超人マフィアたる超人同盟のエース。残虐なファイトスタイルだけではない、彼の持つ本当の魅力とはいったい…?
実はハリウッド的キャラクター?
彼は『アメリカ遠征編』で初登場しました。
当時のアメリカ超人界は、3つの団体がテリトリーを奪い合い、しのぎを削るという状態であり、彼はそのうちの一つである『超人同盟』に所属するトップ選手という設定です。
その容貌は痩せたハゲタカのようであり、高い鷲鼻と長いまつ毛、そしてスキンヘッドが特徴的なキャラクターでした。
さらには全身に自身の名前をこれでもか、と刻み込んだ刺青。もしも変死体で見つかったとしても、すぐに身元が判明できるほどの自己紹介を、全身でアピールしています(笑)。
ただそのスペルが“SUKARU”だったり、“SUKALU”だったりと安定しません。気分によってRとLを書き換えているのかな? そもそも論で

ローマ字でタトゥー入れんなよ
って感じなんですけどね(笑)。
当然そのような姿はちびっ子の支持を得られるようなものではなく、“悪役としてどう嫌われるか”ということに重きをおいた方向性が見てとれるキャラだったといえるでしょう。
要はヒーロー物におけるわかりやすい悪役ですね。
私もご多分に漏れず、彼にはあまり魅力を感じてはいませんでした。その大きな要因は、先ほどあげたような悪役フォルムだったと思います。
しかし大人になった今、もう一度彼をよく観察してみると、実はひじょうに味のあるフォルムをしていることに気づかされます。
というのも、先ほど挙げた彼の容姿的特徴というのは、いわゆるハリウッド的な悪役のアイコンを見事に網羅していると思うんですよ。
つまり彼は“悪役”という観点からすれば、とても魅力的な外見を持っており、味のある悪役になれる可能性が高かったように感じています。
ではあらためて彼の持っていた可能性とその魅力に迫ってみましょう。
狡猾なワルという魅力
彼の性格を一言であらわすならば、“狡猾”となります。見た目がアレでしかも狡猾、もう人気キャラへの道としては完全に詰みです、はい。チェックメイト(苦笑)。
とまあ、小学生時代ではそこで終わりなのですが、我々は経験を積んだ立派な大人になりました(笑)。というわけで、彼を大人の視点から見てみることにしましょう。
“狡猾”というのは、“賢い”と言い換えることもできます。“賢い”ということは、“戦略性に優れている”ということにつながるんですね。
事実、『アメリカ遠征編』における前半のシナリオは、ほとんど彼が書いたといっても過言ではありません。
- アドリブで行った超人評議会への裏切り
- シャネルマンのホストをしつつ泳がせる
- ロビンマスクを利用した超人世界タイトルの強奪未遂
といったようなシナリオは、彼の戦略性から生まれた展開といえるでしょう。それらは彼のキャラクターに大きな深みを与えていると、個人的には感じています。その理由は以下の通りです。
アドリブで行った超人評議会への裏切り
キン肉マンが所属する超人協会を潰すために、一時的に休戦し同盟を結んだスカル・ボーズ率いる超人同盟と、ビューティー・ローデス率いる超人評議会。
彼らはゲリラ的な乱入劇により両団体の内部壊滅をもくろんだシャネルマン(キン肉マン)を追いつめ、その正体を暴くべく一芝居打ちます。
しかしスカル・ボーズはそのシナリオを途中で一方的に反故にし、超人評議会を不意打ちして裏切ります。その理由は、ここでシャネルマンの正体を無理に暴くよりも、騙されたふりをして彼を囲い込んだ方が、後々そのベルトを奪える確率が上がる、という計算からです。
このあたりの策士ぶりは、なかなかのものだと思いますね。しかもこの時は、“真弓の踏絵”を簡単にクリアするという、スグルの予想外の動き(苦笑)を見て、即座に決めた方針転換なんですよ。つまりアドリブなんです。
これは彼の頭の回転がとても早いことを如実に示しており、そこでも彼の“賢さ”を見てとることができます。もちろん“狡猾”に属する“賢さ”なんですけどね(苦笑)。
さらに“裏切り”という行為に躊躇がなく、損得勘定で味方を背後から刺せる非情さも十分に表現されたと思います。
特にローデスに対する“顔面剥ぎ”シーンは、その残虐性のインパクトが絶大で、彼の悪役としての凄味を大きく引き出したと言えるでしょう。トラウマになったちびっ子もいたんじゃないかな(苦笑)?
シャネルマンのホストをしつつ泳がせる
シャネルマンの囲い込みに成功したスカル・ボーズは、彼のホスト役を自ら務めます。その接し方は意外と紳士的で、その戦闘スタイルの残虐性とのギャップを生み出しています。
言うなれば、彼はインテリ・マフィアの特性を多分に持っており、それはこの作品では二人と存在しないキャラクター像を構築したともいえます。かなりのレアキャラと言っていいでしょう。
そしてシャネルマンを巧みに泳がせつつ、そのベルトを奪う機会を探っていたわけです。このあたりもなかなかの手腕ですよね。ここでも彼の“知的な悪”という側面がよく表現されていたと思います
ロビンマスクを利用した超人世界タイトルの強奪未遂
そんな彼の狡猾さが一番発揮された企てが、この“超人世界タイトル強奪未遂”です。簡単に言えば“漁夫の利作戦”なのですが、これがなかなかに汚いです(笑)。
超人オリンピックでキン肉マンに敗れ、失ったすべてを取り返そうとするロビンマスクの窮状につけこみ、彼を利用して自分の代わりにキン肉マンと闘わせることがこの策略の肝です。
そして試合じたいは両者をどさくさで死亡させるように仕組み、判定で強引にロビンの勝利とします。しかし勝者死亡ということでベルトの所有者をいったん宙に浮かせ、結局はロビンのパトロンであったスカル・ボーズの手元にそれが届く、というシナリオです。
空位のベルトがなぜスカル・ボーズの手に渡るのか、という点で、その筋書きに多少の疑問点はありますが(笑)、労せず野望を達成しかけた彼が、相当な策士であることを強調できたエピソードであることには変わりありません。
政治戦略を立てられる悪役
以上のように、彼は“頭を使った狡猾なワル”というキャラクターを持っていた、と言えるでしょう。その後悪役キャラとしては
- ウォーズマン
- バッファローマン
- 悪魔将軍
- ネプチューンマン
- フェニックス
と様々な超人が登場するのですが、彼らはあくまで格闘面における悪辣さを基本としてその悪役キャラ像を確立していきました。
しかしスカル・ボーズだけはこれらの悪役超人と比べ、一線を画した悪役キャラ像を確立したと思います。
その大きな違いは格闘外における悪辣さであり、多分に政治的な要素を持っている点です。いないんですよね、他に政治的なワルって。
フェニックスが若干それに当てはまりますが、どちらが切れ者かと問われると、個人的にはスカル・ボーズに軍配があがるのではないかと思っています。知性の神には申し訳ないですけど(笑)。
つまり彼はアダルトなテイストをふんだんに醸し出している悪役だったんですね。たしかにこれは小学4年生にはウケないですよ(苦笑)。この時期に連載を打ち切られる危機が訪れたのもうなずけますね(笑)。
名参謀としての可能性
以上の考察から、彼のキャラ特性として
- 痩せ型スキンヘッドの悪人面
- 残虐なファイト
- インテリ・マフィア的な凄味
- 狡猾な策略立案および遂行
- 合理的利益追求
- アダルトな思考
といったものが浮かび上がってきました。
これ…話を元に戻しますけど、ハリウッド映画の悪役としてウケますよね~、絶対(笑)。もう悪役としての魅力がふんだんに溢れています。まさに悪役要素のデパートですよ(笑)。
さらに付け加えると、彼は№2のポジションでも動けるんですよ。『アメリカ遠征編』において、彼は師匠で超人同盟会長のシーク星人を常に立てているんです。必ず敬語ですしね。
この動きも彼のアダルトさに拍車をかけているわけです。ボスを立てつつ、実務はすべて彼が指揮し、結果を出す。シーク星人としては“任せて安心”の、できる右腕ですよ。こう書くと、サイコマンが少しスカル・ボーズと被りますかね。
そう考えると、彼は参謀としてのポテンシャルがあったのではないかと思うんですよ。
それこそフェニックスが彼を登用し、様々な戦略を練らせていたとしたら、もっと唸るようなシナリオでキン肉マンチームを苦しめたかもしれませんね。
【おまけ】彼のモデルは意外なあの人?
以上、スカル・ボーズについての考察でしたが、別件のネタをひとつ、発表させてください。
彼の批評を書くにあたって、今回もいろいろと調べ物をしたのですが、そこで私はあることに気づいてしまいました。
実はこの気づきが今回の一番の収穫だったかもしれません。そして私はその気づきから、ある仮説を思いついてしまいました。その仮説とは…
というものです。

…何を言っているんですか? アキラさん?
と思われた方、わかります。でもですね、少し私の戯言に耳を傾けていただけませんでしょうか(苦笑)。
そもそもスカル・ボーズというのは、読者からの超人募集出身ではない可能性が高いです。連載中にその出自が明らかになっていないキャラなんですよ。
つまりゆで先生の、数少ない(笑)オリジナル超人である可能性が高いんです。となると、彼のモチーフというか、元ネタって何だったのでしょうか?
ゆで先生だって何もインスピレーションがないところから、急にデザインを起こせるわけではないでしょう。当然何か、参考となるものがあったはずなんです。
そこで彼の名前に注目したいと思います。スカル・ボーズ。“スカル”はどう考えても“skull”、つまり頭蓋骨のことです。もう少し俗っぽく言うと、“ドクロ”もしくは“シャレコウベ”といった意味でしょうか。
では“ボーズ”は何でしょうか。英語でそれに当てはまりそうな単語がないので、ここは日本語の“坊主”のカタカナ表記ではないかと予想します。
そしてその二つをつなげると…“ドクロ坊主”となります。試しにそのワードでググってみると…『ドクロ坊主』というマンガが完全一致でヒットするんですね。

見てわかる通り、このマンガの主人公である少年は、坊主頭の少しヒネた感じのある見た目をしています。スカル・ボーズとデザインの方向性は近しいといえるでしょう。
この『ドクロ坊主』は月刊少年ジャンプで、1977年から連載されたようです。つまり『キン肉マン』が連載される1979年の2年前、ゆで先生が16歳のときの作品なわけです。
その作者はジャンプ創世期のヒット作『包丁人味平』で有名な、ビッグ錠。当時のゆで先生にとっては、雲の上の存在の大先生といえるでしょう。
となると、もしゆで先生がこのマンガを読んでいたとしたら、それは一少年読者としてこの作品に接していたことになります。
そして、その時に受けた思い出のオマージュとして、ドクロ坊主をスカル・ボーズのモチーフにした可能性は否定できません。しかしながら

そうだったとしても…それがどうしてアデランスの中野さんと関係あるの?
という疑問がありますよね。
ところがここで『ドクロ坊主』をウィキペディアで調べてみると、驚愕の事実が記載されています。それは…
という記載です。

ええ~~っ!! そうなの~~~っ⁉
となりませんか?
皆さんご存知の通り、編集者の中野和雄氏はゆで先生を発掘し、マンガ家としての土台を作ってくれた方です。
そして我々読者にとっては、そのパロディである“アデランスの中野さん”というキャラクターとして、ひじょうに親しみを持っている人物です。
その中野氏がドクロ坊主のモデルだとすると、以下のような式が成り立ちます。
どうですか。この中学生レベルの証明の説得力は(笑)。
この証明から、私は以下の展開を推測したいと思います。
ゆで先生は、担当編集だった中野氏のパロディとして登場させた、アデランスの中野さんに大きな手応えを感じていた。
そして、今度は中野氏をモデルとした超人を登場させたくなった。そこでモチーフにしたのが、少年時代に読んでいたビッグ錠の『ドクロ坊主』であった。
なぜドクロ坊主をモチーフにしたのかというと、中野氏から“ドクロ坊主のモデルは自分”ということをどこかで聞かされており、それが頭にあってキャラ作成のインスピレーションとなった。
このようなキャラ作成は、すでに先輩マンガ家がキャラクターとして築き上げた中野氏(=ドクロ坊主)を、オマージュして利用するという流れとなった。
そしてその容貌と名前をアレンジして誕生したのがスカル・ボーズだった、そんな展開です。
もちろんこれはあくまで私の推測です。ただ私はこの仮説がそれなりに真実であるのではないか、というフレーズも発見しました。
それは第二回超人オリンピック予選会場における、スグルとスカル・ボーズとの会話です。その時スグルは

スカル・ボーズなんか、アデランスにしちゃって!
と発言しているんですね。
これはゆで先生がスカル・ボーズのモデルをアデランスの中野さんにしていたという、確固たる証拠なのではないでしょうか。
普通に読んでいればこのシーンは

あの極悪だったスカル・ボーズが色気づいちゃったよ!
という、ギャップギャグシーンだったのかもしれません。しかしそのウラで、実はゆで先生だけがコッソリと

スカル・ボーズは中野さんだからね~、アデランスつけちゃお。
と遊び心を出した、楽屋オチギャグシーンでもあったのではないかと。ホント、気づくのは関係者数人、というレベルの。
そう考えると、私の仮説もそれなりに真実味が増してくると思いませんか(笑)? できれば真相を知りたいですね。
ただ仮にそれが真実だったとしても、キャラクターの実績としてスカル・ボーズはアデランスの中野さんには遠く及ばなかった、と言わざるを得ず、そこはとても残念なところです。
もし先ほど考察したインテリ・マフィアの参謀的キャラクターがハネていれば、アデランスの中野さんにも負けないくらいのバイプレーヤーとして、その個性を存分に発揮し、活躍できていたのかもしれませんね。
※今回はポテギさん、上野さん、白アザラシさん、アクメ将軍さん、セドリックさんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。
【リクエストはこちらから】


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