アーケード版『R-TYPE』の思い出。

オレ流ゲームレビュー
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 高校に入学し、大きく環境が変わった点として、電車通学というものがあります。それは駅前という消費行動が盛んなブロックに毎日足を向けるということを意味しており、中学までではなかった誘惑が増えました。

 その誘惑の一つに“ゲームセンター”があります。80年代後半でもまだまだ“不良の温床”と同義語となっていたスポットでしたが、それでもそこに足を向ける要因となったのが『R-TYPE』というシューティングゲームの存在でした。

 初めてそれを見たときは、もう衝撃でしたね。今までに見たことがないようなギミックにあふれたシューティングゲームで、完全に心を奪われてしまいました。

 それでは私に“不良の温床(笑)”に通わせるくらいの魅力を放った『R-TYPE』の衝撃ポイントを書いていきたいと思います。

反射レーザーの衝撃

 私が『R-TYPE』に魅了された最大要因は、“反射レーザー”の存在です。『グラディウス』や『機動戦士ガンダム』等のアニメで刷り込まれていた

レーザーとは直線武器である

という常識を、この作品では根底から覆したわけです。

▲革新的すぎる“反射レーザー”

 それだけに、“レーザーが壁に当たって角度を変えて敵を攻撃する”というギミックは、アイデア的にもビジュアル的にも新鮮この上なく、一瞬で私の心を捉えたのです。

 自機前方についている謎の玉っころ(フォース)から3方向に放たれる、青く細い直線が壁に当たって跳ね返り、画面全体に乱反射する様を初めて見たときの衝撃ったらなかったですね。見た瞬間に

おもしれぇ~、かっこええ~、派手~!!

の3拍子のスタンディングオベーションですよ(笑)。

 おそらく“跳弾現象”をヒントにしたのだと思うのですが、とにかくこの武器を自分の手で発射してみたい、そんな衝動に駆られた武器でしたね。と同時に

反射したレーザーに自機が撃ち抜かれる可能性があるから、現実では難しいだろうな…

とか

なぜレーザーを反射させる壁は、破壊されないのだろうか…?

という、夢を壊すようなツッコミを抱いたのは秘密です(苦笑)。

 まあそんな細かいツッコミなんて軽く吹き飛ばすくらいの、革新的な武器ギミック、そして映像表現だったと思います。

 武器としての有用性も抜群でしたね。乱反射するレーザーがどんどん敵を破壊していくので、パワーアップした実感がとても感じられる武器でした。

▲反射レーザー

 その後リリースされたシューティングゲームは、武器の派手さを追い求めていくことになりますが、個人的にはそれらすべての源流は、この“反射レーザー”であったと感じているくらいですね。

フォースの衝撃

 “反射レーザー”と双璧を成すイノベーションとしてあげられるのが、“フォース”の存在です。自機前部や後部に着脱できる玉っころですね。

 この玉っころの革新的な部分は

  1. 半無敵特性
  2. 前後の2WAYスタイルが選択可能

の2点でしょうか。一つずつ見てみましょう。

1.半無敵特性

 このフォースは、ある程度敵の弾を吸収・無効化できるという、“半無敵特性”をもっています。しかもそれはバリアとは違い、相手の攻撃を受けても劣化することがありません。

 もちろん強力な攻撃(レーザーやエネルギー弾)などは防ぎきれないのですが、それでもこのフォースをうまく使えれば、相手の細かい攻撃から自機を守りつつ、ゲームを先に進めることができるのです。これは斬新なシステムでしたね。

 このプレイヤーに“消耗しない無敵ブロック”を与えるという仕組みは、丸腰がデフォルトであったシューティングゲームの常識を変えることとなり、プレイヤーの

フォースがあれば、次はもう少し先に進めるだろう

というチャレンジ精神を大いに刺激する効果をもたらしたと思います。

 “無敵かつ攻撃能力がある”という点では、『グラディウス』のオプションがすでにそれを確立していましたが、それらはあくまで自機から独立した武器でした。

 しかし『R-TYPE』のフォースは、自機に着脱できることが新しく、切り離せば『グラディウス』的な援護ウェポンと化し、装着すれば強力なレーザーを放ちつつ、相手の攻撃をも防ぐという自由度がありました。

 この“半無敵”であるフォースの特性を活かし、敢えて敵に突っこんでそれをめり込ませて破壊したり、敵弾に自ら当たりに行ってそれを無効化する、といったような、今までに見ないアクションが見られるようになったのも、このゲームの面白いところでしたね。

2. 前後の2WAYスタイルが選択可能

 このフォースは自機の前後に着脱でき、それをプレイヤーが自由自在に操作できます。

 つまり攻防一体兵器であるこのフォースを自在に操ることで、プレイヤーは前後2WAYでの攻撃スタイルが選択できるわけです。

 それによってプレイヤーは状況に応じたさまざまなプレイスタイルをとることが可能となり、ゲーム攻略の自由度が増しました。

▲前後装備を自由に設定できます

 特に後方攻撃を厚めにできるという点が新しく、今までのシューティングゲームにはない革新性がありましたね。

 というのも、それまでのシューティングゲームでは、敵の出現や攻撃は9割がた前方から、というのがお約束でした。イメージ的には9:1といったところでしょうか。

 しかし『R-TYPE』ではこの2WAYシステムにより、それが7:3くらいの比率になったような感じがします。

 それは敵の攻撃パターンの多様化を実現することとなり、様々な表現が可能になりました。4面のボスである“コンバイラ”が、左側(後ろ側)から出現する演出なんて、その最たるものですよね。

▲コンバイラ

波動砲の衝撃

 攻撃スタイルの革新性としてもう一つあげたいのが、“波動砲”という攻撃方法です。

 今では当たり前の攻撃方法となっていますが、これをゲームで初めて採用したのが『R-TYPE』だったと思います…たぶん。

▲威力絶大な“波動砲”

 いわゆる“溜め撃ち”という攻撃方法なのですが、ボタンを押し続けることでエネルギーをチャージする、という操作方法がとても直感的であり、シンプルながらも理にかなった攻撃方法として特筆されるべきイノベーションだと思います。

 当然溜めるほどその威力は増すので、可能な限りボタンを押しっぱなしにしたいところですが、その間はメインウェポンが利用できず、敵がわらわらと登場して自機に襲いかかるというデメリットが生じてしまいます。

 この“強力な攻撃を行うにはリスクが伴う”という点も、ゲームにおける絶妙なトレードオフとなっており、見事な仕組みかつ演出だったと思います。

ハイグロセンスの衝撃

 この作品は、その全体デザインも衝撃的でした。メカとバイオが融合したコンセプトは、ひじょうにグロテスクながらも、とても斬新で新しいデザイン性を提案していたと思います。

 もちろん1面ボスの“ドプケラドプス”を見る限り、映画『エイリアン』の影響を色濃く受けていることは明白なのですが、それを差し引いてもすべてのステージで今までにない、新しいデザインを追求していました。

▲エイリアンの影響色濃いドプケラドプス

 それはハイグロセンスとでもいいましょうか、グロテスクの中にカッコよさや美しさを見出すことに挑戦しているような、制作者サイドの姿勢が見てとれました。

 気味が悪いのは確かなのですが、それを上回る目新しさが、そのデザインには表れていたように思います。

 個人的には2面のボスの“ゴマンダー”がかなり衝撃的で、心臓をモチーフにしたと思われる本体(巣?)の中を、蛇のようなバイオメカ(インスルー)が出入りを繰り返すというグロテスクさ。

▲ハイグロセンスあふれる“ゴマンダー”

 さらに本体から伸びる管は、女性器をイメージしたとおぼしき器官から生えており、特に上部のそれは開閉を繰り返し、弱点であるコアを露出させるという異常性。もう凄まじいですよ。

 余談ですが、これを提案した女性デザイナーが、上司から

おまえ…一回病院行ってこい

と、その精神性を疑われたとか(苦笑)。まあそれくらい“イっちゃってる”表現であったという、武勇伝ですよね。

▲ゴマンダー

巨大戦艦の衝撃

 次なる衝撃は、3面に登場する巨大戦艦(グリーンインフェルノ)です。これにも度肝を抜かれましたね。

 巨大戦艦は3面開始直後からその前頭部が登場し、『宇宙戦艦ヤマト』を思わせる波動砲を噴出させます。このギミックだけでもお祭り状態なのですが(笑)、進んでも進んでもその戦艦の後部が出てきません。

▲グリーンインフェルノの波動砲

 これはこの巨大戦艦自体が実質の3面になっている、という演出だったのです。そしてその巨大戦艦は、3面のボスをも兼ねている。

 このステージ構成にも舌を巻きましたね。巨大戦艦の下に回って攻撃していき、後端にたどり着いたところで上にまわって上部を破壊し、最後にコアを攻撃するというステージ構成。新しいなあと、感心することしきりでしたよ。

▲この巨大戦艦全体がステージとなっています

 そして最後のコアが、男性器そのものというデザイン(苦笑)。2面ボスのゴマンダーからの流れでこうなっているんでしょうね。たしかに

おまえ…一回病院行ってこい

という上司の命令は、正しかったのかもしれません(笑)。

▲グリーンインフェルノ

難易度の衝撃(笑)

 それらの衝撃を見せつけられた私は、“不良の温床”たるゲームセンターにどっぷりと腰を下ろし、ドキドキしながらこの『R-TYPE』をプレイしたわけです。

 他のプレイヤーがプレイしている様をよく見て勉強し、それを自分なりにトレースしながらプレイしたのですが、なかなか難しかったですね。

 やはり鬼門は4面で、緑のツブツブを排出しながら高速で飛んでくる敵を対処しきれずミスをし、丸腰となって復活できずにゲームオーバー、というのが多かったです。

▲このツブツブが苦手で…

 調子が良ければ無事に4面をクリアでき、なんとか5面をクリアしても、6面で動き回るドップのアルゴリズムについていけずに昇天と(苦笑)。

▲この辺の動きはもうお手上げ(苦笑)

 結局7面を拝むことなく、自分の実力と相談して『R-TYPE』から引退することを決めた次第です(笑)。これも衝撃だったなあ(笑)。

PCエンジン版の衝撃

 そんな衝撃あふれる『R-TYPE』は、PCエンジンに家庭用ゲーム機としては初めて移植されました。その移植度の高さにも衝撃を受けましたね。当時は

ゲーセンの『R-TYPE』とまったく変わらん…

といった印象でした。冗談抜きで見分けがつかねえな、と思いましたから(苦笑)。

▲今見ると違いがわかりますけどね…

 PCエンジンはその後数年間、ファミコンやスーパーファミコンを相手にし、ガチンコの勝負を繰り広げることになります。

 そうなりえた大きな要因として、この『R-TYPE』の移植リリースがあったと思われます。この完成度の高い移植により、ハードの高いポテンシャルを消費者に対して存分にアピールできたからこその、PCエンジンの成功だったと思うのです。

 ちなみにアーケード版リリースから33年後、『PCエンジンmini』に収録されていた『R-TYPE』をクリアすることで、一度はあきらめていたこのゲームの攻略に成功した次第です。

 もちろん“任意セーブ”と“リセット”を駆使した、編集プレイでですけどね…。

終わりに

 以上、『R-TYPE』についての思い出となります。個人的にはタイトルの革新性以上に、私に“ゲームセンター通い”という習慣を植えつけた点で、大きな影響を与えたタイトルだったと思います。

 おかげで私は高校の3年間、帰宅途中にゲーセンに寄り道して帰るという行動が染みついてしまいました。

 そして帰宅後にはファミコンで遊び、週末は早売りのジャンプをむさぼり読むというライフスタイルを続け、無事に大学受験に失敗するのでした(苦笑)。

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