かつて天界において、“慈悲の神”たるザ・マンと“調和の神”との二派が、超人という種の存続について激しい論争を繰り広げていたことを話し始めたザ・マン。彼の話を要約すると、以下の通りとなります。
- 論争が激しくなる折り、地上の超人たちが荒れに荒れた時代が訪れた。
- その時代に例のカピラリア七光線が照射され、ザ・マンが救った10人の弟子以外の超人はほぼ死に絶えた。
- それを機に調和の神は主導権を握り、自身の計画を推し進めていった。
- このままでは超人の死滅は免れぬと感じたザ・マンは、神の座を捨て、一超人となり、自ら模範となって正しいあり方へと超人を導く道を選択した。
- 神の誰もが認める完璧な超人を作る、それが“完璧超人”という呼称のはじまりだった。その甲斐あって、超人界は再び新たな発展を遂げようとしていた。
- しかしオメガの祖先が、独自に神超えを目指し始めた。
- それまでもある程度のコントロールはしてきたが、オメガの民の発展スピードはザ・マンの想像を超える程に目覚ましかった。
- しかも発展のためだと超人界の和を乱し、数多くの罪深き蛮行も重ねていた。
- これは困ったと頭を悩ませたと同時に、喜ばしいことだとも感じていた。
ザ・マンの「喜ばしい」という感想に、「喜ばしい!? なぜだ?」と問いただすアリステラ。ザ・マンは続けて話し始めます。
- どんな形であれオメガの祖先のやったことは私の想像を超えた。
- すなわちそれは、“完璧”と呼ぶには程遠く、穴だらけだったが、超人の可能性を示すものだった。
- だが超人という種を存続させた私の目にくるいはなかった。オメガの祖先は私に自信をくれた。
- 私はオメガの発展をもう少し見ていたかったが、その成果が神の目に障るものだったことが問題だった。
- 天界の神々がそれを許すわけもなく、その対策としてオメガを粛清するそぶりを見せつつ、少なくとも宗家の連中は安全地帯に逃してやることにした。その先に彼らが見つけたのがオメガの星であった。
このザ・マンの話に「それはつまり我々の祖先は…お前に滅ぼされるどころか…逆に生かされた!」と、予想外の事実に驚くアリステラ。そしてザ・マンは
- 私はそこでオメガ宗家が新たな文化を花咲かせることに期待した。
- だが結果的にこの判断で、オメガ宗家には恨みにまみれた不幸な歴史を歩ませることになってしまった。
と最近に至る事実を話すと、「だから私は…今この場でお前たちに改めて詫びたい。すまぬことをした」と、現オメガ当主のアリステラに向かって謝罪。彼の予想外のオメガに対するいたわりと、積年の恨みに対する謝罪を受け、アリステラは体を震わせて「ザ・マン……」と落涙します。その様子を見守るスグル。
すべての真実を知り、パイレートマンが「それが事実なら…我らの打倒すべき相手は…」と口にすると、「ああ、ザ・マンではない。我らが真に警戒すべきは…オレも初めてその名を聞いた“調和の神”!」と、アタルが真の敵を明確にします。
するとザ・マンは「今回あの邪悪五大神がこちら側についたのもそれが理由だ。ヤツらもまた神の立場でありながら、天界の中枢を追われた者たち。それに超人の利用価値をよく知っている。調和の神を失脚させたくてたまらない連中だからな」と、邪悪神が味方についた理由も説明しました。それに対し「なるほど、敵の敵は味方ってことかーっ!」と、合点がいき手を打つスグル。
しかしそこで「待ってくれ! じゃあ天界に調和の神を止めるヤツがいないってんなら、いつまた超人絶滅光線を撃ってくるかわからねぇじゃねぇか!? カピラリアがまた全宇宙に発射されりゃ、超人なんてすぐに死滅しちまうんだろう!?」と、ブロッケンJr.が現状における深刻なリスクを口にします。
すると「いや、安心しろ。今はそれはできない。正確に言うとやりたくてもできぬのだ」と、そのリスクについては心配はないと断言するザ・マン。
それに対しブロッケンが「それは…一体?」とたずねると、ザ・マンはそのカラクリを以下のように述べます。
- 指摘されるまでもなく、それは私が天界から降りる際に真っ先に心配したことである。
- ゆえに私は神の地位を放棄する直前に条件を出した。
- それは全宇宙にカピラリア光線を照射できる装置を、神の数である108の欠片に分断し、各々の神に預けよ、という条件だった。
- さすれば再照射にはすべての神の同意が必要となる。そしてそれは私が神を降りる直前に認めさせたことである。
- つまりそれは私もその欠片のひとつを持っているということである。
そう言うとザ・マンは、音楽を奏でていたレコード・プレイヤーを引き寄せ、プレイヤーとなっている上蓋を開けると、「これがその現物だ」と、まばゆいばかりに光り輝く欠片を全員に見せます。
そして「少なくともこれがないと再びカピラリア光線を全宇宙に照射はできん」と、自分自身がその安全装置であることを告げるザ・マン。さらに「そしてお前たちが先ほど撃退したサタンだが…」と、サタンの野望についても以下のように述べました。
- サタンの狙いは間違いなくこれだった。
- おそらくこれを回収できたら、神に格上げしてやるとでも言われたのだろう。
- そもそもサタンは神になりそこねたがゆえの、中途半端な存在だけに、神への格上げは最大の悲願であった。
- そこで私に恨みを抱き、超人墓場への潜入経路も確保しているオメガの民に目をつけた。
- だが目的は果たせなかった。普段ならそこであきらめただろうが、今回はあきらめきれなかった。
- だから自ら実体化してまでここに来ようとした。闘って勝てぬまでも、最悪盗み出せばいいという判断である。
それを聞き「クッ…そんなヤツらに我々はいいように」と、うまく利用されたことに憤るアリステラ。しかしザ・マンは「だが結果的にこうして最初の危機は阻止された。それは私の力ではない。お前たちが独自の力で切り抜けたこと。私はそれが見たかったのだ」と、彼らの行動を賞賛し次回に続く、です。

今回は歴史の授業でしたね。すべてを知る男・ザ・マンの授業により、このシリーズで疑問だった点が、ほぼ解明されたことになります。
最大の謎であったのが“なぜザ・マン率いる完璧超人始祖がオメガの民を粛清したのか”ということでしたが、それは“出る杭を打たれる前に、打ったふりをしつつ逃がした”という事実でした。
この“打ったふり”というのが厳しい粛清だった気がしますが、オメガの民の中にも、粛清をされても仕方のない悪行を犯していた者が存在していた、という論理なのでしょう。大きな目で見ると、オメガの民に情と期待をかけていた、ということになります。
それはザ・マンがオメガの民に対して「喜ばしい」という感情を持っていたことでわかります。“超人の可能性”や“超人の自立”というポテンシャルをオメガの民に見て、自身の理念とのリンクを見たのでしょう。
しかしながら、前シリーズにおいてはこのオメガに似た成長をスグルを筆頭にした正悪超人軍団に感じ、それが危険であると粛清に動いたわけなので、ずいぶんと矛盾しています。ぶちゃけ真反対ですよね(苦笑)。
これについては、その思想の変革こそが「ザ・マンは変わってしまった」と、ゴールドマンを筆頭に、複数の弟子が彼から離れていった理由そのものなんじゃないかな、と思いました。つまりオメガの祖先を粛清したときは、彼の理念はまだブレていなかったんですね。
ともあれ、アリステラたち現代のオメガの民が、ずっと教え込まれていた恨みは、実は誤解であったことが判明しました。そしてダメ押しは、ザ・マンのまさかの謝罪です。これにはびっくりしました。あっさり謝りましたからね(笑)。
でもこれはものすごい事件ですよ。『3年B組金八先生 第2シリーズ』で、放送室で生徒に謝罪会見をした校長先生なみに大事件です。あ、わかりにくい? わかんない人はぜひ金八先生、見てください(笑)。

とにかく“実は生かされた事実”と、“総責任者の謝罪会見”により、アリステラはザ・マンに対する恨みを完全に払拭ですよ。ザ・マンにしたたかに取り込まれたかな、なんて気もするのですが(笑)、個人的にはなかなか感動しました。話し合って理解し合う、美しいじゃあないですか。
さらにザ・マンは、邪悪五大神とサタンの行動理由についても、すべて話してくれました。邪悪五大神は、彼らが便利に利用できる超人が絶滅するのは、自分たちにとって損失であるという理由で利害が一致したために、かつて争った相手と手を組んだ、ということでした。
自分たちの利益を第一においた協力、という点が、いかにも邪悪神らしいエゴイストさでいいですね(苦笑)。理由が清々しいほど身勝手かつろくでなしすぎて、素敵です(笑)。
彼らは以前スグルの抹殺を試みましたが、その理由はまさしくスグルの“神超え”にナーバスになったからでした。ある意味、今回アリステラが目標としたことと同じ理由です。それだけに、彼らの思想は
- 超人が彼ら(邪悪五大神)の力を超えてはならない。
- とはいえ、超人は利用価値があるので、生かさず、殺さずのスタンスで飼い慣らしたい。
- ゆえに、カピラリア七光線による超人の殲滅を企む調和の神の行動は邪魔したい。
- できれば調和の神は失脚させたい。
といった形に要約できると思われます。こうあらたまって記述すると、ホント自分勝手です(苦笑)。
サタンに関しては、彼の劣等意識からの脱却がその行動の理由だったようです。調和の神の派閥に利用されていただけ、というのが彼の立ち位置であり、オメガの民を利用していたはずの彼こそが、結局は利用されていたという皮肉めいた結末となりました。
そう考えると、とても哀れなキャラクターであるといえるでしょう。そこが彼らしいといえば彼らしいのですが(苦笑)。
さらに、今までフラフラと定まらなかった彼の設定が、今回やっと固まってきたという感じです。彼は“神になりそこねた存在”であり、それにコンプレックスを持っているキャラクターであることがわかりました。要は神になりたいんですね、彼は。
ところが実力の問題なのか、精神の問題なのか、それは叶わなかったわけです。彼の破滅的・破壊的思想がそれを邪魔したのか、それとも、夢が叶わなかったからグレてそういった思想になったのか。その順番はわかりませんが、この辺のディティールだけでもスピンオフが作れそうです。
ブロッケンは、今回も大御所が集まる中、物怖じすることなく発言をしていましたね。その口ぶりが怖いもの知らずの、ある意味無礼千万な感じで素敵です。若さ故の世間知らずといいましょうか、20年後に自分を振り返ったときに、「あの時、よくもまああんな態度とれたよな、恐ろしい」と、自己反省するパターンが見えるようです(笑)。
ただし、言っている内容は的を射ており、このメンバーの中で唯一カピラリア七光線を生身で浴びた経験のある人物(笑)として、その発言価値が高いです。とはいえ、最悪の事態でも、ブロッケンだけは人間化という奥義で、生き残れる可能性がありますね。
そんな若僧の歯に衣着せぬ質問に、きちんとした手立てを打っていたことを話すザ・マン。光線を照射する装置を108に分解し、それぞれを108人の神々に持たせることによって安全装置となる、という理論です。
しかもその一つを、超人殲滅絶対反対のザ・マン自身が持つことで、その安全性は究極に担保されているというもの。たしかに、彼に勝ってそれを奪うというミッションは、限りなく不可能に近い難易度だと思われます。
逆に言えば、今後の闘いの争点は、この欠片の奪い合いだということです。あらゆる手立てを持ってそれを奪いに来る調和の神の軍団に対し、それを守り抜く超人軍団ということになります。
その超人軍団こそが、今回結成された正義超人&オメガの民&完璧超人始祖&運命の王子という連合軍ですね。おそらくこれに悪魔将軍率いる悪魔超人軍も加わることは間違いないでしょう。つまり前シリーズを超える、正悪完璧Ω王子(なんだこりゃ…)のドリームチーム結成ということです。これは楽しみですよね。ちょっと人数の増え方が男塾じみてきたけど(笑)。
そして、超人たちが一致団結し、障害や危機を己の力で乗り越えていく様に、ザ・マンはご満悦のようです。このあたり貫禄抜群で、彼の前シリーズのカリスマ性が十分に浸透していることがわかりますね。
さて、超人軍団の大同団結を見た上で、調和の神の軍団がどういった動きに出てくるのか。とても楽しみです。
その他気になった点は
- アリステラは非情そうな外見とは逆の、感情豊かな超人だったんだな。
- パイレートマンの参謀キャラが、個人的に頼もしく見えます。
- 神々の中でよく出てくる“ヒゲのじいさん神”と“太眉タラコ唇のふとっちょ神”。こんな顔だけど強いんだろうな。少なくともサタンよりも(笑)。
- 108に分かれた欠片が、本当にパズルのピースで笑いました。
- このわかりやすい表現こそ、まさにゆで道です(笑)。
- サイコキネシスも使えるザ・マン。
- 逆さになっても落ちないレコード。
- そして何事もなかったのように、再び音楽を奏でる(笑)。
こんなところでしょうかね。
コメント
いつも楽しみに見ています。
そういえば、神の人数が「108人」となっていましたが、王位争奪編では、100+邪悪5人で「105人」だったような気がします……
AYさん、こんにちは。
するどいご指摘ですね。調べてみましたら…確かに105人でした(笑)。3人増員したのかな(笑)?
よくよく考えたら、あの戴冠式の時には調和の神が混ざっていたことになるんですよね。スグルの戴冠をずいぶんあっさり許したな、みたいな(笑)。