やりました。F1GP第5戦、70周年記念グランプリで、レッドブル・ホンダがやっと勝ちました。フェルスタッペンが見事王者・メルセデスから勝利です。
今回のサーキットは、前回と同じくイギリスのシルバーストンサーキット。ただしタイヤのコンパウンド(柔らかさ)が先週より一段階柔らかくなっています。柔らかいということはそれだけタイヤの耐久力が低いということなので、結果タイヤ交換回数が増えることが予想されます。このあたりの戦略性が先週と違う点でしょうか。
また、気温が今週の方が高く、余計にタイヤを摩耗させる可能性が高いです。つまりは速く走りながらも、タイヤ消耗を少なくして走るという、二律背反したようなテクニックが必要になるということです。
そんな条件下でしたが、レース前はやはりマシンの優位差で、メルセデスが圧倒的に優勝候補でした。予選ではレーシング・ポイントも好調で、レッドブル・ホンダはこのレーシング・ポイントからどう3位を守るのか、というところに焦点が集まっていたくらいです。
ところがレッドブルは決勝レースを見据え、着々と予備工作を打っていたんですね。まずはスタートのタイヤをハードタイヤ(一番耐久力のあるタイヤ)にするという、他チームとは逆張りのリバースストラテジーができる権利を得て、その他交換用タイヤ(ミディアム、ソフト)も各1本ずつ新品を残すことに成功しました。
何を言っているかというと、メルセデスが2回タイヤ交換する予想に対抗して、耐久力のあるタイヤでタイヤ交換を1回にしてタイムを稼ぐというカードを手にしたんですね。あとタイヤ交換をしても、必ず新品のタイヤを使って、レースペースと耐久性を担保しておいたんです。
それくらい今回のレースはタイヤに厳しいと予想していたわけです。逆にいえば、そこにつけいるチャンスがあるとにらみ、出来る限りの用意をして、戦略を状況によってフレキシブルに使い分けられるような準備をしていたということなんですね。
今回はそれが見事にハマったわけです。ハマったというよりは、予想以上にメルセデスのタイヤ耐久性が悪く、逆にレッドブルのタイヤ耐久性が素晴らしかったという結果でした。
スタート後1-2状態を維持していたメルセデスでしたが、そのタイヤはすぐに摩耗しはじめ、レースペースを上げられない状態になりました。しかし3位で追走するフェルスタッペンのタイヤはキレイな状態を維持。メルセデスの2台にプレッシャーをかけます。
メルセデスはたまらず2台ともタイヤを交換。その間にフェルスタッペンはトップをとり、だんだんと差を縮められますが、ある時点でまた引き離しにかかることに成功。これはメルセデスが交換したタイヤすらも摩耗が始まり、フェルスタッペンのペースについて行けてないことを表しています。
裏を返せば、レッドブルのクルマがタイヤに優しいことと、フェルスタッペンのタイヤマネジメントが驚異的であることを指し示しています。これによってレッドブルは俄然有利になりました。とれる戦略パターンがより多くなり、相手の出方に合わせてそれを塞ぐだけで勝ちにつなげられるからです。
その後フェルスタッペンはタイヤ交換でメルセデスのボッタスに一時トップを奪われますが、すぐにパスしてトップを取り返します。このあたりの決め強さというか、勝負強さが彼の強みですね。これができる人とできない人では大きく差があるし、勝利を手繰り寄せる差になると思います。
そしてあとはしっかりと2位以下とのマージンをコントロールし、危なげなくフィニッシュラインを切り、今シーズン初勝利をあげることに成功しました。今回の勝因をまとめると
- タイヤの摩耗対策で、新品タイヤを温存していた
- スタート時のタイヤを耐久力の高いタイヤで設定した
- タイヤマネジメントをしながら速く走るという、矛盾した課題を達成した
- 一時奪われたトップを、一発で取り返した
- その結果、戦略的なコントロールを完全に奪った
といった感じですかね。とにかくうまくいきました。
でもこれくらいの用意周到さと自然条件等がハマらないと、なかなかメルセデスには勝てないということです。それくらい厄介な相手であることには変わりないということで。
次戦は来週、スペインGPです。ここは抜けないサーキットなので、予選で得るスタートグリッドがポイントです。テストサーキットとして利用されているサーキットなので、各チームともデータはたくさんあるのですが、夏の開催は初めてなので、気温条件がどう影響してくるかは未知数ですね。でも暑いと今回同様、レッドブルに多少の勝機が見えてくるので、そこに期待ですね。
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