主役を破るというご偉業を成し遂げた、ミキサー界伝説の大帝。しかしミキサー界も憤慨するその評価の低さの原因とは?
ツッコミだらけの外見
彼は『キン肉星王位争奪戦』において、王位候補のマリポーサ率いる飛翔チームの中堅として登場しました。
見開きページで飛翔チーム全員がドーンと正体を現したのですが、彼はちょうど雑誌の綴じ込み部分に配置されてしまい(中堅だから…)、いまいち見づらい初登場となってしまったのを覚えています(笑)。
こんなやや幸薄げな登場をした彼のフォルムは、これまた

ちょっと無理があるよなあ
という感想を誰しもが頭によぎらせてしまうような強引なもので、ジャンクマン並にその日常生活の不便さを心配したくなるようなものでした。それこそ

メシ食ったらそのままスケルトンで腹までスルーなのかな?

その後ミキサーで分離するのかな?

でもそれシースルーで見たくねえよな
みたいな(笑)。
大帝という称号
そして私が彼に対してもっとも興味を抱いている点が、名前に“大帝”という称号がついている点です。
これはね、相当なお偉方ですよ。私の知る限り、大帝の称号がつくお方というのはカール大帝、ピョートル大帝、ジャングル大帝(笑)くらいなもんです。
おそらく彼は、ミキサー界においては過去に何か大きな功績を残した皇帝だったんでしょう。家電メーカーも彼にはまったくもって頭が上がらないくらいな(笑)。
ただ残念なことに、そのミキサー界がかなりミニマムでマニアックな世界であったため、一般庶民には

なんだよ、ミキサーの大帝って
というつっこみを受けてしまったのがちょっとかわいそうでしたね(笑)。
おそらく一般庶民にとっては“大帝”という大層な敬称も、“鼠先輩”の“先輩”と同じくらいのレベルに扱われてしまったのでしょう。
この無礼な反応に対してミキサー界の方々は、相当憤慨したと思いますね(笑)。
主人公破りを達成
こんな無礼な扱いをうけた大帝ですが、なんと主人公であるキン肉マンを破るという快挙を成し遂げています。
キン肉マンは生涯の公式シングル戦において二つの黒星がありますが、ひとつは有名なカメハメ戦(バックフィリップで秒殺)であり、残りのひとつが実はこのミキサー大帝戦なんですね。
ところがバッファローマンや悪魔将軍ですら果たせなかった偉業を成し遂げていながら、大帝の知名度は恐ろしく低いといわざるを得ません。
それどころか多分にインチキ臭漂うオーラすら発しています。この大帝に対する世間の評価はいったいどうしたことなのでしょうか。今回はその原因を探ってみたいと思います。
大帝が評価されない理由
その① ハンデ戦という事実
マリポーサチームの中堅であった大帝は、先鋒戦、次鋒戦で心身ともにヘトヘトになったキン肉マンと対戦することになります。
その結果、大帝は見事勝利を手にするのですが、試合前から体力的なハンデを相手が背負っていたことにより、それが正当に評価されづらいという背景がありました。

キン肉マンが万全の体調だったらどうだったか…
という付帯事項が常につきまとうため、大帝の勝利にケチがついてしまうわけです。ミキサー界の方々にとっては、

大帝の大勝利に何か文句があるのか !
といった感じでしょうか。
その② 結局自分じゃ何もやっていない
大帝の必殺技は、ミキサーである己の胴体に対戦相手を入れて攪拌することにより、そのパワーを分離して相手を弱体化させる『パワー分離機』というものでした。

できるのか、そんなことが
と雇い主たるマリポーサですら驚愕した(じゃあなんで雇ったのさ…)この超必殺技で、大帝はキン肉マンの未曾有のパワーである“火事場のクソ力”の分離を試みます。
しかし大帝のお力をもってしても“火事場のクソ力”はとても手に負えるパワーではなく、

わたしひとりの力ではどうにもできん
と早々に大帝らしからぬ弱音を吐いてしまいます。
結局、邪悪五神が助太刀に入り、“邪悪友情パワー”によってなんとか“火事場のクソ力”を分離することに成功しますが、この失政により残念ながら

大帝の御力はひょっとしたら中途半端なのでは?
という疑問をもたせる結果となってしまいました。
しかもその後、大いばりでリング上に仁王立ちしている様が、

大帝といいつつ実は小物なのでは?
という疑念を生じさせることになってしまいました。しかしミキサー界の方々にしてみれば、

大帝がリング上で威厳を保って何が悪い!
と反論したくなるところでしょうか。
また、キン肉マンが必殺のキン肉ドライバーをかけたときも、

やぶってごらんにいれるぜ!
と大帝は高らかにキン肉ドライバー破りを宣言し、事実それを実践しました。
しかしそれも結局はミスターVTRの状況予測装置の編集機能に頼っていただけで、大帝自身は何もしていないという、素敵すぎるほど他力本願なものでした。それでも

火事場のクソ力のないキン肉マンをやぶることなど赤子の手をひねるよりもたやすいぜーっ!
と場違いな勝利宣言をしてしまったがために、

大帝はひょっとしたら裸の王様なのでは?
と、庶民から疑惑をもたれてしまう結果となってしまいました。
このように、つきつめると“大帝は何もしないでキン肉マンに勝った”ということになり、このことが大帝のご偉業を偉業たらしめない原因のひとつになっていると思われます。ミキサー界の方々にとってみれば、

大帝が御自ら手を下す必要がどこにあるものか!
と、反論のひとつでもいいたくなるような世間の評価の低さです。
その③ ミート戦での不甲斐ない敗北
大帝はキン肉マンを破るという大仕事をこなした後、キン肉マンチームの大将としてリングインしたミートと闘うことになります。
ミートは基本的に参謀であり、実践格闘とは対極に位置する超人の象徴でした。年齢も少年であることを踏まえると、大帝にとってはこれこそ“赤子の手をひねるよりたやすい”相手であり、勝って当然の相手だったわけです。
しかしその赤子に予想以上の動きをされ、逆に手をひねられてしまう(笑)という無様なシーンを大帝は披露してしまいました。
しかも前試合中に中枢部分のネジをスグルによって抜き取られるという予備工作を施されていた大帝は、そこをミートにバックドロップで攻められ、分解KO負けという醜態をさらしてしまいます。
大帝のご偉業が評価されない一番の理由はおそらくこれでしょう。
キン肉マン・ミートと連戦した大帝は、いうなれば最強・最弱の相手をリレーしたわけですが、最強を倒した功績よりも最弱に破れた汚点の方がはるかに上回ってしまっているんですね。
プラスマイナスでマイナスの方が突出してしまったがために、大帝のご偉業は闇に葬られてしまったわけです。しかしミキサー界の方々にしてみれば、

子供に同情した大帝のご慈悲だ
と大帝の懐の深さに涙するところでしょうか。
その④ もろすぎるその肉体
やはり主人公に勝つ相手というのは、肉体的・精神的に屈強なイメージがないと、読者は納得してくれないんですよ。
カメハメにはスグルの師匠としての人格者たる精神面や、格闘面での実力が描写されていますが、残念ながら大帝にはそういった点が、目を皿のようにして探しても見つからないんですね(笑)。
それどころか普通の超人と比べても、その肉体的脆弱さが突出しているんです。ネジ一本抜けただけで分解される危険性があったり、子供の攻撃(閉門クラッシュ)で割れる胴体など、とにかくきゃしゃなんです、大帝は。
大帝の胴体がNational製なのかSANYO製なのかはわかりませんが、メーカーサイドとしてはすぐにでも商品回収のCMを流さなくてはならないのではないかと、見ているこっちのほうがハラハラしてしまいます(笑)。
大帝自らリコール対象製品になるとは、ミキサー界の方々にとってはまったくもって認めたくない事実だったかもしれません。
実は難しい役割を完遂?
以上、大帝のご偉業が世間で評価されない理由を考察してきましたが、考えようによっては大帝はかなり難しい役割をこなした超人ともいえるんですよね。
おそらく大帝がゆで先生から課された役割というのは、キン肉マンのステイタスを傷つけることなく勝利し、ミートの格闘技戦初勝利というサプライズを演出するというものであり、大帝は忠実にその役割をこなしたわけです。
とくに“キン肉マンのステイタスを傷つけることなく勝利する”という神業をきちんとこなしているあたり、大帝の評価されない偉業を評価してあげてもいいのかなとも思います。

あれは勝ちとはいえないよなあ
と読者に思わせる絶妙なさじ加減、さすがは大帝といわざるを得ません(笑)。
懐の深さに敬服
また、大帝まで登りつめた人物が、一超人として他族の王位継承戦に雇われて参戦するという度量の広さも敬服に値します。
普通プライドが許さないですよ、大帝ともあろうお方がマリポーサという一王位候補者の下につくなんて。しかもきちんと敬語まで使ってマリポーサを立てていますからね(笑)。
おそらくミキサー界の側近たちは、こぞって参戦には反対したと思うんですよ。

大帝自らがご出馬する案件ではございませぬ!
って。でもってそれに対して大帝はこういわれたと思うんです。

他族のお家騒動を外から解決してあげるのも、大帝としての責務だ
と。これはかなりできた人物ですよ。
今後のミキサー界を案ずる
そう考えるとほら、大帝のご偉業が輝かしいものに見えてきたでしょ? え? 見えない? ていうか、何でこんなに大帝に肩入れしているのかって?
いや~、なんかミキサー界の身になって想像していたら、大帝の扱いがあまりにも悪いものだから、その落差についつい同情しちゃって(苦笑)。
なまじ“大帝”なんて称号がついてるもんだから、ギャップがあるんですよ。ただの“ミキサーマン”だったらこんなにも擁護しなかったんですけどね。“大帝”の称号ひとつで、彼がうしろに背負っているミキサー界が、私には見えてしまったんですよ(笑)。
そして偉大なる大帝をなくした今、ミキサー界は彼にかわる後継者をちゃんと擁立できたのかが心配です。
まあ派手なリコール騒ぎが起きていないので、たぶん大丈夫なんでしょうけど。つーか何だよ、ミキサー界って(笑)。
※今回はドスカラスさん、火事場の男球さん、SEGAさん、キン消しマニアさん、悪行ケビン大好きさん、安達さん、磯部さんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。


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