【充電80%】スマホのバッテリーを劣化させず長持ちさせたいのなら、100%にしてはいけないという話。

オレ流研究所
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 ここは都会の喧騒から少し離れた、穏やかな街の外れにポツンとたたずむ、とある研究所。

 拙者はここで飼われている豆柴“マロ”でござる。ここでは“しょちょー”を中心に、何やら不思議でわけのわからぬ研究を、日々忙しそうにしているでござるよ。

 それでも“しょちょー”は一日一回、必ず拙者を散歩に連れて行ってくれるのでござる。拙者はこの散歩を毎日楽しみに待っているのでござるよ。

100%充電してもいいことはない

う~ん、もう少しで散歩の時間なのに…スマホの充電が100%にならないでござるよ…あ、“しょちょー”。

 やあマロ。今日も散歩日和だな。じゃあさっそく川原まで一回り、行ってみようか…どうした、少し浮かない顔をしているな…なに? スマホの充電がまだ80%だって?

そうなのでござるよ。拙者、お出かけの際はバッテリーはいつも100%でないと心配で、ソワソワして落ち着かないのでござるよ。

 わりと心配症なんだな、マロは…っていうか、犬のくせにスマホなんて持っていたのか。ずいぶんナマイ…いや、文化的な犬だな。

業界では有名な“ワンワンモバイル”でござる。だから今日の散歩は充電が100%になるまで、もう少し待ってほしいでござるよ。

 …どこかで聞いたようなキャリアだけど…って

!!…な、なぜでござるか、“しょちょー”!

 いいかい、マロ? バッテリーを100%にフル充電したって、いいことは何もないんだよ?

な…なぜでござるか? 100%の方が長くスマホを使えて、緊急時も安心でござるよ。

 わかってないなぁ、マロは。ちょうどいい。いま来ている研究依頼が、リチウムイオンバッテリーを長持ちさせる方法についてなんだ。今回はそれについてマロに話してあげるよ。とりあえず散歩に行こうか。

 単刀直入に言うとだな、バッテリーの満充電(100%充電)は

  1. 過充電によるバッテリーの破損・発火の恐れがある
  2. バッテリーの劣化を早める

という理由で、到底推奨できる使い方ではないんだよ。

そんな!

バッテリーは熱が一番の敵

 あのな、マロ。バッテリーやスマホは熱が一番の敵なんだよ。熱を過剰に発生させてしまうと、破損や発火の原因となるし、そもそも劣化の最大の原因となるわけさ。

たしかに…充電中のスマホはあったかくて、冬はカイロにしていたくらいでござるよ。

 …だからマロはおばかだっていわれるんだよ。その熱がスマホのバッテリーをどんどん悪くしていたってのにさ。

そ…そうでござったか…

 じゃあ具体的にその熱がどんな悪さをしているのか、それぞれのシーンごとに教えてあげるよ。

破損・発火の恐れがある理由

 よくあるパターンで、とっくにフル充電が終わっているのに、充電していたことをわすれていて、そのまま充電器につなぎっぱなしの時があるよな。

拙者はそれをやりがちでござる…

 あれってあまりよくないんだよ。過充電っていって、バッテリーはお腹いっぱいなのに、さらに電圧の負荷をかけ続けるもんだから、スマホ内部が熱を持っちゃうのさ。

 そうすると、その熱の影響でバッテリーにも限界点がきて、破裂やら発火が起きる危険性があるんだよ。

バッテリー
バッテリー

いや~充電でお腹い~っぱい! もう食えない。

電気
電気

そんなこと言わずに、まだまだ食べてよ♪

バッテリー
バッテリー

え~、じゃあもう少し…もぐもぐ。

電気
電気

いい食べっぷりだよ♪ ほら、もっともっと!

バッテリー
バッテリー

いや、もうホントに無理だって!

電気
電気

ウソウソ。いける、いける~♪

バッテリー
バッテリー

う、う、う~~~ゲーーッ※▲◎&!

まあこんな感じだよ。

き、危険でござるな…

 でも最近のスマホは賢くて、充電が100%に達すると、電力の要求を止められるようになっているのがほとんどさ。だから大丈夫っていえば大丈夫なんだけどね。

よ、よかったでござるよ…カイロ代わりにしているときに爆発なんてされたら、たまったものではないでござる。

 …そもそもスマホをカイロにしちゃだめだよ、マロ。でもな、粗悪な充電器やバッテリーを使用している場合はそういった事故につながることもあるから、なるべく充電は純正品でした方がいいし、できることならつなぎっぱなしは避けたいところだよな。

わ、わかったでござるよ。

 過充電による事故についてはこんな感じなんだけど、熱による一番のデメリットは、ふたつめの“バッテリーの劣化を早める”だと思うんだ。

バッテリーの劣化を早める理由

 マロは経験がないかな? スマホをきちんと充電したはずのに、少し使っただけですぐにバッテリーがなくなってきちゃう、ってこと。

あ…! 前に使っていた機種がそんな感じだったでござる。

朝は満タンだったのに、お昼を過ぎると半分以下になってしまったこともあるでござるよ。

 それがバッテリーの劣化だよ。日々の無茶な使用でバッテリーがヘタって、充電容量が減っちゃうのさ…っていうか、機種変までやっていたのか、マロは。

でもなんでバッテリーは劣化してしまうのでござるか?

リチウムイオン電池の仕組み

 そのためには、まずバッテリーに使用されているリチウムイオン電池の仕組みを簡単に説明しようか。すごく簡単に例えると、プールだよ。

プール?

 そう。リチウムイオンがスイマーで、プールを往復して泳ぐことで、充電したり放電したりするのさ。

??

 こんなイメージをするといいよ。1レーンがリチウムイオンスイマーにあてがわれた市民プール、といった感じかな。

 プールの左端がスタートだとするだろ。そこには10人のリチウムイオンスイマーが、プールの開始時刻を今か今かと、長蛇の列をなして待っているわけだ。これが100%充電の状態。

確かに人が多くて混雑しているでござるな。たくさん充電されているイメージが湧くでござるよ。

 で、開始時刻になって、係員の人がホイッスルを鳴らすわけだ。これがスマホで何かをしようとして、アプリとかを起動した瞬間だと思えばいい。

 すると1人目のリチウムイオンスイマーが飛び込んで、プールの右端まで泳ぐわけだ。この時に発生する化学反応がエネルギーとなり、放電するわけ。つまり電気が流れてスマホが動くわけだね。

 じゃあマロに質問。この時のバッテリー残量は何%になるかな?

左端から一人いなくなったから…90%でござるか…?

 そういうこと。さらにスマホを使い続けるならば、残ったリチウムイオンスイマーも順番に飛び込んで泳がなくちゃいけない。そして…最後の一人が右端まで泳いだ場合、バッテリーの残量は…?

誰もいなくなったから…0%、つまり電池切れでござる!!

 正解。もうこれだとスマホは動かないよね。

 じゃあ今度は充電だ。全員が右端に来ちゃったから、今度は折り返しだね。また係員の人がホイッスルを鳴らすと、一人ずつ左端に泳ぐわけ。このときのホイッスルは、充電器にスマホを接続したタイミングだと思えばいい。

 その時発生するエネルギーが充電ってわけさ。じゃあマロ、左端に5人、リチウムイオンスイマーが戻ってきた場合は、何%充電できているかな?

半分の人が戻ったから…50%でござるな!!

 そういうこと。これがすご~く簡単に例えた、リチウムイオン電池の仕組みさ。もちろん細かいところではいろいろと齟齬があるけどね。

 でもこんな感じで、リチウムイオンがプールの中を行ったり来たりすることでエネルギーが発生し、何度も繰り返してバッテリーが使えるんだよ。

そのような仕組みがあったのでござるか…リチウムイオンの方々は大変でござるな…

バッテリーの劣化とは

 リチウムイオン電池の仕組みがなんとなくイメージできたところで、本題の“バッテリーの劣化”について話してみようか。

 冒頭に話した“バッテリーを100%にフル充電したって、いいことは何もない”について、さっきのプールで例えてみるね。

 フル充電ってことは、左端にリチウムイオンスイマーがもう10人並んでいるってことだよね? それでも充電(過充電)しようというのは、10人が泳ぐことをすっかり忘れて、大声で世間話を始めるようなものさ。

リチウムA
リチウムA

いや~、昨日の巨人戦、すごかったねぇ!

リチウムB
リチウムB

あら奥様、聞きましたわよ~。

リチウムC
リチウムC

それはめでてえな! ガッハッハ!!

こんな感じでさ、プールに誰も飛び込まずに井戸端会議に熱が入っていくわけ。狭い場所に人が集まり、やいのやいのやっているから熱気もすごい。これをリチウムイオン電池にとって大敵の熱、と言い換えてもいいかな。

 

そんなに人が集まって大騒ぎされたら、他のスイマーに迷惑でござるよ…

 そう、迷惑だろう? それを見たプールの管理人さんは、当然注意をするよね。

管理人さん
管理人さん

騒がないでください! 迷惑ですよっ!

なんて感じでさ。でもまったく聞く耳持たずにペチャクチャ(充電)していると、とうとう管理人さんがキレちゃうわけ。

 管理人さん
管理人さん

いい加減にしろっ!! 特にうるさいお前ら3人、出入り禁止だ!!

こんな感じで強権を発動しちゃうんだ。するとどうだろう。10人泳げたはずのプールが、7人しか泳げなくなっちゃった。

でも…言うことを聞かなかったから仕方ないでござるよ…って…あっ!!

 気づいたかい、マロ。今まで最大10人泳げたプールが、3人出入り禁止で7人になっちゃった。つまり…作れるエネルギーの最大値が7人分に減ってしまったわけだ。これが“バッテリーの劣化”なんだよ。

なるほど!!

 こうなるとマロの前のスマホのように、フル充電しても減りが早くなっちゃうよね。そりゃ最大容量が10人から7人に減っちゃったんだからさ、当たり前のことさ。

過放電でもバッテリーは劣化する

 実はバッテリーを劣化させる原因には、過充電の他に過放電もあるんだ。今まで話していたことの逆パターンなんだけどね。

 要はバッテリーを使い切って0%のまま放っておいても、バッテリーは劣化するんだよ。プールの右サイドで10人のスイマーが集まって、ず~っと休憩をしているイメージかな。

 これもやはり迷惑なので、プールの管理人さんにキレられちゃう。また数人の出禁さ(笑)。

 つまり“充電のしすぎ”と“充電のしなさすぎ”のコンボが、バッテリーを劣化させる一番最悪の組みあわせなんだよ。

し、知らなかった…でも拙者は心配性なので、0%で放っておくことはなかったでござるよ。

バッテリーを劣化させないおすすめの使い方

 じゃあどうすればバッテリーの劣化を防ぎ、長持ちさせられるのか話してあげるね。

は、早く教えてほしいでござる!

 そう慌てるなよ、マロ。バッテリーの劣化を防ぐおすすめの使い方は

充電率を20%~80%の間で管理して使用する

という使い方だ。

なんか…モヤモヤっとした使い方でござるな…

 確かに中途半端なイメージはあるよね。でも研究によると、この範囲で充放電するのが、一番バッテリーにダメージを与えないらしいんだ。

80%以上や20%以下にしないのは、先ほどの説明にかぶってくるので避けている、ということでござるか?

 そうだね。まずは劣化の影響が大きい部分に踏み込まないことが大事なんだ。さっきのプールで説明すると、左端だけではなくて、右端にも数人並んだ状態でプールの開始を待つイメージかな。

 例えば左端が7人、右端が3人、みたいな感じだよ。

あ、なにやらスッキリした感じでござるよ。

 そうだね。プールの管理人さんは、ごちゃごちゃしているのがとても嫌いな性質だから、覚えめでたいかもね(笑)。

 そして左端から5人泳いで、残りが2人(20%)になったら、今度は右端から泳ぎ出す(充電)感じかな。そして左端が8人(80%)になったら、左側が泳ぎ出す(放電)と。

これだったら、スムーズにリチウムイオンが泳げて、プールサイドも混雑しないでござるよ。

 そう。これをきちんとルール化して運用できれば…プールの管理人さんがキレる(劣化)こともなくなるわけだ。そして結果、バッテリーは長持ちすると。

ハイブリッド車でも実践

 ちなみにこの利用法は、ハイブリッド車の駆動系バッテリーでも実践されているらしいよ。

そうなのでござるか⁉

 車って高いだろう? 100万円以上するし。だからなるべく長~く使いたい、というニーズは多いんだ。なのに購入後たった2年後に

バッテリーが劣化したので、交換が必要ですね。ちなみに交換代は30万円です。

なんて言われたら困るだろう? その辺をあるディーラーの整備士さんに聞いたことがあるんだけど、その時の回答が

ハイブリッド車のバッテリーは劣化防止のために、電子制御で30%~80%を行き来するようにプログラムされているんです。

というものだったんだ。

本当だ! 先ほどのおすすめの使い方と、ほぼ同じでござるよ!

 だろう? もちろんいつかは劣化するので、交換が必要になるかもしれないんだけれど、こういった仕組みでハイブリッド車はかなりの距離が乗れるように設計されているんだよ。

 この話からも、リチウムイオンバッテリーの上手な使い方が、“ 充電率を20%~80%の間で管理して使用する”であることがわかろうというものだよな。

その通りでござるよ。説得力がすごく増したでござる。

よ~し、今日から充電は80%までにするでござるよ!

 ははは、やる気マンマンだな…お、話しているうちに一回り散歩してきちゃったな。今日の散歩はここまでだ。

 バッテリーのことをもっと詳しく知りたいのなら、以下の書籍などを読んでみるといいよ、マロ…って全然聞いてないな。だめだこりゃ(苦笑)。

今回の関連本

総合科学出版
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次のお散歩も楽しみにしているでござるよ、“しょちょー”。それではバイワンでござる!

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