第76回 スプリングマン(Ver.2)

オレ流超人批評
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オモチャのようなかわいい風体でありながらも、悪魔超人としての誇りは人一倍のバネ超人。そんなキャラクターとユニークな体を持つ彼は、実は超人の中の超人だった…!?
出身 古代ギリシア
超人強度 320万パワー
必殺技

デビル・トム・ボーイ
スプリング・バズーカ

主な戦績 ウルフマン○
モンゴルマン●
ターボメン△

超人批評Ver.2について

 この『オレ流超人批評』もおかげさまで70回を超え、メイン、チョイ役を含めて多くの超人を批評させていただくことができました。

 そんな中、

過去に批評した超人を、もう一度再批評して!

というありがたいリクエストをちらほらといただき、今回“超人批評Ver.2”を企画してみました。けっして

もうとりあげる超人が枯渇して…

なんてことが理由ではないですからね!…ちょっとだけそれもあるけど(苦笑)。

 そんな中、栄えある初のVer.2批評キャラは…スプリングマンです!

…!? なんでスプリングマン?

と誰しもが感じたと思うので、その理由から書いていきたいと思います。

スプリングマンを選んだ理由

 ぶっちゃけ子どもの頃は、彼にはあまり魅力を感じていませんでした。もちろんフェイバリットの『デビル・トムボーイ』はものすごく衝撃的でしたけど、

スプリングマン、好き好き~💕

とはならなかったですよ(苦笑)。

 それは彼が悪役であり、子ども受けするカッコいいフォルムを有していなかったからだと思われます。まあ小学生ですからね。そんなものでしょう。

 しかし大人になってからあらためて彼を見ると、そのキャラや特性が規格外に秀でていることに気づくんですよ。

 皆さんはちびっ子の頃、少し感じていませんでしたか?

あいつ、オモチャみたいな風体のくせに、あのバッファローマンに対してタメ口なんだよな

しかもまったく気後れしてないし…どういう理由でああいう対等思考になるんだろう?

という、漠然とした疑問を(笑)。

▲完全なるタメ口(笑) ©ゆでたまご

 あの当時のバッファローマンのキャラは7人の中では圧倒的です。なのにスプリングマンは彼に対して微塵の恐れも感じていなさそうな態度を終始とります。

 これは完全に謎めいた関係性であり、私には大きく違和感が残りました。

 しかし大人になった今それを思い返すと、立ち位置や容姿からはとても釣り合わない、ギャップあふれる彼の強気な態度にだんだんとカッコよさを感じてくるんですね。さらには

あいつの特性って、シンプルだけど意外と万能だよな

技がわかりやすくて、しかもおもしろい

と、そのモチーフ特性の秀逸さと、機能性の幅広さに感心しはじめるのです。はい、いわゆる再評価ですよ。

 そして連載が再開された『キン肉マン』における彼の闘いぶりと生き様を見て、私は彼に対して以下のような思いを持つに至りました。

超人という種のひとつの完成形

 …少々オーバーかもしれませんが(笑)、そう結論づいてしまったんですよ。ですので、あらためて再批評をするにはもってこいのキャラなのかな、と。

 ではなぜ彼が私からそこまで高い評価を得たのか、解説していきたいと思います。

超人の完成形の定義

 まず大前提として、私が思う“超人の完成形の定義”を記してみたいと思います。それは

  1. キャラが魅力的である
  2. 特性が日常的かつ拡張性に富む
  3. シンプルである

という3項目について高いレベルでの表現力があり、その高レベルな3項目が高い次元で融合している超人こそが、それに近いのではないかと定義しています。

 つまり超人としての強さが完璧無比のコンプリート超人、という意味ではなくて、キャラの内面、生き様、矜持、フォルム、モチーフ、機能性、戦闘特性という観点において、総合的に高レベルである、ということです。

 それではこの3項目を中心に、スプリングマンがどれだけ秀でた超人なのかをひも解いていきましょう。

1.キャラが魅力的である

 もうね、大好きなんですよ、彼のキャラクターが。その言動や、生き様が素敵すぎて(笑)。その魅力あふれる要因をいくつかご紹介しましょう。

強気で意地っ張り

 彼は一貫して言動が強気です。7人の悪魔超人として襲来した時、完璧無量大数軍との対抗戦をリングサイドで観戦した時、そして自身がピラミッドリングで完璧超人と闘った時。

 そのすべてのシーンにおいて弱気な発言は皆無であり、精神面で相手のマウントをとっていくスタイルが徹底されています。

 おそらくそれは彼の

ナメられたら負け

という強烈なる信念からきていると思われます。そして彼自身、自分が虚勢を張っているとは微塵も感じていないわけです。

 つまり彼は本気で自分の格闘能力と精神力に自信を持っていて、その“強気”はそれらを担保として出てきている現象なのです。

▲常に強気の発言  ©ゆでたまご

 しかしながら彼のフォルムは…どこからどう見てもカワイイんですよ(笑)。そして超人としての実力においても、怪物級の強さを誇っているわけでないことは、我々はみんな知っているわけです。

 ですので、彼が強気な発言をしたとしても、

ちびっ子が虚勢を張っている

といういうような微笑ましさがどうしても脳裏をかすめてしまい、そこに可愛らしさを感じてしまうのは否めません。

 ただその姿に彼の懸命さというか、自身を奮い立たせているような健気さを感じ、容姿と言動のギャップにたまらない魅力を感じてしまうわけなんですね。

 特にディアボロスとして臨んだ完璧無量大数軍とのタッグマッチでは、彼の意地というか悪魔超人としての矜持がふんだんに表現されていました。

絶対に相手にはナメられない

という、彼の“ありたい自分の姿”をとことんまで追及し、実践している姿とその根性に感服してしまうんですよ。

 そしてその姿が究極まで高まったシーンが、

別の相方と使っていた胸クソ悪いフェイバリット

である、『ロングホーン・トレイン』を使ったシーンだと思います。

 彼にとっては意地でも使いたくない技のナンバーワンであったと思うのですが、敵(ジョン・ドウズ)を倒すために必要とあれば、そんな己のプライドなどかなぐり捨てる姿が本当に男らしくてカッコいいです。

▲勝つためには胸クソ悪い技でも使う  ©ゆでたまご

めちゃくちゃ仲間想い

 また、彼は所属する軍団にとても誇りを持っています。おそらくは苦楽を共にした仲間意識の高さと、7人で行ってきた様々な実績がそうさせるのでしょう。

 そしてその“仲間意識の高さ”は、そのまま彼の“仲間想い”という特性につながります。そう、彼は悪魔超人の中でも屈指の仲間想いだと思うんですよね。

 それは完璧無量大数軍との対抗戦において強く表現されており、仲間の闘いを真摯に見守り、勝っても負けても仲間を全肯定している様子でよくわかります。

 特にステカセキングに対しては強い感情をもっていて、お互いがスニゲーター教官に

オモチャ野郎!

と怒鳴られつつ苦難を乗り越えてきた境遇にシンパシーを感じているようです。

 このあたりの落ちこぼれ具合というか、悪魔超人軍に残れるか残れないかの当落ラインに彼がいたというのも、とても人間臭くて親近感が湧くんですよね。

 そしてそんな落ちこぼれ超人が、よくぞあそこまで強気かつ誰よりも仲間を思いやる超人に育ったものだと、とても感心してしまうんですよ。

▲悪魔超人一の仲間想い  ©ゆでたまご

 思うんですけど、彼の“仲間を想う気持ち”というのは、正義超人におけるそれとなんら変わらないとすら感じています。

 もちろん闘いにおける考え方や、相手への仕打ちに対しては“非道”であり“無軌道”かもしれませんが、こと仲間に対する言動においては“友情”のエリアにがっつりと腰を下ろしています。

 そのあたりの人情味も彼の大きな魅力であり、私はとても好感を持っているのです。

 そしてダメ超人ながらもそれを克服し、誰よりも仲間想いのキャラとなったその姿は

実はキン肉マンに似ているのかも…

とすら感じております。

たまにお茶目

 そんな感じでその外見からは想像もつかないほど気丈で、芯の強い超人としての振る舞いを見せている彼なのですが、たまに見せるお茶目な表情がまた、我々の心を鷲掴みにしてくるんですよ(笑)。

 特に彼の眼が“ニッコリ”としている表情が、たまらなくカワイイです。

こちとらながい間フロに入ってねえからありがたいくらいだ

 このように、ツッパリを目指しているキャラが一番してはいけない“満面の笑み”を、けっこうあっさりと出しちゃうんですね(笑)。

 それが元から持っている彼のフォルムの可愛らしさと相まって、とてもキュートなんですよ。

いつもは強がっているくせに、なんてチャーミング!

と、そのギャップに思わず女子モードでメロメロになっちゃうんですよね(笑)。

 このように、彼はひじょうに人間味あふれる、魅力的なキャラクターであることは間違いないと思われます。

2.特性が日常的かつ拡張性に富む

わかりやすい格闘特性

 そんな魅力あふれる彼の格闘特性は、見てすぐにわかる通り“バネ”であり、その“弾性”です。この特性がまた、とんでもなく格闘と相性がいいんです。

  • 伸びる
  • 縮む

という基本の性能から

  • 伸びる➡力を溜める
  • 縮む➡力を吸収する

という力学的イメージを容易に連想させ、そこから

  • 力を溜める➡攻撃力倍化
  • 力を吸収する➡防御力倍化

という、攻防における説得力を生み出しています。

 それは誰もが日常生活において、スプリングが身近にある生活を経験しているからこその説得力であり、

伸ばしたバネが顔にあたったら、そりゃ痛いよね

クッション性抜群だから、相手の攻撃が効きそうもないな

といったように、とてもわかりやすいんですよね。

傑出したフェイバリット

 そして彼のフェイバリットである『デビル・トムボーイ』は、当時流行った、階段をバネが勝手に下りていく『トムボーイ』もしくは『スリンキー』というオモチャからインスパイアされたものです。

 技の導入部にこのギミックを取り入れ、相手の体を包み込んだ後はバネの弾性を存分に利した絞りあげで、相手をバラバラのミンチですよ。

 もう何と言いますか

  • 技の導入ギミックOK
  • 技の説得力OK
  • 技の衝撃度OK

と、三拍子がそろったとても完成度の高いフェイバリットだと思うんですね。

▲総合的に完成度が高い『デビル・トムボーイ』 ©ゆでたまご

 ここまでフルマークを得ている技というのも逆に珍しいくらいで、

『キン肉マン』という作品の中でも傑出したフェイバリット

だと個人的には思っています。

シングルでもタッグでも

 このように、シングルマッチにおいてその特性を存分に発揮できるポテンシャルを持っていた彼ですが、タッグマッチでもその特性を利した表現は、とどまることを知りませんでした。

 それはバッファローマンとの『ディアボロス』にて存分に発揮されており、

  • スプリング・バズ―カ
  • 超人ドッジボール
  • デビルエキスパンダー
  • ディス・イズ・タッグチーム

といった印象的なツープラトンは、彼の超人としての特性が拡張性に富んでいることを十分に示したと言えるでしょう。

▲無限に広がるバリエーション  ©ゆでたまご

 そしてそれらはスプリングマンの特性が、ゆで先生にとってもかなり使い勝手のよい特性であったからこその結果だと言い換えることもできるのではないかと思います。

 おそらくですが、ゆで先生はスプリングマンを通じて様々な技の創作意欲を掻き立てられたのではないでしょうか。

 このように、そのモチーフとなった物質の特性が、ここまで無理なくスムーズに闘いに転化できている様が個人的にはとても素晴らしいと感じており、評価が高いのです。

3.シンプルである

 そして彼の最も素晴らしい点は、“フォルムとファイトスタイルが共にシンプルである”ということです。

 彼のフォルムは見てわかる通り、スプリングに手足がついただけです(笑)。顔だって正円の中に“S”の文字と、楕円形の両眼があるだけで、ブラックホールやペンタゴン並みにシンプルです。

 しかしながら彼は前述したように、とても愛くるしいキャラクターを存分に振りまいており、その動きは躍動感にあふれています。

 その姿はまさに“極限まで無駄をそぎ落とした”シンプルさの結晶であり、必要最小限のパーツでその特徴を十二分に表現するという、恐るべき効率的表現力を有しているのです。

 そして前述したように、ファイトスタイルにおいても彼はとてもシンプルです。しかも読者全員に、そのファイトスタイルの特性を容易に理解させる力があり、なおかつそれに対する説得力もあるわけです。

 正直な話、彼くらい高レベルで自身の特性を美しくアピールできている超人は、他にいないのではないかとすら思えます。

 強いて言えばサンシャインですかね…? 砂という特性を存分にアピールできている、という点においては相当にレベルが高いと思いますので…。

 でもやはりスプリングマンには敵わないかな…まあ私の主観ですけどね。

超人の完成形・スプリングマン

 いかがでしょうか。私が熱弁させていただいたように、彼は 

  1. キャラが魅力的である
  2. 特性が日常的かつ拡張性に富む
  3. シンプルである

という点において、とても高いレベルでそれぞれの項目をクリアしているとお感じになられないでしょうか。

 そしてその3項目が、高次元で融合されている点が本当に素晴らしく、そこに美しさすら感じるほどです。よって私は彼を

超人という種のひとつの完成形

と評したいんですよね。

 まあここまで熱く彼をプレゼンしたので、ほんの少しは彼を見る目が変わった方もいるんじゃないかな…いや、ぜひともいてほしいなあ(苦笑)。

おわりに

 以上、あらためて再批評したスプリングマンでした。

 私の中で彼がここまで高い評価を得たのは、彼の露出のタイミングもよかった、という点も大きかったかもしれません。

 つまり彼が潜在的に有する上質な素材を、年齢を重ねて変化した読者の味覚に合わせてゆで先生が見事に調理し、絶妙なタイミングでそれを提供したからこその結果であったとも思えるのです。

 まずは大人になって前作を読み返し、彼の秀でた部分を再確認できたというタイミング。これはゆで先生云々というよりは、自身の感性の変化が大きいです。

 そして水面下における彼の再評価熱がフツフツし始めた頃合いで、『キン肉マンⅡ世』においてダンディーな眼鏡姿を披露し、その色気でネット界をザワザワさせた(笑)タイミング。

 これ、私にとっては“スプリングマン推し”を推し進める大きな影響力がありましたね。これはゆで先生の見事な演出だったと思います。

▲ダンディーな眼鏡姿。見舞いの花も素敵(笑) ©ゆでたまご

 そして完璧無量大数軍との闘いで素敵すぎる生き様を披露したタイミング。この熱い展開により、水面下で溜まっていたマグマとでもいうべき彼の魅力が、とうとう火山のごとく大噴火したわけです。

 このように、彼の再評価における“ホップ・ステップ・ジャンプ”というフェーズにおいて、ゆで先生がバッチリとその最適解を当てはめてくれたように感じるのです。

 そんな感じで私にとっての“超人という種のひとつの完成形”となったスプリングマン。残念ながら散ってしまいましたが、ぜひともまた登場してほしいキャラクターですね。ではまた。

今回はシーサーさん、アイクさん、にょろろさん、マリカさんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。

【リクエストはこちらから】

    コメント

    1. uzuki より:

      二世があるから散ってもどこかで復活するから大丈夫!
      …と思ってたら嶋田先生がⅡ世とはつながってない的な発言しちゃってんですよねぇ
      まあ今のストーリーにⅡ世につながる伏線とかはない的な意味かもしれないけど
      Ⅱ世が黒歴史化しないかちょっと不安

      それはそれとして
      スプリングマンって確か4000歳なんですよね
      なのにⅡ世で今更老ける?って思ったもんですが
      どこかで「俺ももう年だなぁ」って思う瞬間があって老けだしたのかなぁと
      一体どこらへんで老化が始まったのかちょっと気になりますね

    2. たけ より:

      スプリングマンの魅力はやはりバッファローマンとのタッグの時ですかね。やはりあのバネ特性の応用力はほかに比類ないですよ。
      サンシャインは砂特性と巨漢特性のそれぞれが上手く整合しないという印象がありますね。砂特性を前面に押し出すと巨漢特性が生かせず、巨漢ファイターを強調すると砂特性を上手く使えないという感じです。

      • アキラ アキラ より:

        たけさん、こんにちは。

        スプリングマンの特性はすごいですよね。私もディアボロスは名タッグチームだと思います。
        サンシャインはやはりはぐれ悪魔コンビのときのハマり具合が素晴らしいと思います。アシュラマンが彼の特性を最大限引き出している感じがしますね。

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