週刊少年ジャンプ論 第五章 第一節

オレ流週刊少年ジャンプ論
スポンサーリンク

注)この論文は1994年のものです。

第五章 広がるジャンプワールド

第一節 『ジャンプ』を取り巻くメディア

 『ジャンプ』はそのマンガを、様々なメディアへ商品供給している。『ジャンプ』の部数が増えるとともに、『ジャンプ』を取り巻くメディアは増え、その影響を受けている。

 図33は『ジャンプ』から派生したメディア群を表したものである。この節ではこれら派生したメディアについて取り上げていこうと思う。

図33 『ジャンプ』から派生するメディア

▲独自に作成

 『Dr.スランプ』(鳥山明)がテレビアニメ化されたのは、1981年(昭和56年)の4月であった。この放送開始により、全国に「スランプブーム」が巻き起こった。

 主人公のアラレが喋る「んちゃ」「ほよよ」「キーン」といったフレーズが小学生を中心に流行し、その人気は『ジャンプ』読者以前の未就学者にまで浸透していく。

 そしてこの未就学者が2~3年後に『ジャンプ』読者として成長するという、部数増につながる循環が確立されたのであった。

 『Dr.スランプ』の爆発的ヒットがもたらしたのは『ジャンプ』の部数増大だけではなく、多岐にわたった。映画、キャラクター商品・食品などがアニメから飛び火し、大きな利益をあげたのである。

 1983年(昭和58年)に『キン肉マン』(ゆでたまご)がアニメ化され、これもまた大ヒットになると、『ジャンプ』マンガをアニメ化すればヒットする、という定説ができ、その後続々と『ジャンプ』マンガのアニメ化がなされていった(表23)。

 この傾向はエスカレートし、連載第一回を読んだだけでアニメの原作権を買いに来る製作会社もあるほどであった。

表23 ジャンプ作品アニメ化リスト(Dr.スランプ以降)

▲独自に作成

 『ジャンプ』サイドはアニメ化するにあたって、マンガ家の著作権と雑誌の編集権を徹底した。マンガの担当者は契約条項を細部にわたってチェックし、台本の直しやキャラクターの修正要求、録音の立会いと、マンガ家が納得できるようなアニメ化のシステムを作り上げていった。

 アニメ製作側としては要求が厳しいだろうが、やればヒットするのだからやらざるを得ない。常に主導権は『ジャンプ』が握っているのである。

 アニメ化にするとすべてよいことばかりかというと、問題点もいくつか生じてくる。アニメの力でマンガも爆発的人気がでるが、アニメ人気におぶさったマンガは、アニメ終了とともに、一気に消沈してしまう。マンガ家も次が続かなくなり、“一発屋”で終わってしまう可能性もあるのだ。

 また、マンガ家や担当者がアニメになりやすいテーマ・ジャンルばかりを追求してしまい、マンガ本来のおもしろさの追及を怠るという、逆転現象が生じる恐れもある。

 だが『ジャンプ』マンガのアニメ化神話はいまだに続いている。1990年(平成2年)東映は集英社と提携し、春夏恒例の「東映アニメフェア」で上映するアニメを『ジャンプ』連載マンガに一本化した結果、爆発的なヒットとなった。東映宣伝部の茂木俊之は

「一番力の強い雑誌と手を組んで、継続的に共同制作の形をとったほうがいい」と考え、「とてつもない力ですよ。予想を遥かに上回った」

1991年日本経済新聞6月22日付け

と、その強さを語っている。

 アニメの他に顕著なものが、ゲームソフト化である。ご存知の通り、ゲーム業界はこの不況に関係なくその市場を拡大しており、『ジャンプ』はその一翼を担っているのである。

 アニメ化されたマンガのキャラクターを使ったゲームはもちろん、アニメという段階を踏まずに直接マンガからゲーム化することもある。

 『ドラゴンクエスト』(エニックス)『ファイナルファンタジー』(スクウェア)などといった大作ソフトは、どこよりも早く誌面で情報を流すなど、共同体制を引いている。あるソフトハウスの担当者は

「ゲームソフトの発売前には、内容の特集記事を載せたりしてバンバン宣伝してもらえる。発売直後に完売できるのはそのおかげ」

1991年日本経済新聞6月22日付け

と語る。

 また『ジャンプ』連載マンガをゲームにするだけでなく、『ジャンプ』自体をゲーム化した『ファミコンジャンプ』(バンダイ)まで作ってしまった。もはやゲーム業界との結びつきはアニメ以上ともいえる。

 その他、人気マンガをノベライゼーションした『ジャンプノベル』や、オリジナルビデオアニメ(OVA)、CDブックなど、マンガから派生したメディアは幾多にものぼる。

 マンガは今まで映画や小説の表現技法を取り入れたりして、その表現能力を高めてきた。しかし今後は映画や小説が「マンガ的技法」を取り入れてくるかもしれない。実際、その傾向は出現しつつある。

 後藤広喜前編集長は

「他媒体との連携は、こちらから働きかけているわけではない。部数を伸ばすための戦略というわけでもなく、あくまで結果的なもの」

1991年日本経済新聞6月22日付け

とはいうものの、『ジャンプ』が他メディアに与える影響力は、計り知れないものがあると考えざるを得ないだろう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました