ピエール・ガスリーとホンダを称えたい(前編)。

オレ流雑感
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 先日アルファタウリ・ホンダ(旧トロロッソ・ホンダ)のピエール・ガスリーが、イタリアグランプリで初優勝しました。その類い希なる素質でF1での活躍を期待されたガスリーでしたが、その道筋は決して順風満帆ではなく、かなりの紆余曲折がありました。

 そんな彼のレース人生において、PUパワーユニットメーカーとして密接にかかわってきたのがホンダでした。両者のコンビは必然ではなく、多分に偶然ではあったのですが、結果的に苦楽をともにするパートナーという関係性を構築してきたのです。

 というわけで、今回は“ガスリーとホンダを称えたい”と言うことで、ホンダが2015年にF1復帰してからの、両者のこれまでの歴史や関係性を紐解き、その波瀾万丈なレース史を振り返ってみたいと思います。

ガスリーとホンダの俯瞰図

 このグラフは2015シーズンから先日のイタリアGPまでの、ガスリーとホンダのコンディションの相関性を独自にグラフ化したものです。縦軸の100に近づくほど気分高揚、レースも絶好調で、0に近づくほど精神的にもレース的にもダメ、という形になっています。ちなみに色合いは昨年のトロロッソのチームカラーをイメージしています(笑)。このグラフを

  1. 接触以前期(2015~2016シーズン)
  2. スーパーフォーミュラ期(2017シーズン)
  3. F1二人三脚期(2018シーズン~現在)

の3期に分けて振り返ってみましょう。

接触以前期(2015~2016シーズン)

 接触以前って…なんかコロナの感染ルート探索みたいですけど(苦笑)、ガスリーとホンダの関係がなかった時期のことです。グラフだと左寄りの部分になります。

 見やすいように、横長に拡大します。

 一言で言うと、ガスリー上げ潮期、ホンダ辛酸期です。

ガスリー、GP2で着実なステップアップ

 当時のガスリーはその将来性を買われ、レッドブル・ジュニアチームに所属。これは将来レッドブルやトロロッソといったF1チームに昇格するための育成枠に入ったことを意味しています。キン肉マンで例えるならば、

  • レッドブル=完璧超人始祖
  • トロロッソ=完璧無量大数軍
  • レッドブル・ジュニア=ミラージュマンの査定を受けている時期

といったところでしょうか(笑)。そして彼はレッドブルのサポートを受け、F1ステップアップの一つ前のカテゴリーであるGP2(今のF2)シリーズで、そのキャリアを積んでいました。

▲レッドブル・ジュニアらしく、レッドブルカラーでGP2を走るガスリー

 F1へ昇格する道筋としてありがちなのが、F4⇒F3⇒F2⇒F1といったステップです。それぞれのカテゴリーでポイントを争い、高ポイントをとったドライバーが次のステップに進めるというサバイバルです。キン肉マンで例えると

  • F4=恐怖の火炎地獄・50メートル力泳
  • F3=恐怖の新幹線アタック競技
  • F2=死のハイロード 50km耐久ローラーゲーム
  • F1=超人オリンピック決勝トーナメント

といった感じでしょうか(笑)。ただそこに“資金力”という別の力が作用することもあるので、そこら辺がやや政治的ではあるのですが、大筋としてはこんな感じです。

 そんな中、ガスリーは2015年シーズン終了時に110ポイントを叩き出し、総合で8位を獲得(グラフ上青の①)。そこで弾みがつき、2016シーズンでは開幕戦で3位と2位を獲得(青の②)。その後も安定した成績を残すようになり、存在感を表すようになります。

 そして2016年の7月にはGP2初優勝。そのまま表彰台(1~3位)を争う常連となり、見事2016シーズンチャンピオンになります(青の③)。キン肉マンで例えると、ミラージュマンに認められたネメシスといった感じでしょうか。

 結果を出したので、次のステップは当然F1だ、という機運が高まります。奇しくも2016年のトロロッソのドライバーだったダニール・クビアトがスランプに陥り、そのシートの維持が危ぶまれていたのもあり、ガスリーのトロロッソ昇格は時間の問題だと思われていました。それくらい、彼はジュニアカテゴリーを順風満帆に駆け上っていったのです。

▲シーズンチャンピオンとなり、喜ぶガスリー

栄光のマクラーレン・ホンダ、初っ端から赤信号

 それに対して、F1での栄光を再び手にするべく、マクラーレンとタッグを組んだホンダは、初年度から苦戦しました。パワーユニット開発で1年のハンデがあったこと、マクラーレンが発注した、タイトでスリムな“サイズゼロ”というパワーユニットの形状に無理があったことなどが原因で、本番前のテストランからマシンがまともに走らないという、暗雲立ち込める船出となります(赤の①)。

 2015シーズンが始まってからも、過去の栄光のような競争力は微塵もなく、予選Q1を突破することも難しい始末。さらにはパワーユニットの故障が相次ぎ(赤の②)、パワーも信頼性もないダメダメエンジン、というイメージが横行し、ホンダを応援するファンたちも辛酸を舐めることになります。

▲テストランすらままならないマクラーレン・ホンダ
▲信頼性不足でリタイアが続きます

 キン肉マンで例えるならば、ドクターボンベの人工心臓手術を受けて超人墓場から戻ってきたウォーズマンが、その実力を期待されるも、人工頭脳の復活を忘れられて、素人並みの戦闘力になってしまった感じでしょうか(苦笑)。過去の実績と期待が高かっただけに、その落差に世界中がひっくりこけた感じです。

 そしてその批判はとうとう自チームのドライバーからも浴びせられるようになり、その頂点に達したのが、当時最高のF1ドライバーといわれていたフェルナンド・アロンソの

アロンソ
アロンソ

GP2! まるでGP2エンジンだよ!

発言です(赤の③)。これはパフォーマンスがあまりにも改善しないマシンに対し、超一流ドライバーたるプライドが傷つけられた怒りから発せられた罵声です。

▲格下チーム(右)にストレートであっさりと抜かされる(泣)

 GP2…そう、先ほどガスリーの項で書いた、一ランク下のカテゴリーです。つまり「ホンダのエンジンはF1のレベルではない! 下位カテゴリーのエンジンだ!」と、強烈に罵ったのです。

 さらに言うと、この発言が出たのがホンダのホームサーキットである鈴鹿であり、ホンダのお偉い方がたくさんいる中で言い放つという、これ以上ないくらい最悪な場面での罵声でした。

 キン肉マンで例えると、ネプチューンマンがロビンマスクに対して

ネプ
ネプ

下等超人! この下等超人が!

と、イギリス王室の展覧試合中に言い放つようなものです。

 これにより、ホンダの技術評価は地を這いずり回るほどに失墜。タッグを組んだマクラーレンとの関係はギクシャクし、所属ドライバーからもクソミソに言われるという、苦渋に満ちた時間があと2年続くことになります。

 2016シーズンは2015シーズンでの弱点を徐々に埋め、レースペースは少しずつ回復するも、ミッドフィルダーからの脱却は叶わず、表彰台は遙か遠くにある、というのが現実でした。この頃には参戦前の期待感は完全に消え失せ、

ホンダ=過去の栄光

というイメージが、業界内では蔓延していくことになります。タッグパートナーであるマクラーレンからは、「ホンダが担当するパワーユニットだけがダメだ」という責任転嫁も公然と行われるようになり、ファンからは「勇気ある撤退を」「アロンソに恥をかかせるな」といった厳しい評価もあがり、まさに四面楚歌でのF1活動が続いていくことになります。

 長くなりましたので、次回に続きます。

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