ジャスティスマン率いるツアーの面々と向き合ったザ・マン。すると彼は「お前たち、モーツァルトは聴くか?」と、突飛な質問をします。
続けて「彼の音楽は素晴らしいな。この私が言おう。完璧だ。モーツァルトだけでない。人間の作り出したこの音楽という文化は素晴らしい。それにこのレコードプレイヤー。これもまた智慧の産物。私がまだ神だった頃、天界にも地上にもこのようなものはなかった。しかし人類はそんな我々の想像を超えるこのようなものを、こうして作り上げた。たいしたものだ」と、人間の功績を手を叩いて褒め称えます。
そして「私が守りたかったのは、こういう実り豊かな未来であった」とつぶやき、椅子から立ち上がると「よくぞ来たジャスティスマンに導かれし超人たちよ! 聖なる完璧の山の長として、お前たちの到来を心から歓迎しよう!」と、彼らの訪問を歓迎。積年の怨敵を目の前にし「あれが…ザ・マン!」と口にするアリステラ。
ジャスティスマンが「ザ・マン、その牢は…実にらしいな」と彼の謹慎パフォーマンスを指摘すると、「ゴールドマンとの約束だからな。この超人墓場からもはや私が出ることはない。ストロング・ザ・武道の装束も封印した。そういう私の強い意志をここの者どもに示すために、あえてこういうことをやっている」と答えるザ・マン。
「未来を…託す気になったのだな」とジャスティスマンがその真意を問うと、彼は「私はゴールドマンに敗れた。思えばそれが私の原初の悲願であった。だがそのゴールドマンはさらにその先まで見ている。超人たちのさらなる進化を確信していたようであった。そして今となってはジャスティスマンよ、お前もまたそのひとり」と、超人界の先を見据えていたメンバーの一人として、ジャスティスマンを指差します。
そして「私は一時は全てをあきらめお前たちに愛想を尽かされた。だがこうして敗れた今、改めてお前たち10人に胸を張ってこう言いたい。私は…良い弟子を持った」と、完璧超人始祖の面々を誇りに感じている表情をしたあと、「そして私にそのことを気づかせてくれたのは、ゴールドマンともうひとり、シルバーマンの子孫であるキン肉マン! お前だ。改めて礼を言う。ありがとう」と、スグルにも謝意を示します。突然名指しされ、「は…はいーっ!」と背筋を伸ばして直立不動となるスグル。
礼を言った後ザ・マンは椅子に座り直し、「だがしかし…ただそうとも喜んでいられぬ事情がいよいよ近づいてきている。今日はその話をするために彼らを連れてきたのであろう、ジャスティスマンよ」と本題に入る口火を切ると、ジャスティスマンは「ああ、直接あなたの口から話してやってほしい。未来を託す決意をさせた彼らに…全ての真相を」と、ザ・マンが知る真相を話すよう依頼。
するとザ・マンは「オメガマン・アリステラよ」とアリステラに声を掛けると、「遥か昔の話だが、オメガの民のことは覚えている。その宗家の末裔がお前、そして少し前までここにいたジ・オメガマンことディクシアのふたりで間違いないな」と問いかけます。
それを受けてアリステラは「ああそうだ! それゆえ当代のオメガ代表として今、オレはここにやってきた。かつて本当は我らの祖先に何があったのか、その真実を聞くために!」と答えます。それに対し「オメガの民、遥か古代に栄え最盛期にはこの地球の大部分を支配し、マグネット・パワーの存在にまで手を出そうとした彼らは、この世で最初の“神”を目指した民だった」と話すザ・マン。
それを聞いたアリステラが「神を目指す⁉ それは今も我らの根幹を成す教えのひとつだが…その思想はそんな昔から?」と問うと、「だがそれは許される思想ではない。そう聞くとただ私が傲慢なように聞こえるかもしれぬ。だが許さぬのは私ではない」とザ・マンは人差し指を天に突き上げ、「それを許さぬ大きな存在が別にいるのだ」と答えます。
それを聞き、来訪者たちは全員上を見上げて「別に?」と、ザ・マンが発する言葉の意図を探りあぐねます。そして「それがまさに天界の神」と、ザ・マンがその答えを口にすると、「天界の…神!」と衝撃を受ける来訪者たち。
そしてザ・マンは天界の神について以下のように話し始めます。
- 私も元は神だった。お前たちから見れば、私も天界の神も同じようなものに思うかもしれない。
- だが私は神をやめて天界を降り、超人になった。
- ではなぜそうしたのか。それは天界にはふたつの大きな考え方があったことに起因している。
- それは超人という種を生かすか殺すか…このふたつだ。
これを聞き「じゃあ…それは何か? オレたちが信じている神様の中には、超人を殺したくて仕方ねえようなアブねーヤツもいるってことかよ!」と質問するブロッケンJr.。
ザ・マンが「まさにその通り。そしてその思想の違いにより、天界内の神の勢力も二分されていた。その生かすほうの勢力を取りまとめていたのが、当時“慈悲の神”と呼ばれていたかつての私」と話すと、アタルは「ザ・マンのかつての名が…慈悲の神とはなんという運命か」と、キン肉族の始祖たるシルバーマンと、祖父のキン肉タツノリを思い出します。
さらに続けてザ・マンが「そして…殺すほうの勢力をまとめていたのが、当時の私に匹敵する絶大な力を身につけていたもうひとり…それは調和の神と呼ばれていた」と対抗勢力の名を告げると、アリステラが「調和の…神! そんなヤツが⁉」と叫んで次回に続く、です。

とうとうすべての背景を知る男、ザ・マンの口からいろいろな情報が引き出されました。まずはモーツァルトから話題を切り出すという、予想外の展開(笑)。両者の間に漂う緊張の空気を緩和しにかかるという、高度なコミュニケーションスキルを披露します。さすがは年の功か(笑)。
そしてモーツァルトも人間ながら、完璧超人軍団入り決定です。完璧超人の長が完璧だと認めたのだがら、もう間違いないですよね。しかも手を叩いての称賛ですから(笑)。
ザ・マンの謹慎パフォーマンスを指摘するジャスティスマンも、なかなかにレアなシーンです。含み笑いを浮かべながら、かつての師の行動について指摘する様は、完全にツッコミですよ。「師匠、わかりやす過ぎます!」という(笑)。無表情、鉄面皮というイメージが強い彼が、珍しく感情を表に出したシーン。それがまさかのツッコミという行動。貴重です(笑)。
謹慎については、ザ・マンなりの信念があるようで。もちろん、先の大戦で「負けたら隠居」という条件でゴールドマンと闘い、敗れたことによる約束厳守という面がその行動の主因なのですが、間違いを認める、自身を罰する、律するという、彼の矜持でもあるのでしょう。さらにその行動は、若い世代に未来を託す気になったことを指し示しています。
そして彼をそういう気持ちにさせてくれた、10人の弟子たちを改めて称賛しています。育てた弟子がすべて誇らしいという感情は、師匠冥利に尽きるといったところでしょうか。そしてその謝意は外様超人であるスグルにも向けられ、素直に礼を言う様に、彼の心に溜まった澱が解消されたのだなあということを見て取れます。
その後、今起きている現状を話してくれるのですが、まずは因縁の相手であるアリステラとの対面です。アリステラは怨敵を目の前にしながらも、逆上することなく自分を律することができています。このあたり、アリステラが分別をわきまえているキャラクターであることがわかり、オメガの総帥としての価値をあげています。
そしてザ・マンは、過去繁栄を極めたオメガの民が、神を目指したことが事の発端のひとつであることを示唆し、それを決して許さない大きな存在がいることを告げます。それが天界の神々だそうです。超人が神超えという野望を持ち、それを実行するのはタブーのようですね。
さらにはその天界の神々は大きく2派に分かれていて、その一派は超人不要論を是としていると。超人の存在と進化を認めたザ・マンに対抗する勢力、それが調和の神だそうです。
さあ、ここで黒幕ともいえるラスボスの正体が明らかになりました。予想通りといいましょうか、やはり相手は神の一派でしたね。その中心人物が調和の神と呼ばれている神のようです。こいつがすべてを操っていたわけです。
ただ神超えをタブーとする思想で思いつくのが、キン肉星王位争奪戦です。この時もスグルの神超えを懸念した邪悪5神が暗躍しました。構図としては、似ているといえます。
しかしながらあの時、他の神々は祝福をスグルに送っているだけに、ちょっと解せないところがあります。当時の邪悪神以外の神は、まだまだスグルに神超えは無理、という評価をしていたと考えざるを得ません。邪悪5神だけがちょっとセンシティブになってしまったと(笑)。ある意味危機管理能力が高かったともいえます。
もうひとつ解せないのが、今回の邪悪5神の立ち位置です。アリステラ率いるオメガの六鎗客と対抗する立場の4王子(アタルを入れると5王子)に助太刀したことを考えると、彼らはザ・マンを支持していることになります。先の大戦でザ・マンが超人の進化、それこそ神超えさえも容認したように見えるだけに、彼らもそれを容認したのでしょうか。それとも…調和の神に天界の主権を握られると、不都合があるのでしょうか。この辺りがなんともわかりません。
そして今後はおそらく超人対神という構図になるのでしょう。現在の天上界における2派の勢力図がどういったパーセンテージなのかはわかりませんが、神々の半数は敵という可能性があるわけです。
となると、王位争奪編においては邪悪5神含め105柱の神が存在しているといっているので、少なくとも50の神は敵ということになります。もしくは扇の要たるザ・マンが降下しただけに、ひょっとしたら天上界はほとんど調和の神に牛耳られているかもしれません。
もしそうであるならば、100近くの敵がそびえているということに。今後は超人という媒介を使わずに、神自身が肉体を持って立ち塞がることになると思われるのですが、やはりそれぞれに“○○の神”なんていう二つ名が用意されているんですかね。ゆで先生のことだから、すごくありそうですけど。
そういった意味で、ザ・マンが“慈悲の神”という二つ名を持っていたことは、アタルの言う通り皮肉めいていますよね。もちろん超人殲滅を哀れだと慈しみ、神の座まで捨てて降下したくらいですから、ものすごくしっくりくる二つ名なんですけど。
ただ先の大戦までは我を見失っていた、というストーリーとして理解すればいいのでしょう。それを師を超えた弟子と慈悲を受け継いだ弟子によって気づかされ、軌道修正できたと。そんな感じでしょうかね。
しかし…このシリーズが終わったら、そのあとゆで先生はどうするんだろう? もうこれ以上の敵って作れないよね…それによって連載が終了してしまうのではないかと、それだけが心配になります(苦笑)。
その他気になった点は
- あの音楽はモーツァルトだったのか…ジャイアンじゃなかったんだ(笑)。
- 人間の創るものが意外と大好きなザ・マン。
- ひょっとしたら超人よりも人間の方が好きなんじゃないのか?
- だから人間を守るべき超人を守りたいのか…ってオイオイ(苦笑)。
- ザ・マンのことだから、武道の装束も桐の箱に入れて、帯封して“封”と書いた貼り紙をしているんだろうな(笑)。封を破ったら、それこそ悪霊が飛び出してくるくらいの雰囲気のあるやつ。
- 率先垂範の鑑、ザ・マン。ただし謹慎していても態度はでかい(笑)。
- スグルはすぐに直立不動になっちゃうな(笑)。
- ザ・マンとアリステラの対峙を見るに、やはり闘ったとしてもザ・マンには勝てないな…。
- 魚みたいなオメガの民は、スターウォーズっぽい。
- ブロッケンの質問は、言葉の選択といい、直球でらしいな。アブねーヤツって…(苦笑)。
- ジェロニモ兄妹を助け、彼を超人にした神と、ジェロニモが闘う展開があったら胸熱(笑)。
こんなところですかね。
コメント
しばらくお休みなのは残念ですね。
さて、調和の神と聞いてすぐに思いついたのはジャスティスマンだったのですが・・・ 違うかな?もしくはサタンとか?
あとザ・マンはあの狭くてスカスカの檻の中で生活しているんですかね?便利さを犠牲にして、尊大さを保ったということでしょうか。
まあただの思いつきなので適当に。。。
ほんださん、こんにちは。
ジャスティスマンはおそらく“裁きの神”ではなかったでしょうか。ただジャスティスマンは神ではないので、神に準ずる能力をもって下位超人や人間が彼を神扱いし、長い年月を経て神格化したのだと思われます。