白ゼブラより黒ゼブラの方が弱いと指摘するマリキータマン。「妄言も甚だしい! あの偽善にまみれた軟弱の極みよりオレのほうが弱いなどありえん話だ。オレはまだ…」とマットに這いつくばりながら強がるゼブラ。その眼前には心の声を具現化したともいえる白ゼブラが現れます。
「ヤツの言うとおりなのはお前も重々わかっているはず。ここまで暴れ回ればもう気が済んだろう。さあそれなら後は」と言う白ゼブラに「黙れ、消えろこの偽善者がーっ!」と黒ゼブラが一喝すると、幻は消えます。「フ…要はオレがお前に勝てば何も問題はないわけだ。このオレが存在意義をヤツに認めさせる方法はもはや…それしかない!」と黒ゼブラが叫ぶと、「フン。黒ゼブラよ、お前の弱点はその意固地さだ! そんな何かに囚われ続けた今のお前に何度闘ってもオレは負ける気はしないーっ!」と、マリキータマンはゼブラの後方に回転して回り込み、両膝を後頭部に押し当ててマットに落下。
この衝撃でまたもやダウンを喫する黒ゼブラ。そのときに何やら円形のオブジェをリング上に落下。それには気づかず「全てを犠牲にしてはい上がってきたこのオレがこんなもので…」と屈辱感を覚える黒ゼブラが起き上がろうとすると、幻の白ゼブラが肩を貸します。「お前をそこまで頑なにさせてしまったのは…このオレだ」と黒ゼブラに話しかけます。
それに対して「ああそうだとも! 貴様の都合の悪い部分は全てオレが背負ってきた。汚れ仕事は全てオレが手を染めてきた。全て貴様の代わりにオレがやってきたことだ!」と返すと、「思えばお前と最初にこうして会話をしたのはあのシマ馬キッドを殺した日のことだった。あの日お前は生まれた…いやオレが生み出してしまったのだ。罪の意識に耐え切れず…オレは全てをお前のせいにした。しかし…今こそ言おう。キッドを殺したのはこのオレだ! 長い間罪を被せてすまなかった…」と白ゼブラは侘びをいれました。
「認めるのか…?」と黒ゼブラが問うと、「ああ、そうしないとオレはシマ馬キッドのみならず、お前まで殺してしまうことになる。これ以上大事な友を失うわけにはいかぬ」と白ゼブラ答え、“友”というフレーズに反応する黒ゼブラ。そしてリング状に転がった円形オブジェがゼブラメダルだと気づくと、「元来オレとお前はひとつだった。それが分かれて半分ずつのおかしなことになってしまった。今こそ元に戻る時だ。キッドもそれを望んでいる」と白ゼブラが提案をします。黒ゼブラの眼前には愛馬キッドの幻影も現れ、「ああそうだな、わかったよキッド…」と漏らした黒ゼブラの一言で白ゼブラは消え去り、「これはオレなりのケジメのつけ方だ…」とゆっくりと立ち上がった黒ゼブラの体からは、装飾された黒い皮膚が、日焼けの皮がめくれるようにベリベリと剥がれ落ちていきます。そしてそこには新生白ゼブラの姿が誕生。
「…なんて野郎だ。まさかこの二重人格男にこれだけの気概があったとは」とマリキータマン。「くだらぬ芝居はもう終わりだ…これからは黒も白もない。このオレが…ただひとりのキン肉マンゼブラだーっ!」とゼブラが挑みかかると、「ぬかせ邪悪神ごときの手先がーっ!」とマリキータマンも同時に動き出します。
「それを言うならお前らだって…サタンごときの手先だろうがーっ!」と、読者が忘れていたような設定(笑)でゼブラは揚げ足をとり、カウンターのローリングソバット。そして連続してハイキックを狙うと、マリキータマンはそれは回避してゼブラの背後にまわり、チキンウイングの体勢で上空にジャンプし、己の羽根を広げて縦回転しながら落下。「誰がサタンの手先なものか! オレたちオメガの信じるものは…我ら一族の誇りだけだーっ!」と、そのままゼブラをうつぶせ状態にしてリングに叩きつける『マリキータエリコプテロ』を炸裂させます。
強烈な一撃を食らい、血を吐いてマットに横たわるゼブラ。ここで勝負あったとハラボテはゴングを要請しますが、ピクリと動いたゼブラを見て「まだ鳴らすな!」とノックを制止し次回に続く、です。

黒ゼブラはいわゆる裏モード、奥の手、リミッターを外した禁じ手、といったイメージを持っていたわれわれですが、マリキータマンはその既成概念に縛られず、逆手に取って黒ゼブラを肉体的にも精神的にも追いつめていきました。この展開は予想外でしたね。普通ならば白ゼブラのピンチ時に黒ゼブラが覚醒し、大暴れの大逆転、といった展開がありがちじゃないですか。それを放棄し、白ゼブラの黒ゼブラへの謝罪、愛馬キッドへの贖罪、2つの人格の再融合、新生ゼブラの誕生といった路線を選んだのはさすがのゆで先生だと思いました。異なる人格同士に“友”という絆を持ち込んだのも個人的には面白いな、と思いましたね。
その過程をふんだだけに、もうゼブラの負けはないですね。今回終了ゴングが鳴る寸前でしたが、それも回避しましたし。ただし今回の勝利と引き換えに、ゼブラは二重人格キャラというひとつの個性を失うことになります。いうなればキャラとしての魅力を失うことにもつながるので、今回生まれた新生ゼブラは相当がんばって新たな個性を手に入れないと、今後の展開が厳しくなると思います。そのあたり、ゆで先生がどう手を打ってくるのか。それも見所ですね。
最後にお互いを「邪悪神ごときの手先」「サタンごときの手先」と罵り合っていますが、ここでマリキータマンのプライドがまた垣間見られました。「信じるものは一族の誇りだけ」というフレーズに、あらためて六鎗客の悲壮とも思える覚悟が見て取れます。こういった所を見ると、彼らがあながち絶対悪ではないんだなあと感じてしまいますね。
その他気になった点は
- 今回のゼブラ、端から見たら独り言のオンステージだったろうな(笑)。
- 黒ゼブラの皮がむける表現はとても面白いです。
- 「サタンごときの手下だろうが」って、ゼブラは口喧嘩も強いな(笑)。
こんなところですかね。
コメント