『RECORD』とは
みなさん、こんにちは。
先日渋谷のBunkamuraにて開催されていた、江口寿史先生の『RECORD展』に行ってきました。
江口先生と言えば、『ストップ!!ひばりくん!』で有名なマンガ家ですが、職歴で見るとイラストレーターとしての肩書の方がしっくりくるかもしれません。
特に彼の描く女性のかわいらしさ、美しさはとても魅力的で、世代を超えて支持をされている所以となっております。
私も先生の絵柄とセンスのよさに長年惚れ込んでおりましたので、ついついおびき寄せられた次第であります(笑)。
今回は彼が手掛けた音楽ジャケットにフィーチャーし、作品と制作過程の原画などが解説と共に展示される、という趣向の展示会でした。
そしてその作品を集めた画集が『RECORD』です。当然の如く、購入してしまいました(笑)。
懐かしのひばりくんがどアップで印象的です。こちらは『銀杏BOYZ』のアルバムジャケット用に描き下ろされた作品ですね。
『RECORD』開封
ではさっそく開封です。
このように、ケースから中身を抜くと、
- 表紙のひばりくん
- 画集本体(帯封状態)
- 作品解説ブック
といった構成となっていました。
サイズは『RECORD』というタイトルらしく、LPレコードサイズとなっております。
ただ私、恥ずかしながらLPレコードを購入した経験はありません。ガッツリの昭和世代かつ、80年代大好きコンテンツを作っているくせに(苦笑)。
ですので、サイズの演出についてはそこまでノスタルジックにはなれないのが、なんとも悲しいところです。
バカバカ、オレのバカ。なんで青春時代にレコード買ってなかったんだよう(笑)。
そして画集本体はブック形式ではなく、一枚もののペラの集合体となっております。
これは紙芝居のように作品の順番を入れ替えることで、気分と好みで表紙を変えることができるという、イカした仕様なんですね。
ですので

今日はスカッと真夏な気分だな!
な~んて気になれば、
こんなジャケットを表紙にして飾れるという。う~む、素晴らしいギミック。
あらためて感じた江口寿史のすごさ
彼の作品を観て常々感じていたのが

何十年経っても色あせない、魔法のポップアート
という印象です。
これは彼のトレンドセンサーが常に敏感であり、巷のカルチャーを日々アップデートしているからだと思われます。
そしてそのアップデートした情報とイメージを、恐ろしいくらいの再現性で自身の筆に載せているからだと、個人的には思っています。
ある意味“トレンドウォッチャー”としての才能が、群を抜いて優れている方なのかもしれません。
彼のすごさの主軸の一つはそこだと思うのですが、今回はもう少し細かい視点で感じた“すごさ”について、少し書いてみたいと思います。
それは以下のような点です。
- 省略の美
- 服のシワ
- シンプルな色使い
- 女性の指の色気
では上からいってみましょう。
省略の美
彼の絵は十分緻密に見えるのですが、あえてディティールを省略している部分が必ずあります。例えば
- スニーカーの紐
- 腕時計
- 車のインパネ
などです。
この“省略の割合”が彼は天才的であり、そのおかげで絵面が込み入ることがありません。
ゆえに必ず余白の美が生じるため、タッチが緻密に見えつつも、シンプルであることを維持しているんです。
これはまさに“引き算の美学”であり、その配分が見事だとあらためて感心してしまいました。
服のシワ
これもあらためて見ると、うまいですよね~。特にGパンの裾の部分の“クシャクシャ”が好きなんですよ(笑)。
このシンプルな線で、ものすごくリアリティを醸し出すんですよね。それが不思議というか。
だって線形としては2、3角しか曲がっていない、単純なラインじゃないですか。なのに、このクシャ感を出すっていったい…。
これも真似しようとも真似できない、彼の職人技術だと思いますね。
シンプルな色使い
彼は80年代からカラートーンを利用した、ヴィヴィッドでシンプルな色使いが特徴的でした。こちらについては現在もそのまま健在、という感じですね。
デジタルペイントが発達し、いくらでも濃淡を利用した着色ができようとも、あえてのシンプルペイント。
最小限の濃淡で場面を表現し、それがより作品のポップ性を際立たせています。これもまた“引き算の美学”であり、彼の真骨頂ですね。
女性の指の色気
そして今回気づいた、一番の推し(笑)が“女性の指の色気”です。
これはね…盲点でしたね。
なぜ彼の描く女性がこんなにも可愛げと色気があるのか。その要因のひとつがこれなのではないかと思いました。
もう…なんだろ。細さ、ライン、節、爪、すべてが“色気のバランス”で構成されており、指がすでに“美人”なんですよ(笑)。

これが“色気のある指”の黄金比なのか…?
とでも言いたくなるくらい、惚れ惚れします。
今回はこの発見があったことが、個人的には一番の収穫でした。
以上があらためて感じた、江口寿史のすごさですね。総じて“引き算の美学”と“色気ある指”に集約された感じです。
粋なアイデアのサイン会
さて、今回の『RECORD展』においては、大きなイベントとして江口先生のサイン会がありました。
『RECORD展』にて購入したグッズにサインをしていただけるのですが、そのサインのギミックも相当にイカしていましたね。
というのも、画集『RECORD』の表紙には空白の吹き出しがあるんですよ。そこに江口先生が
と、マジックで直書きしてくれるんです。
○○○○部には当然、依頼者の名前が入るわけです。これで世界に唯一つの画集ができあがるんですよ。最高にイカしていますよね。
さらに同時に購入した画集『step』には、その場で先生が筆ペンで女性を描いてくれるんです。
もうその筆さばきを間近で見られるだけで、感動、感激モノでしたよ。
また、サインやイラストを描いていただく間、先生と雑談ができるのですが、緊張しすぎてたいして気の利いたことが言えませんでした(苦笑)。

ジャンプでリアルタイムで『ひばりくん』を読んでいました
とか

む、娘と息子もコミックスを読んでゲラゲラ笑ってます
くらいの。もうね、フツー(苦笑)。それに対して先ちゃん(あえてこう呼ばせてください)は

ああ、そうですか
という返しでした。
そう答えるしかないよね(笑)。でも至福の数分間だったなあ。
おわりに
以上、江口寿史先生の『RECORD展』にまつわる貴重な体験と、江口先生のあらたに発見したすごさ、魅力についての雑感でした。
この『RECORD展』は東京での公開を3月で終えたのち、6月からは大阪のあべのハルカス近鉄で開催されるようです。
これを読んでご興味がわいた関西の方は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
信じられないことに、このクオリティで入場無料です。ではまた。


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