彼は誰よりも人としての感情が豊かでありながらも、それを冷静に順序だて、俯瞰して分析できるというキャラクターであるわけです。
前回も書きましたが、それは静と動、熱さと冷静さ、両極に振れる要素を見事に融合させた、ハイブリッドなキャラクター像を、我々に見せてくれるわけです。
ある意味、かなり完成されたキャラクターとなってきたわけですね、彼は。
これらは少年誌連載時ではおそらくできなかったであろう表現だと思います。ちびっ子、読み飛ばしそうですもんね、絶対(苦笑)。
そう考えると、読み手である我々も、子どもの時の無邪気な感性を維持しつつ、大人でシックな感性も同時に楽しめる、ハイブリッドな読者となったわけです。
つまり、かなり完成された読者となってきたわけですね、我々は(笑)。
結ばれた強固な絆
そんな彼の真摯な回答、そして感謝の意を告げられては、さすがの超神・オニキスマンも、心に響くところがあったようです。

合格だ
来たっ! 超神サマの合格判定!! その理由がまた粋です。

お前はまだ生かしておきたい。
私が認めたのだ。
調和の神も文句はあるまい。

今の精神状態を得たお前がこの先、どんな新たな未来を切り拓けるものか…興味が湧いてきた

そのためにも見てくるがいい。
最上階から見える景色を、その目で……
なんだよ~、カッコいいじゃないか、オニキスマン! 今回のこの会話とやり取りで、彼とウォーズマンの間には強固な絆が結ばれた感じがします。
そしてウォーズマンにとっては強力な後見人、もしくは知己を得たという感じがありますね。
それこそテリーマンとジャスティスマンとの闘いで築かれたような絆と近しいでしょうか。あの時のジャスティスマンの告白も、今回のウォーズマンの告白にトーンが近かったなあ。
そしてオニキスマンはウォーズマンを最上階へと誘います。ただその方法が仰天です。

め、目ん玉飛び出ちゃった!
ここでこの表現を持ってくる感性、それがゆで先生のすごさなのでしょうか。読者の誰もが

えっ⁉
と思ったことでしょう(笑)。
シックでアダルトに進んでいた物語のトーンを、強烈に破壊するアヴァンギャルドな表現。これだからゆで先生は油断できないのですよ(苦笑)。
個人的には

“その目で見てこい”という発言にかかってるのかな?
という、ゆで感性のダジャレ表現なのかな、なんて思いました(笑)。
使命の引継ぎ
そして最上階への転送の際にも、二人はシビれる会話を行います。

この判断、間違っていないと信じたい。
超人が良き維新を起こすことを期待している。
未来のために…神には起こせぬ維新をお前たちが…な…

アンタの思いはロボ超人の誇りにかけて、このオレが…未来に繋ぐと約束する!
くうう~、魅せるね、お二人! ここでオニキスマンの異名である“維新の神”に話が戻りましたよ。
このオニキスマンのセリフは、完全に使命の引継ぎですよね。それこそ超人の可能性に何かを賭けた、もしくは賭けるだけの価値を見出した行為です。
言い換えると“神では不可能な何か”を超人が克服できると希望を持った証です。その“神では不可能な何か”が何なのか、ですね。
そしてオニキスマンが託したことを、快諾したウォーズマン。これまたカッコいい。
試合後にこれだけの成長、そしてモチベーションアップが見られることに、こちらも嬉しくなってしまいます。
またこのやり取りは、やはりテリーマンとジャスティスマンとの試合後を彷彿とさせます。要は新たなる者に、世の変革や維持を任せるという、格上キャラの引き際のシーンですよ。
引く方もカッコいいし、受ける方もカッコいい。もうね、マンガ界のWin-Win表現です(笑)。
超神軍団の現状
これにてバベルの塔の対抗戦は、3戦が終わってリアルディールズの2勝1分けです。奇しくも悪魔騎士との5重のリングでの闘いと同じ展開ですね(笑)。
ここまでで共通しているのは、相対する超神すべてが、超人と分かり合う結末になっていることです。すべての超神が超人の可能性や価値を認めているんですね。
この展開がどこまで続くのかも興味があります。既出のランペイジマン、ザ・ナチュラルがそのような変節をする余地があるキャラクターなのか。
ですのでここで一度超神をリスト化しておきましょう。太字は超人を認めた方々です。
- ランペイジマン
- バイコーン
- ザ・ナチュラル
- コーカサスマン
- イデアマン
- ザ・ノトーリアス
- ジ・イクスキューショナー
- リヴァイアサン
- オニキスマン
- ?
- ?
- 調和の神
こんな感じでしょうか。
調和の神を除くとまだ顔出ししていない超神が2体います。この2体が“話せばわかる”タイプなのか。ただの“暴れん坊”タイプなのか(笑)。
個人的には“分かり合う”という展開が好きなので、殺戮だけのキャラはちょっと…って感じなんですけどね。
ただここんところ、物分かりのよい敵キャラが続いたので、そろそろ無慈悲なヤベーやつが来るかもしれませんね。
二人は何を見たのか
さて、最後になってまた我々読者をザワつかせたのが、一足先に最上階へ上ったジェロニモとネプチューンマンとの会話です。

ネプチューンマン! これは…一体…どういうことズラ⁉

さあな。だが…これは神も動くわけだ
え? なになに!? 何なのよ(笑)! 調和の神が動いた真の目的が、“超人の選別”以外にあるってことですか?
それともこの“何か”を打破するために、超人の選別が必要なのかな?
おそらくジェロニモとネプチューンマンが見た“何か”を打破することこそが、オニキスマンの言う

神には起こせぬ維新をお前たちが起こしてくれ
なのかもしれません。
さあ、彼らはいったい何を見たのか。気になって仕方ないですね。ただ次回はGWの谷間、5/2の更新だそうです。
2週間、なんとか我慢して待ちましょう(苦笑)!
その他気になった点
その他気になった点は
- ウォーズマンとオニキスマンとの会話ポーズは、川原で決闘をした中学生のようだ(笑)。
- “お前、つえーな”、“お前もな”みたいな(笑)。
- いつもながらニコライは不憫。
- ウォーズマンのオニキスマンへの呼び方は“アンタ”。
- ロビン-スグル-オニキスマンの強烈縦ライン。ワールドカップで勝てる(笑)!
- “腹を割って話す”とはこのことでしょう。
- ダメだ、目ん玉飛び出しのスパイスが強すぎる(苦笑)。
- オニキスマンが残した胸当てが、ほのかにブラジャーっぽい(笑)。
- ブラジャーを大事に抱えるウォーズマン。
- ごめんなさい。私が悪かったです。
- コミュニケーション・モンスター、キン肉スグル。
- あなたの気づかいは天下一品です。
- 最上階の“レッグウォーマー・ブラザーズ”。
- ジェロニモってあんなに小さかったっけ?
こんなところですかね~。そしてコミックス最新刊78巻、絶賛発売中です!


コメント
更新ありがとうございます
ロボ超人同士の会話はとても考えさせられる内容でしたね
他のロボ系超人達(ステカセやバイクマン等)の意見も聞いてみたいと思いました
まぁ今回の一番の衝撃は目玉ウィーンからのパワーと大胸筋矯正サポーターでしたが(笑)
それとウォーズマンは欠片をリングに忘れて転送された様な気がします
合格通知を与えた側、もらえた側
どちらもキャラが立っていて良い回でした
エクス・リヴァ・オニキスの3人はまだ何かしら活躍を見せて欲しいですなぁ…
さて、そろそろ超人側が負ける展開来ますかね?
特に、はぐれ悪魔コンビの方で
といっても「試合に勝ったが不合格判定」という感じでしょうけど
勝ち方が汚い、心が醜いとかで
残りはどんな組み合わせかな〜…
オニキスの胸当て、もしやケビンマスクの…
さらに輪をかけて良いキャラになるオニキスマン
まさに人を導く神そのもの振る舞い
バトル序盤のあの傲慢さと強さがあるからこそなお引き立ちますね
そしてジェロとネプが見た光景はいったい何だったのか
サタン復活前ならサタン復活も選択肢に入ったけど
サタン様はジャスティスさんにヒールムーブかまして退場したしなぁ…
ベタに宇宙の崩壊かなぁ…まさか別次元の神が攻めてくるとか?
バッファローマン戦では立ったままショートしましたが、今回は立っているのがやっとながらも会話できたところはターミネーターの再起動を思い出しました。言い方は不味いですがウォーズマン、その部分でも進化してますね。
スグル戦の後でも心のどこかで負い目があり、やはり心の傷は簡単には拭えませんが認められて自信を持てる、自身を誇れることができる相手に認められたこと本当に良かったと思います。
次回は天界の危機の一片が見られるでしょうか?リヴァイヤサンとエクスキューショナーの姿はなかったようですが二人に少し解説してもらいたいですね。
皆さん、こんにちは。
エピローグ、読ませる展開でしたよね。オニキスマンの評価がグッと上がったとの意見も多いですね。
また、ジェロニモとネプチューンマンが見た光景、気になりますよね~。ゆで先生はもうひとネタ、用意しているんでしょうね。
>コビーさん
すごく鋭いご意見だと思いました。何気にデザインがケビン仕様に微妙に変化していましたよね!
あるかもしれませんよ、これ。