F1リザーブドライバーというポジションの怪。

オレ流F1
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 F1の2020シーズンも早いもので残り2戦。そんな中、今年のF1はレギュラードライバーの欠場がまれにみて多いシーズンとなっています。その理由は当然コロナウイルスの蔓延が大きく、

  • セルジオ・ペレス(レーシング・ポイント)…2レース
  • ランス・ストロール(レーシング・ポイント)…1レース

といったレギュラードライバーが、コロナウイルス感染という理由で都合3レースの欠場を余儀なくされています。

 さらについ先ほど入ったニュースでは、2020シーズンのチャンピオンを決めたルイス・ハミルトン(メルセデス)もまたコロナウイルスに感染し、次戦の欠場が決定。また、先日のバーレーンGPで大クラッシュを喫したロマン・グロージャン(ハース)も次戦、おそらく最終戦も欠場になる見通しです。

▲マスクをしている人がコロナ感染、包帯を巻いている人がクラッシュです。

 このような事態に対する対策として、F1チームではリザーブドライバーを複数名任命し、そのバックアップをするシステムをとっています。いわゆる代役制度ですね。しかし…この代役制度があまりうまく機能していないという実情があるんですよ。

 というのも、コロナによるレギュラードライバーの欠場を経験したレーシング・ポイントのリザーブドライバーは

  • ストフェル・バンドーン
  • エステバン・グティエレス
▲左がバンドーンで右がグティエレス。

で登録されていました。普通に考えれば、この2名のうちどちらかが代役を務めればいいのですが、実際に代役で3レースを担当したのはニコ・ヒュルケンベルグでした。

 この事実を見る限り、??って感じですよね(苦笑)。意味がわからないと。理由を書くと

  1. ストフェルは参加しているフォーミュラーEのスケジュールが被ったから×
  2. エステバンは最後にF1を運転してから3年も経っているから×
  3. エステバンは最新のF1をテストドライブしたことがないから×
  4. ニコは昨年までバリバリのF1ドライバーだったから○
  5. ニコはレーシング・ポイントに過去所属しておりツーカーだから○
  6. ニコは運よくレース場の近くにいたから○

といった感じだったのです。

 1についてはある程度仕方ないかな、と思います。でも考えようによっては、リザーブドライバーがレースに帯同していないこと自体ありえるのか、と疑問に思う方もいると思います。なんのためのリザーブだよ、って感じですよね(苦笑)。

 2、3については、もっとわけがわからないと思います。平たく言うと2は「キャリアの断絶が長くて不安だからダメ」、3は「運転したことのないやつは危ないからダメ」という理由です。だったらなんでリザーブドライバーとしてリストアップしたのさ、と突っ込みたくなるもんです(笑)。

 4~5については、確かに前述の2名よりは安定感があるよね、と思うのですが、そもそもリザーブ登録されていない人が代役運転するって、規定上いいの? だったら事前に提出したリザーブ登録票って意味ないよね? なんて思ってしまいます。

 6はちょっと笑っちゃう理由ですが、これも巡りあわせでしょう。でも運もあるのかよ、と突っ込んでしまいたくなります(笑)。

▲突然の代役にもかかわらず、しっかり上位フィニッシュしたニコ。

 こんな感じでF1におけるリザーブドライバー制度は、超人オリンピックでウルドラマンの代役でキン肉マンを出場させるか否かでもめたオリンピック委員会並みにグダグダです(苦笑)。よく言えばフレキシブルか(笑)。でも他のスポーツだったらありえないですよね。

 野球やサッカーだったら、レギュラーが負傷退場したら、ベンチ登録されている控え選手が代わりを務めますよね? たまたま観客席でプライベート観戦していた大リーガーに「代わりにセカンドに入ってくれ」なんて言わないですよね(笑)? でもF1ではそれが起きたんです。

 これはF1というスポーツが、他のスポーツと比べてかなり特殊なものであることに原因があると思われます。その中でも際立って特殊なのが

プレイ中に自分、もしくは他選手を死に至らしめる可能性が圧倒的に高いスポーツである

という点です。

 特に“他選手を死に至らしめる可能性がある”という点は重要でして、このことは“技術的に未熟で経験が不足しているドライバーが特にそういったトリガーになり得る可能性が高い“、ということを意味しています。要は技術不足のドライバーが起こす、巻き添え事故ですね。もちろんベテランドライバーだってトリガーにはなり得るのですが。

 こういった点から、とにかくF1はまず安全性ありきの視点から物事を考えます。生死にかかわる事故、多重事故等が起きる確率を可能な限り低くすることを求めるのです。

▲ちなみにグロージャンはこの火炎の中(紫囲み)から生還。さすがに欠場へ。

 ですので、いざリザーブドライバーが必要になるときでも、エステバンのように“キャリアの断絶が長い”といった、少しでも不安要素がある場合は起用されないんですね。

 また、“最新のF1をテストドライブしたことがない”いう点も、結局は安全性に行き着きます。というのも、F1というスポーツはマシン側の技術革新が日進月歩といっていいくらい早いです。それに伴ってマシンパワーは増強され、レース中の平均スピードは年々上がっていく傾向があります。

 そんな技術革新を前にすると、数年前の経験値ですらドライビングに意味をなさないという、浦島太郎現象が起きるわけです。これも安全面からいえば、避けて通りたい項目です。安全性を担保するにはそれなりの走り込みと慣れが欲しいわけです。ブルペンピッチャーが肩をならすようなものですかね。

 でもF1というスポーツは、そう簡単にテストドライブができる環境にないんです。つまりは最新マシンを練習する機会が圧倒的に少ない。だからたとえ経験者といえども、習熟する時間が得られないという物理的理由により、結果「危険かな」という判断をされてしまうわけです。

 そう考えると、F1ドライバーは連続性をもって現役を続けないと、二度とそのフィールドに戻れない可能性が高いですね。いいとこ2年の空白が限界かもしれません。

 そんな特殊な事情を知った上で、じゃあ次回欠場するルイス・ハミルトンと、ロマン・グロージャンの代役を誰にするかが注目となってきます。

 するとハースはグロージャンの代役に、正式なリザーブドライバーであるピエトロ・フィッティパルディを指名してきました。珍しくスムーズに登録ドライバーが代役となったわけです。いや、珍しい(笑)。

 ただねぇ~このフィッティパルディですが、個人的にはひじょうに危険かと思います。先ほどまで山ほど“安全性第一”と書いてきたんですが、彼、ぶっちゃけその安全性が怖いです(苦笑)。それだけに、ハースが彼を指名したと聞いたときは「本気か?」と思いましたから…深刻な事故が起きなければいいんですけどね…。

▲フィッティパルディ。大丈夫かなぁ…?

 そして一番の注目点は、ルイス・ハミルトンの代役です。なにせ今年のチャンピオンカーですからね。このマシンを駆れば、優勝も夢ではありません。それだけに誰が運転するのか大注目なんですよ。

 ではメルセデスのリザーブドライバーは誰なのかといいますと…

  • ストフェル・バンドーン
  • エステバン・グティエレス

です。…あれ? デジャヴ現象かな? いえいえ、違います。デジャヴでも誤植でもありません。メルセデスのリザーブドライバーはストフェルとエステバンなんです。彼らはメルセデスのリザーブドライバーでもあり、レーシング・ポイントのリザーブドライバーでもあるんです。両チームとも使っているエンジンがメルセデス製なので、リザーブドライバーを共有しているんですね。逆に言うと、それくらいリザーブドライバーの駒が少ないとも言えます。

 でもエステバンは前述した通り、敬遠されますよね(泣)。ではストフェルがとうとう出陣か…と思われるのですが、そんな素直にいかないと思います。

 というのも、メルセデスにはジョージ・ラッセルという、メルセデス所属の秘蔵っ子がいるからです。彼は現在ウィリアムズでF1をドライブしている現役F1ドライバーです。ウィリアムズもメルセデス製のエンジンを使っているので、そのつながりでレンタルされているんですね。

 つまり彼はメルセデスF1チームの正統ドライバー候補なんです。近い将来、メルセデスF1をドライブする期待をかけれられている逸材なんですね。ですので、これを機に親玉のマシンでどこまでできるかテストしてみるか、なんてシナリオも多分に考えられるわけで。

▲メルセデスの秘蔵っ子、ラッセル。ちょっとサンダーバードっぽい(笑)。

 個人的にこの流れはかなり興味深いです。現在は下位チームでもがいているラッセルですが、貧弱なマシンを駆っていることを考えれば、なかなかのパフォーマンスを披露していると評価が高いです。

 そんな彼が、いざ高パフォーマンスを発揮するマシンをドライブしたらどこまでやれるのか。真の実力はいかほどのものなのか。興味がつきません。ストフェルには申し訳ないけど(苦笑)。

 じゃあラッセルが抜けたウィリアムズのシートは誰が代役を務めるのか、という将棋倒しも生じます。ひょっとしたらそこにストフェルが入るかもしれません。もしくはウィリアムズの正規のリザーブドライバーが入るのかも…ただウィリアムズのリザーブドライバーは経験不足の方が多めなので、ハースのフィッティパルディ同様、ちょっと危険なにおいがしますね(苦笑)。

 そんな感じで、リザーブドライバー談議がにわかに盛り上がってきたF1界でした。いったいどうなることやら。ではまた。

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