1984年夏の、とある中学校における給食の時間をフィーチャーした、ニッチさあふれるドラマです。
テレビ神奈川やTOKYO MX、BS12トゥエルビという、どちらかというとマイナー(失礼)な局で放送されていたので、ご存じない方も多いかもしれません。
私は放送当時、その存在に気づいてはいたのですが、電子番組表でそのタイトルを見たときには
なんだこの番組?
という第一印象を持っただけで、スルーしていました。
ところが先日、Amazonプライムでこのコンテンツを見つけ、気まぐれに再生ボタンを押してみたら…ハマりました(笑)。全10話一気観賞ですよ。1話30分というのもテンポがよくて、それに拍車をかけた感じです。
ではなぜこんなにハマったのか、その理由を分析してみましょう。
テーマがニッチすぎ、しかもバカバカしい
このドラマのテイスト、もしくはジャンルは、『孤独のグルメ』に代表される“嗜好品掘り下げモノローグ形式ドラマ”です。
主人公が給食を食すときの、マニアックなモノローグがドラマの核となります。ただ学校が舞台だけあって、ドラマパート比率もやや多めです。
内容はコミカルでバカバカしいです。しかしこの“バカバカしい”というのは、悪い意味でのバカバカしさではないんですね。
それは日常の一コマ、このコンテンツの場合は“給食”という、普通ならば当たり前に通り過ぎて消化される日常に一点フィーチャーし、様々な角度からその魅力を引き出し、それを大げさに誇張表現する演出についついニヤリとしてしまうという、褒め言葉での“バカバカしさ”なのです。
物語の基本は“いかに毎日の給食を美味しく味わって食べるか”というもので、給食に異常な情熱を燃やす1年1組の担任教師・甘利田幸男(市原隼人)と、彼に負けないくらい給食を追求するクラスの一生徒・神野ゴウ(佐藤大志)との、給食タイマンバトルが主軸となります。
もうこの時点で“バカバカしさ”満点です(苦笑)。あ、何度も言いますけど褒め言葉ですよ(笑)?
毎度のパターンは
- 給食献立を毎日確認し、その時間を楽しみに待つ甘利田と神野。
- 先手として、自身のこだわりの食し方を披露し、悦に浸る甘利田。
- 後手として、甘利田を上回る、奇想天外で粋な食し方を見せつける神野。
- それを見て自身の敗北を痛感し、悔しさに打ち震える甘利田。
です。いつもこれです。もう安心・安全の水戸黄門システムです(笑)。
そしてこれらをオーバーに演じることで、
たかが給食で、何もここまで…
というギャップを演出し、それが呆れた苦笑いを視聴者に生じさせるも、何かほのぼのとした心地よさを視聴後に与えるわけです。これがたまらないんですよね。
特に主演の市原隼人の演技は振り切っており、なかなかの怪演ぶりを見せてくれます(笑)。
基本的に1~4のシーンは市原のモノローグとオーバーアクションで表現され、主人公・甘利田の給食に対するこだわりと変態性を十二分に表現しており、観ていてとても楽しいです。
時代設定とテーマがノスタルジック
このドラマの時代設定は、冒頭に書いた通り1984年の夏なんですよ。そう、80年代が大好きな私としては、どストライクの時代設定なんです(笑)。
アキラが愛してやまない80年代の出来事や文化をピックアップし、自身の思い出とともに振り返るコーナーです。
あえてウィキペディアでウラをとらず記憶だけをたよりに書いていくので、勘違いも含めて(笑)楽しんでいってください。
しかも1984年の中1クラスが舞台って…私と寸分たがわず同時期です。ま、ここはどうでもいいかもしれませんが(笑)。
また、テーマに“給食”を選定してくるところに、視聴者のノスタルジーを強烈に刺激しようとする、制作サイドの意向が見てとれます。
作中ではそこまで80年代を目立たせて演出しているわけではありませんが、おそらく製作スタッフはその視聴ターゲットを我々のような世代に設定していたのでしょう。
また、昭和の給食の献立だからこその“あるある”を、その物語に反映したかったのかもしれません。おそらくその“あるある”は、物語を組み立てやすいネタの宝庫だったのでしょう。
ともあれ、時代背景を1984年にしたことで、私のような懐古主義者にとっては、とても心地よい気分を味わえるドラマとなったわけです。
キャラクターが個性的
前述したように、このドラマの進行の中心となる甘利田と神野のキャラが、相当に変態的です。
甘利田は教師でありながら、頭の中はその日の給食のことだけで埋め尽くされており、まともに教師という業務をこなしているとは到底思えません(苦笑)。かなりいい加減な業務スタイルです。
対する神野も、何を考えているかよくわからないような不思議系生徒で、大人しく口数が少ない人畜無害キャラながらも、給食に対してだけは甘利田からマウントを取ることを生きがいとしているような、奇妙奇天烈な行動を平然ととります。
その行動は静的でありながらも、甘利田に対して不敵な笑みをみせたり、結果として甘利田を屈服させるに十分な食的行動を繰り出すなど、なかなかに挑戦的です。
例えば冷凍みかんを食べる際、甘利田はそのカチコチに凍った皮を剥くのにかなり苦戦し、その激闘のあとでやっとその果実を口にすることができます。
つまりその激闘を経たからこその快楽に対し、価値観を感じているわけです。
対する神野は、夏という季節を利用し、蛇口から出るときにはほぼ温水となる水を水筒のコップに注ぎ、その中に冷凍みかんを入れて半解凍するというテクニックを見せます。
その結果、いざそれを食べるときには皮は剥きやすくなりかつ、その果実は絶妙なシャーベットを形成し、スプーンでシャリシャリと優雅にそれを食す、ということが可能になるわけです。
それを見せつけられた甘利田は、敗北感による悔しさに打ち震えることになります(笑)。
つまり甘利田は直線的な給食の求道者であり、神野は変化的な給食の求道者なわけです。
その両極端に振れたキャラによる給食へのアプローチの対比を、給食の献立ごとにバリエーションを広げ、大げさに描写することでその楽しさを提供しているわけですね。
生徒役の子たちがホントに中学生っぽい
一応学校ものドラマなので、生徒役はレギュラー出演です。ただその子役たちが、本当に中学1年生っぽくてリアルなんです。
学園物のドラマって、これから役者や女優、もしくはアイドルとして羽ばたくことを狙う、いわば登竜門的なステージという面もあるじゃないですか。
そのため、やたらかわいい女子や、イケメン予備軍がクラスに集うことになり、なにかしら違和感が漂うクラスになったりするわけです。
年齢的にちょっとエリア外の役者さんも事務所のプッシュでいたりして、それに拍車をかけるんですね。
その傾向は未来のアイドルを青田買いするという楽しみはあるものの、作品としては不自然さを醸し出してしまうという弱点にもなり得るわけです。
しかしこの作品の子役たちは、そのあたりの違和感がほとんどなくて、ホントにそこら辺の中学校から引っ張ってきたような子が多いんですよ。
年齢的な違和感もまったくないです。リアルに中学1年生を集めたのかな、なんて思ってしまうほどです。
結果、中学校というドラマ設定におけるリアリティが増しているんですよ。
この子を売り出そうとしてんな
といったようなあざとさが見えないので、とてもフラットな中学生たちを堪能できるというか。
もちろん演者側はこのドラマ出演をステップにして、もっと露出したいと思っているのかもしれませんが、それが見えづらい出演者選定、演出に対し、拍手を送りたいわけなんです。
副担任役の武田玲奈がかわいすぎる
アラフィフだというのに、いいかげんこういった感想はどうかと思うのですが、まあいいや(笑)。
武田玲奈演じる御園ひとみは、産休教師に対する補充要員として、1年1組の副担任に赴任してきたまだまだ新米の教師。立ち位置的にはこのドラマのヒロインになります。
そして市川扮する甘利田とコンビを組むことになるわけです。
そのキャラ設定はがんばりすぎて空回りしてしまう先生、といったところなのですが、私的には甘利田の変態性を際立たせるための、比較用常識人という役割だと認識しています。
ただその“常識”を演出する上で、武田玲奈はその魅力を余すところなく振りまいてくれます。
- 新米女性教師としての初々しさ
- 新米だからこその、経験値不足からくるドタバタ具合
- 業務に対する自信なさげなたどたどしさ
- しかしながら自分なりに挑戦しようとするがんばり屋さん具合
- 放任主義の甘利田に対するお節介ぶり
以上のような役割を、見事に演じています。そしてその出演シーンすべてに“かわいさ”がねじ込まれており、視聴者としてはほんわかと癒された気分でドラマを観ることができるわけです。
このかわいさは武田玲奈が持つポテンシャルであることはもちろん、その根底に“がんばってドタバタしている女子はかわいい”という不文律があるからだと思われます。
さらに武田はこれらの演技にプラスして、“思春期の男子が憧れるであろう大学出たての女性教師かげん”を、絶妙な割合で醸し出しています。薄すぎず、エロすぎない女性フェロモン。
この見事なバランスを、彼女は存分に表現しているんですね。
また、彼女が毎回着る衣装にも注目で、上記のバランスを後押しするような、80年代テイストのとても魅力的なファッションを見せてくれます。
若々しさとかわいらしさを演出しつつも、派手すぎず教師らしく。“男子憧れの先生、かくあるべき”という要望を、見事に具現化しています。これはスタイリストさんグッジョブ、といったところでしょうか。
まあこの辺は個人の好き嫌いもあるので、人によって違うかもしれませんが、ドラマのヒロインとして、十分すぎる役割を果たしていたと思いますね。
いとうまい子も忘れませんよ
若い女子を褒めちぎったので、平等に熟女もフォーカスしますよ(笑)。
いとうまい子は給食のおばさんという役で、甘利田と神野の二人と、給食を結ぶ中継キャラとしてその役割を果たしています。
そのいで立ちは白い作業帽に作業着、さらにはマスク着用と、ほぼ目元しか露出されていません。一見して誰だかわからないといういで立ちです。
露出が重要である役者という職業にとって、このオファーはかなり厳しいものだと思うのですが、さすがはベテランのいとうさん、見事な女っぷりでこの役を全うしてくれています。
その男気ならぬ女気に、カッコよさすら感じてしまいますね。
さすがは40年前には“不良少女と呼ばれた(笑)”女優さんです。年季が違います。ドラマでもいいアクセントを生んでくれていて、甘利田と神野を引き立たせる、見事なバイプレイぶりを見せてくれていますよ。
ちなみに子役の中学生たちは、まさかこの給食のおばさんが、40年前にチェーンや木刀を振り回していたなんて知らないんだろうな(笑)。
終わりに
以上『おいしい給食』における魅力を、私なりにご紹介してみました。
でも給食って、日本人全員がほぼ経験している共通項なので、飲み会の雑談としても盛り上がりそうですね。現代の子どもたちにも、ぜひそういった思い出を作ってほしいものです。
そしてコンテンツ自体は1話が短いので、ホントに見やすいです。興味がありましたら、ぜひAmazonプライム等でご視聴ください。ではまた。
2021年10月より、『おいしい給食 シーズン2』の放送が決定! これは嬉しい!
2022年5月13日より『劇場版 おいしい給食 卒業』が、全国の映画館で公開です。ちょっと観にいっちゃおうかな(笑)。
2023年10月9日より『おいしい給食 シーズン3』が放送開始! 北の地に降臨した甘利田先生が、新しい生徒と繰り広げる給食バトルに期待です!
2024年5月24日より劇場版『おいしい給食 Road to イカメシ』が、全国の映画館で公開中です。今回もとても面白いですよ。
舞台挨拶に訪れた市原隼人さん、とても素敵で熱い方でした。素晴らしい。
ではまた。
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