第55回 カレクック

オレ流超人批評
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世界三大残虐超人の一角! しかしその残虐ファイトの裏には、もの哀しき過去があった!?
出身 インド
超人強度 60万パワー
必殺技 ガラムマサラサミング
チャルカスティング
ガンジスブリーカー
主な戦績 キン肉マン●
マリキータマン●

キン肉マンの記念すべきデビュー相手

 彼は第一回超人オリンピックで初登場し、キン肉マンの初戦の相手を務めた超人です。

 その後長らく続くキン肉マンの格闘人生において、初の公式戦が実はこの試合であり、いうならば彼はキン肉マンのデビュー戦の相手だともいえます。

 ここからキン肉マンの華々しい活躍が繰り広げられることを考えると、その原点たる試合にカレクックがかかわったことは、彼にとってはなかなか名誉なことだったのではないでしょうか。

 たとえその結果が敵前逃亡の試合放棄だったとしてもです(苦笑)。

 ちなみに“カレクック”という名前が、“カレーを作るコックさん”を意味しているのかは不明です。ただカレーイメージが強すぎて、“カレークック”と名前を間違えて覚えていた方は多いのではないでしょうか。

インド大使館からクレームが来そうなデザイン

 そのいで立ちはかなりの直球です。マジカルバナナ(古いな…)よろしく

インドといったらカレー♪

インドといったら修行僧♪

インドといったら褐色♪

といったような、直感で思いつくであろうインドのアイコンの集合体が彼です(笑)。そしてそれに追い打ちをかけるように、お腹にはインドの“印”の文字のプリントまであしらってあります。

 それは日本人はちょんまげ、もしくはカメラを首から下げた黒縁メガネ出っ歯、という西洋の表現に近しく、インド大使館の方が見たら

インドはそんなに単純じゃない!!

と、クレームを出されそうな勢いの風貌ともいえるでしょう。

 そんな中でも、頭の上に搭載されたカレーライスはさすがに無理があり、かなりの前衛性を感じさせます。

 しかしながら、この前衛さこそがカレクックの強烈なアイデンティティとなり、カレクックという唯一無二のキャラクターを確立した表現だったともいえます。

 そう考えると、このデザインを思いついた応募者はなかなかの芸術的感性を秘めていたのかもしれません。ひょっとしたら今では高名な芸術家、もしくはデザイナーになっているかもしれませんね(笑)。

 ちなみにこの“カレーの搭載”というアイデアは、その後“頭載格闘術マーラレスリング”という設定に発展し、カレクックの過去をひも解く上での重要なキーワードとなるまでに出世したアイデアとなりました。

格闘ギャグ時代の迷勝負

 その戦闘スタイルは、残念ながら連載時では確認ができませんでした。というのも、当時の『キン肉マン』はまだまだギャグを中心とした、格闘ギャグマンガスタイルだったからです。

 ミートくんの調査により、彼がラーメンマンやブロッケンマンに匹敵する残虐超人であるという情報は公開されたのですが、いかんせん試合中でその残虐性が発揮されたのは、傷ついたスグルの額にカレールーをすりこむ攻撃くらいです(笑)。

 それ以外は格闘理論も技術も関係のない、ドタバタとした展開に終始しています。それでもこの試合には大笑いをさせていただきました。

 当時は小学5年生だったのですが、面白くてすり切れるほどコミックスを読み返した記憶がありますね(笑)。

 そういうわけで、個人的にこの試合は名勝負ならぬ迷勝負だと思っていまして、とても印象深いんですよ。

 やはりポイントは、カレクックのアイデンティティたる頭のカレーライスです。これがちょっとしたアクシデントで頭から落下し、粉々になってしまうところから、この試合の迷走が始まりました。

 もうね、割れた皿をセロテープで修復しているだけで、小学生的にはどストライクですよ(笑)。結局カレーは使い物にならなくなり、カレクックは搭載に足る代用品をあれこれ試すわけです。

 日の丸弁当、ラーメン、森永ココア、鏡餅と次々に試し、いずれもしっくりしないところに、真弓大王自身が収まるという強引仰天ギャグ。それを

コラ、コラ~~~!!

と突っこむカレクック。完全にコントの世界ですよ(笑)。

 なぜ彼が試合そっちのけで頭に搭載すべき物を探しているのか、この時点で理由はまったく記されていません。ただ子ども心にも

カレクックは、頭に何も載ってないと生きられないんだな…

という、彼の不思議な体質を理解し始めているんですよ。ある意味すごい説得力というか(笑)。

 そして代用品に牛丼を試したときに、この試合を迷試合たらしめた事件が勃発するわけです。それが“牛丼おじさんとの確執”ですね。

牛丼おじさんとの確執

 カレクックは牛丼をおじさん(ドン・ピカデリカオーネ)から奪い取ると、予想外の抵抗を受けます。抵抗といってもそれは

牛丼おじさん
牛丼おじさん

わたしの牛丼をかえしなさい

と、真顔で苦情を言われるだけなのですが、牛丼おじさんの抜けつつもどこか凛々しい顔立ち、謎のウルトラマンコスプレ、そして苦情のしつこさ加減のコンボがあまりにもおかしくて、腹筋が崩壊した記憶があります(笑)。

 この時点でカレクックは、スグル以外にも牛丼おじさんを相手にするという、2対1のハンディキャップマッチを強いられたともいえます。そしてこの流れはカレクックにとって

  • イライラすることでメンタルを不安定にさせられた
  • 相手の好物を搭載したことで、逆に相手をパワーアップさせてしまった

という点で不利な展開となり、自身の敗北につながる大きなターニングポイントとなってしまったのです。

 そう考えると、牛丼おじさんはスグルの公式戦初勝利に大きく貢献し、かつそれを迷試合たらしめた人物、といってもいいかもしれませんね(苦笑)。

第二回オリンピックでは惜しくも予選落ち

 その後彼は、ちょこちょこと出演はするのですが、ファイトをすることはありませんでした。いわゆる一見いちげん超人の一人となっていたわけです。

 第二回超人オリンピックでも、彼は会場の国立競技場には来ていたので、予選には参加したようですが、残念ながら決勝トーナメントには残れなかったようです。

 おそらく第二次予選の『火炎地獄50メートル力泳』において、頭にカレーライスを載せたまま泳ぐことができずに棄権したのかもしれません。

 もしくは最終予選の『50㎞耐久ローラーゲーム』において、またもや頭のカレーライスを落としてしまい、ローラーゲームどころではなくなってしまった、といったところでしょうか。

 その後も彼は雌伏の期間を過ごすことになりますが、その次に目立って登場したのは、21世紀になって連載が開始された『完璧無量大数軍パーフェクト・ラージナンバーズ編』においてです。

 彼は勇敢にも侵略者たるストロング・ザ・武道にニールキックで立ち向かっていきましたが、逆に人間化されるという返り討ちにあっています。久々の戦闘シーンだっただけに、少し残念でしたね。

 しかも人間化した彼は、浅黒く口ひげを生やしたダンディなおじさんでした。超人たる彼にとって、これは屈辱の出来事だったと思いますね。

 ただ立ち向かった相手が、実は降下神であり超人閻魔であり、完璧超人の真の首領たるザ・マンだったことを考えれば、命が助かっただけ幸運だったのかもしれません。

 余談ですが、このときストロング・ザ・武道に立ち向かったのがカレクックとベンキマンであり、二人のアイデンティティであるカレーとウンチがマットに転がるという描写がありました。

 これをゆで先生から投げかけられた

ゆで先生
ゆで先生

カレー味のウンチと、ウンチ味のカレー、どっちがいい?

という、小学生級の“究極の選択”のように感じたのですが、私の考えすぎでしょうか(苦笑)。

オメガの刺客との死闘

 一見超人かつ人間化という辱めを受けた彼でしたが、『オメガ・ケンタウリの六鎗客編』において、その本当の戦闘能力を存分に披露する場を与えられます。

 すでに“ヘッポコ正義超人”と認識されていた彼は、この試合で今までのイメージをガラッと覆すファイトを展開します。

 そのファイトスタイルはカレースパイスとヨガをうまく取り込んだ、なんともインド風味あふれるファイトスタイルでした。

 それは卑劣なファイトをも是とした、本来彼の代名詞だった“残虐ファイト”だったわけです。このあたりの表現には、40年もの歳月をかけて回収された伏線とでもいうべき腹落ち感があり、何とも言えない美しさがあったと思います。

 さらには“友情パワーの解析”がしたいマリキータマンに対し、意地でもそれを発動させることを拒み、怒りと憤怒を源泉とした“残虐ファイト”のみで対峙した男気に彼が本来持つ矜持を感じることができ、キャラクターとしての株をあげたと思います。

 結果として、彼は惜しくもマリキータマンに敗北をしてしまいます。

 しかし死に際で交わしたスグルとの会話では、格闘ロードの始点を共に過ごした二人にしかわからないような、なんとも情緒的な雰囲気を醸し出していたと思いますね。

隠された哀しき過去

 そしてマリキータマン戦で彼が固執した残虐外道ファイトの原点ついては、読切作品において詳述され、カレクックというキャラクターを見事に補完しています。

 彼の極めんとした“頭載格闘術マーラレスリング”において、“憤怒”という感情は禁忌タブーでした。

 しかしながら彼は人助けとほのかな恋心のためにその禁を破って憤怒し、さらには脳天が痺れる怒りの象徴たるカレーを頭に搭載することで、不本意にも残虐サイドに堕ちていってしまったわけです。

 そんな過去のいきさつは、マリキータマン戦における彼の行動に、とても根深く関連していたように感じます。

 彼が残虐ファイトに固執したのは、“友情パワーを隠し通す”という理由もあったかもしれませんが、一度レールを踏み外して堕ちた世界を追求することでしか自分の人生を肯定できず、その存在価値を保てなかったからではないでしょうか。

おわりに

 そう考えると、彼は40年という連載期間を経て、

青雲の志 ⇒ 暗黒への転落 ⇒ 戦友キン肉マンとの邂逅 ⇒ 戦友キン肉マンへの恩返し

というキャラクターの起承転結を見事に完結させた超人といえるでしょう。

 そしてそれはキャラとしての完成形に到達したともいえ、数多くいる一見超人の希望の光になったのではないでしょうか。

※今回はアノアロの杖は僕のものだろうさん、牛丼一筋30歳さん、上野さん、kajiyamaさん、雨野カフェテラスさんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。

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