注)この論文は1994年のものです。
第七節 友情・努力・勝利 ~3大テーマを取り込むパターンの分析~
「友情・努力・勝利」は『ジャンプ』創刊以来、数多くのマンガに取り入れられてきたテーマであり、固い編集方針であった。
この視点から『ジャンプ』マンガを見ていくと、これら3つのテーマをうまくストーリーに盛り込んだ「パターン」があることがわかる。
表21 『ジャンプ』マンガ3大テーマの取り込み具合 コマ数、( )は%
表21は、1990~1994年の5年間における『ジャンプ』マンガの「3大テーマ」の取り込み方を分析したものである。
「テーマ」は一次、二次、三次に分け、最もよく表現されているテーマを一次とし、それに付随するテーマがあるのならば、二次、三次と当てはめていった。
つまり「友情-努力-勝利」ならば、そのマンガで一番大きく扱っているテーマは「友情」で、その次に「努力」、そして「勝利」というテーマが付随するということである。
「友情-勝利」のようなものは、三次テーマは特に取り入れてなく、2つのテーマでマンガが成立しているということである。
「あてはまらない-勝利」のようなものは、主要テーマとしてこの3大テーマは取り入れていないが、そのときどきに「勝利」をテーマにすることがある、という意味である。分類の基準は以下の通りであった。
- 友情…味方のために尽くす、チームワークを重視する、味方の仇討をする、相手を思いやる(愛情)、などといった、行動を重んじるもの。
- 努力…一つの目標に向かって努力する行動を重んじるもの。
- 勝利…敵に勝つこと、スポーツ・格闘などで勝利することを重んじるもの。
この結果、全124タイトル中87タイトル、約7割が3大テーマのうち、2テーマ以上を取り入れていることがわかった(赤枠で囲った範囲)。
1テーマ以上で見ると106タイトルで85.5%と、ほとんどのマンガがどれか一つのテーマを取り入れており、徹底した編集方針を裏付ける結果となった(青枠で囲った範囲)。
占有率は一次、二次、三次を総合して出した、各テーマの占有率である。これを見ると「友情」「勝利」が3割でほぼ並んでおり、「努力」「あてはまらない」が残りの3割を分け合っている形になっている。
「努力」の割合が少ないのは、努力しなくても勝ってしまう、天才的なキャラクターがいるからだと思われる。
「勝利」が多い理由は、第三節の「行動目的分析」(表16参照)と密接なかかわりを持っており、「勝利」を目的にした行動は「友情」や「努力」を盛り込みやすいのである。
それは一次テーマを「勝利」にしているマンガ40タイトル中37タイトルが、他の付属テーマを伴っていることで証明できる。ここでマンガのあるパターンが見えてくるのである。
描きたい!!を信じる 少年ジャンプがどうしても伝えたいマンガの描き方
週刊少年ジャンプ編集部(著)
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