コブラを被ったロウ超人。阪神タイガース・掛布の一撃という外的要因によって悲惨な末路をたどったニヒルな彼の、二つの大きな謎とは?
登場の背景
彼は2回目の超人オリンピックにおいて初登場しました。
超人オリンピックのファイナリストは、予選時からその存在を露出しているキャラと、決勝トーナメントで突然登場するキャラに分かれており、彼は後者のパターンですね。
もちろん事前に読者投稿超人発表ページで1コマ露出されていましたが、やはり私にとっては

あいつもファイナリストなのか!
と、突然現れたように感じた超人の一人でした。
それだけに彼に関する予備知識は皆無であり、どんな超人なのかまったく想像がつかなかった超人でもあります。
しかも彼の登場の仕方はかなり地味です。トーナメント参加超人の列の後方で、ひっそりと影のようにユラりと現れたので、不気味さの演出は満点ながらも

読者アピールの欲は皆無だな
と、我々にほのかに感じさせる超人でしたね(笑)。
ただ彼の応援団が、その頭にヘビを載せて応援している様子や、その団員のうちの一人の頭には“ヘビ”という文字がダイレクトに載っている様を見て

…ひょっとしてイロモノ枠か…!?
という怪しい予感が、私のすぐ後ろまで押し迫っていたのも事実でした(笑)。でも今でも好きだなあ、あの“ヘビ”のおっさん(笑)。
そして彼がチエの輪マンvsキューブマンの試合中に

ブレンバスターだ!

波のり固めだ!
と叫んではそれが裏切られ、スグルと一緒になってズッコケている様はとてもコミカルであり、それは

…やはりイロモノ枠か…!?
というちびっ子たちの予感を、確信に変えた瞬間でもありました(苦笑)。
フォルム
そのフォルムは超人としては珍しく、枝切れのような細身です。コスチュームも小汚いシャツとハーフパンツであり、キン肉マンのつぎはぎパンツと同類の貧乏臭さが漂います。
そんなすでに“イケていない臭”を存分に漂わせる彼を、さらそのセンターに押しやっているのが、ニヒルで暗鬱とした表情です。
初登時から彼、顔にず~っと影がつきまくりですからね。目、額、鼻筋と

どんだけ彫りが深いんだよ!
とツッコまずにはいられない表情をしており、それが彼の存在の暗さを助長しています。
それはまさに、ゆで先生の連載前の読切作品や、連載初期にたまに出てくる暗~い男性キャラの系統を色濃く引き継いだような風貌で、とにかく“ひっそりと不気味”という表現がよく当てはまっていました(苦笑)。

そんなうだつの上がらないビジュアルの中で、唯一目立っているのが、頭の上に抱くキングコブラですね。それこそその名前通り、彼を象徴する相棒と言ってよいでしょう。
ただ当初はこれが“生きているヘビ”だとは思っていませんでした。

すいぶんと大きな被り物だな…
程度にしか認識していませんでしたね。だって相棒、1ミリも動かないから…(苦笑)。
それだけに、ロウで固めたスグルに対して初めて「シャー」と口を開けたときは

こわっ!
と思いましたよ。その気持ちは解説のやまのて私鉄さんが

こりゃこわいですよ
と、完璧に代弁してくれましたけどね(笑)。
このように、彼はその不気味さを前面に押し出したがために、人気超人になれる要素は残念ながら少なかったと思われます。
それだけに

読者人気なんて出なくて上等!
という読者に媚びない彼のスタイルは、ある意味己を貫く男気あふれる生き様といえるでしょうか(笑)。
ファイトスタイルと嗜好
そのファイトスタイルはかなり独特です。というより、ゆで先生でないとこの展開は思いつかないのではないかと思うくらい、彼の攻撃は特殊だといえるでしょう。
皆さんご存知の通り、彼はロウ人間で、自身の汗と化したロウを相手に浴びせ固めることでその自由を奪うことが可能です。
この“ロウ人間”という個性が、看板である“キングコブラ”とまっっったく結びつかないため、その意外すぎる組み合わせに、全国のちびっ子が一瞬

( ゚д゚) ポカーン
となったわけです(笑)。
この前衛性はですね、なかなか出てくるもんじゃないですよ。『キン肉マン』という作品では、さまざまな不条理表現がありますが(笑)、彼の不条理さもかなりのものです。
そう考えると、彼は世にはびこる不条理を、身を挺して我々に教えてくれた存在だったとも言えそうです(苦笑)。
しかし…ゆで先生はなぜ彼を“ロウ超人”に据えたのでしょうか。
考えられる理由としては、彼の外見がロウソクのように細っこいという、イメージの連動でしょうか。

こいつ…コブラ取ったらローソクみたいやな
みたいな(笑)。
それともこれを執筆している頃に、東京タワーの『蝋人形館』にでも行って、何かヒントを得たのかもしれませんね(笑)。

また、相手を仕留めるフィニッシュホールドも独特です。彼のトドメは、『ロウ固め』で動けなくなった相手の頭を、相棒のコブラがパクつくというものでした。
とても直感的なフィニッシュなのですが、その技に彼本人のフィジカルはまるで必要ないため、

彼自身の強みはロウの体だけなのか…?
といった素朴な疑問が、ちびっ子の脳裏をよぎったことは否めません(苦笑)。
そしてフィニッシュに至る儀式として、謎の舞を踊ったり、

きたない頭ほどいいダシがでてうまいのだ
と、読者をドン引きさせる味覚嗜好をカミングアウトするなど、外見の不気味さに加えて内面の気持ち悪さと思考の異常さを、これでもかとばかりに披露しています。
これは…人気でないですよ、申し訳ないけど(苦笑)。
相棒携帯超人
彼の大きな個性として、頭上に載せたコブラを語らないわけにはいかないでしょう。
まあカレーを載せたカレクック、ウ〇コを載せたベンキマンもいるので、今さらね、誰が何を頭に載せようと驚きはしませんよ…とはならないか(笑)。
やっぱりですね、どうしても想像しちゃうんですよ、こうなるまでの歴史や、彼らの日常生活を。
- 出会いはいつだったのか
- なぜ被っちゃたのか(笑)
- お互いに何と呼び合っているのか
- 寝るときはコブラが枕代わりになっているのか
- それとも家では別行動なのか
こんな感じでですね、興味が尽きないわけですよ(笑)。

また、個人的には“トグロを巻いた状態”で載せる形でなくてよかったな、とか思ったりして。それだとコブラがウ〇コに見えちゃって、ベンキマンとまる被りしてしまいますからね(笑)。
でももしそんな事態になっていたとしたら

なんか、なんかウ〇コ超人が二人も!
と、それはそれでちびっ子界隈ではセンセーショナルだったかもしれません(苦笑)。
そして結果的に彼はそのベンキマンにトドメを刺されたのだから、何かそこに因縁めいたものも感じてしまいますね(笑)。
掛布前、掛布後
彼の敗因が、ラッキーゾーンに飛び込む掛布のホームランボールであったことは、皆さまご承知の通りです。このあまりに荒唐無稽な試合展開には、大笑いさせていただいた記憶があります。
これ、試合前にスグルも掛布の一発を食らっているという事実があるので、それが伏線となってよりそのくだらなさが引き立っているんですよね。

今度はキン肉マンじゃなくて、おまえかよ!
みたいな(笑)。このあたりの構成の見事さでも、ゆで先生の笑いに対する技術の高さをうかがい知ることができますよね。
そしてこの一発を境に、彼は人が変わったかのようにキャラクターを変化させます。
それまではユラリとして陰のある、スローで不気味なテンポを持っていたキャラクターだったのに、頭のコブラが外れてからは、目を剥いてずっと叫んでいる慌ただしいキャラクターに、180度変わってしまうのです。
その姿はあまりにも以前とのギャップがありすぎて、私はそれを

掛布前、掛布後
と密かに呼んでいました(笑)。
コブラが掛布の一撃を受けた後の彼は、
- 激痛にのたうち回りながら目を剥く
- ロープに擦りつけられながら目を剥く
- 摩擦熱で頭に火が点いて目を剥く
- 消火方法を探しまわって目を剥く
と、もう“目を剥く”のオンパレードです(笑)。
その姿は完全にスラップスティックなギャグマンガのキャラクターそのものであり、表情と動きだけで爆笑を誘うキャラクターと化していたんですね。

このニヒルキャラから大騒ぎキャラへの振り幅の広さは、『キン肉マン』という作品が、まだまだ“バカバカしさ”を前面に押し出していた時代の、愛すべき作品性と言えるのではないでしょうか(笑)。
キングコブラの謎
最後になりますが、私の中では彼にまつわる謎が二つほどあります。それは
- 本体とコブラはどこまで一体化していたのか
- 彼はどうやって復活したのか
といった謎です。ひとつずつ見ていきましょう。
本体とコブラはどこまで一体化していたのか
彼と頭のコブラは、それぞれが独立した生命体だと思いがちです。そう、ホークマンに対するヘルバードのような関係です。
しかし彼の言動を見ていると、

なんか彼らは一体化しとらん?
と感じる時があります。
ひとつは彼の味覚です。例の

きたない頭ほどいいダシがでてうまいのだ
という発言は、コブラが食す獲物の味が、キングコブラ本体にも共有されていることを予想させます。
そしてもう一つは彼の痛覚です。前述しましたが、頭のコブラが掛布の一撃を受けた際の、彼の痛がり方は尋常ではありません。

いて~~~~~
ですからね(笑)。あれを見たときは

いやいや君たち、別々の生物だよね?
と、誰しもがツッコんだと思うんですよ(苦笑)。
でもあれだけ大げさな反応を見る限り、彼らは味覚のみならず痛覚をも共有していると言わざるを得ません。それどころか視覚、嗅覚、聴覚といった感覚すべてを共有している可能性すらあるのです。
このあたり、それが完全に独立していたホークマンとは大きな違いがあると言えそうです。キングコブラの方が、相棒とより濃度の高い一心同体感があるんですよ。
ひょっとしたら彼は、エヴァンゲリオンで言うところの“LCL”を先取りしていた超人なのかもしれません(笑)。
そしてこれを見た庵野監督が

…コレだっ…!!
と閃いた事実があったとしたら、『新世紀エヴァンゲリオン』という作品は

掛布後
にカテゴライズされる作品であると言えるでしょうか(笑)。
そして“掛布”という時代的境界線を、庵野監督が“セカンドインパクト”という物語の境界線に置き換えて流用したことは、火を見るより明らかだと思われます…って、そんなわけねーだろ(笑)。

彼はどうやって復活したのか
彼は甲子園球場でのキン肉マンvsネメシス戦において、チエの輪マンやキューブマンといった“超人オリンピック ラッキーゾーン組(笑)”と一緒に会場に駆けつけ、

オレとの闘いを忘れるなーっ!
と、スグルに対して力強いエールを送っています。
彼との闘いが、はたして忘れてはならないくらいスグルの糧となっていたかどうかは置いといて(笑)、実はこの出現によりキングコブラ最大の謎が発生するんですよ。
というのも、彼は頭が燃えた直後に、ベンキマンの『恐怖のベンキ流し』にて便器空間に落ち込んでいます。
その他、タイルマンとカニベースも同様にそこに落ち込むわけですが、ベンキマンがキン肉マンに敗北することで、彼ら二人はそこからまんまと脱出に成功するわけです。
しかし…キングコブラだけは…彼だけは、目を皿のようにして誌面を見渡しても、脱出が確認できないんですよ(笑)。
それだけに彼がスグルの応援に甲子園に駆けつけたことは、実はけっこうなミステリーでして(苦笑)。
もしキングコブラが何らかの手を使って自力で脱出したのだとしたら、その過程と方法はいったい何だったのでしょうか。
ひょっとしたらベンキマンの便器の中は、過去に流された超人たちを収容する収容所があって、そこには流された超人たちのコミュニティがあるのかもしれません。
それこそ収容所を牛耳るボス、参謀、ボディーガード、情報屋、調達屋、チンピラといった、一癖も二癖もある流され超人がわんさかといて、キングコブラは波瀾の便器内収容所生活を強いられるわけですよ。
そもそも彼が着ていた服も囚人服テイストだったので、場になじむことこの上ありません(苦笑)。
しかしそこでキングコブラがロウを使った脱走計画を立てて、その計画にのった仲間たちとの、結束、裏切り、信頼、謀略といった、波瀾に満ちた脱出劇を繰り広げると…あれ? どこかで聞いたことある話だな(笑)?

そしてそんな苦難を乗り越え、見事脱出が成就したあとの

オレとの闘いを忘れるなーっ!
だったとしたら、かなり胸熱ですよね(笑)。
そんなプリズンをブレイクするようなスピンオフ作品(笑)を、この“ベンキ収容所からの脱出”だけで作れるのではないか、なんて夢見てしまいました。
ゆで先生、いかがでしょうか(笑)?
おわりに
以上、キングコブラについての考察でした。
もし彼が本当に迷宮脱出のスペシャリストだったとすると、『キン肉星王位争奪編』における“飛車角の迷宮”において、キン肉マンチームを颯爽と救ってほしかったですね(笑)。
そしてその姿をコンピューター越しに見ていたフェニックスに

…なんだ、あいつは…!!
なんて、幼少期のスグルに嫉妬して血が出るほど指を噛んだくらいの煮え湯を飲ませていたら、痛快なことこの上ないです(笑)。
それでもし彼の活躍で王位争奪戦の戦局が一変していたとしたら、それこそ

キングコブラ前、キングコブラ後
なんていう境界線が、シリーズを俯瞰した時にできていたかもしれません…なんちゃって(笑)。ではまた。
※今回はペンキマンさん、インドのとらねこさん、上野さん、アクメ将軍さん、スコティッシュさんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。
【リクエストはこちらから】


コメント
リクエストにお応えいただき誠にありがとうございます。
アニメだとキン肉マンとキングコブラの戦いは、
病気の少年とキン肉マンとの約束
を演出するためか、なかなかドラマチックになっていました。
原作だとずいぶん雰囲気違うんですね?
ところで彼はカレクックと同じインドの超人かつ、超人オリンピックで最初にキン肉マンと戦ったことが共通していますが。
これは偶然、ですかね?
頭に何か乗せるのがはやりでしょうか。
ペンキマンさん、こんにちは。
私は逆にアニメ版の方をあまり知らなくて、そんな演出がされていたんですね。原作があまりにもバカバカしすぎるから、手を入れたのでしょうか(苦笑)。
カレクックとの共通点はたしかに多いですね。ひょっとしたらゆで先生に何かお考えがあったのかもしれませんね。