第29回 ボルトマン

オレ流超人批評
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悪魔種子のド迫力超人! 一人オール電化システムのウラに隠れる特性矛盾とはいったい!?
出身 ジャマイカ
超人強度 1200万パワー
必殺技 テスラコイル
メガヘルツ・テンペスト
ファタールスクエア
主な戦績 Bエボリューションズ○
(ザ・デモリッションズ)
坊っちゃんズ●
(ザ・デモリッションズ)

印象薄き悪魔種子最後の超人

 ボルトマンは『キン肉マンⅡ世』の『 悪魔種子デーモンシード編 』で登場した悪魔超人です。

 6人いる悪魔種子の中、最後に登場したのが再生したアシュラマンであることを考えると、純粋な悪魔種子としてはトリの超人といってもいいでしょう。

 この悪魔種子デーモンシード編は前作『キン肉マン』の『七人の悪魔超人編』と『黄金のマスク編』を意識したシリーズであり、前作のリメイクといった意味合いも多分に含んだシリーズでした。

 ところが個性豊かであった前作の悪魔超人、悪魔騎士とは違い、悪魔種子は終わってみればアシュラマンの一人勝ちといってもいいくらい、個々の印象は薄いといわざるを得ません。

 特に前半に登場したコンステレーション、ゲッパーランド、メルトダウン、タトゥーマンの4人は小粒の域をでていなく、ゆで先生としてもこの辺で大物の悪魔種子を登場させたかったのでしょう。

 バッファローマンに通じるような、いわゆる“問答無用のド迫力超人”としてボルトマンを登場させたのではないかと思います。

その外見と能力

 とにかくその外見は規格外の大きさです。広い肩幅、太い腕、発達しまくった大胸筋、そしてビッグブーツ。

 その体躯は、同じくド迫力超人の範疇はんちゅうに入る対戦相手のスカーフェイスよりも2まわり程も大きいです。

 レゲエスタイルのドレッドヘアや、破れたボロキレのようなコスチュームは好みが別れるところですが、とにかくデカい、パワフル、ヤバそうという雰囲気を出すことには成功していたと思います。

 股間のファウルカップも違った意味でヤバそうですが(笑)。

 そんな中で、一番彼を象徴するアイテムといえば、両肩から伸びた“テスラコイル”でしょう。彼の最大の個性である“電気を操る”という能力の源になるものです。

 ちなみに“ジェネラル・ストーン”でパワーアップする前の彼の両肩には、なんとただの電球がついていました。この分かり易すぎる“使用前 → 使用後”描写には、腹を抱えて笑わせてもらいましたね(笑)。ゆで先生のこういった表現が大好きです。

 ところでこの“電気を操る”という能力は、過去に誰かが持っていそうなものですが、実は『キン肉マン』史上では初めての超人なんですね。けっこう意外な感じです。

 彼は初戦、その巨躯とエレクトリックパワーで、スカーフェイス&ケビンマスクのブラッド・エボリューションズをさんざんに苦しめます。

 アイドル超人軍のツートップであった彼ら2人を相手にしてもまったく引けをとらず、彼らのツープラトンである『戦術ストラテジーシリーズ』をいくらくらってもケロッとしているところに、彼のタフネスさを感じずにはいられません。

 ちなみに『戦術ストラテジー』という表現は、どうも『ロビン戦法』とかぶるところがあって、こちらもロビンマスクとケビンマスクが親子なんだなあということを感じずにはいられませんでした(笑)。

 そして彼の試合ぶりを見るにつけて、彼が巨漢の割には身が軽いというギャップを目の当たりにします。

 バック転からのキック、ヘッドスプリングからの起き上がり、シャイニング・ウィザード、ローリング・ソバット、フランケンシュタイナーと、軽々と飛んだり跳ねたりしています。

 ゆで先生がなぜ彼にこういう軽業を授けたのかはわかりませんが、これらの技がはたして彼の個性のプラスになっているかと考えると、私は失敗だったかなあと思っています。

 たしかにギャップを利用して魅力が増す場合もありますが、彼の個性はどう考えてもその圧倒的パワーだと思うので、こういった軽業が逆に彼の持ち味を殺してしまったような印象を受けるんですね。

 読み手にとっても彼の外形と動きに対しての納得いく紐付けができないというか、散漫な印象を受けるだけだと思うんです。

 ですから単純に体当たり、ブチかまし、投げっぱなしボムといったような技を多くし、その中にキラリと光る小技をひとつ、織り交ぜるくらいのほうがよかったのではと感じます。

 また、ドレッドヘアを使った小物作りにもちょっと抵抗がありますね。

なんでドレッドヘアを引っこ抜いて息を吹きかかると、電球になったり電子レンジのフタになったりするんじゃ

という疑問です。そのガラス職人のような描写はちょっと“何でもあり”すぎで、技に対する説得力に欠けます。

 この作品における荒唐無稽な表現は、過去の例で折込済みではあるのですが、それに至る過程にもう少し説得力がほしいですね。

 それがウソ臭い物理化学理論でもいいんですよ。なんかね、ガラスの破片からベルを作る“ロビンパワー”くらいの説得力のなさなんです(笑)。

フェイバリット矛盾を生み出した超人電子レンジ

 さらに苦言を呈すと、彼のフェイバリットである『超人電子レンジ』ですが、これもちょっと微妙なんですね。

 いや、超人が電子レンジでチンされちゃう発想はとてもおもしろいと思うのですが、この技によってボルトマンの特性に矛盾が生じてしまうんですね。

 彼の個性は先ほど書いた通り、圧倒的パワーと両肩から発生するテスラコイル=エレクトリックパワーだと思うんですよ。簡単にいうと“電気ビリビリ攻撃”ですね。

 これは電気の特性から、金属を身につけていると感電しやすいという表現につながり、結果ケビンのヨロイに焦点が向けられたストーリー展開になるわけです。

 しかしもう一つの個性である『超人電子レンジ』は、その金属ヨロイにマイクロ波が跳ね返されて、ボルトマン自身がダメージを受ける弱点となってしまったわけです。

必殺技 テスラコイル 超人電子レンジ
金属を介すると…   ○有利 ×不利

 つまり同一超人のフェイバリットなのに、“金属”という物質を介しただけで、こんな矛盾が発生してしまうのは、超人のフェイバリットの完成度としてはかなりお粗末といわざるをえません。

 しかもかたや電気、かたやマイクロ波と、似て非なるものが同居しているのも、彼の個性をわかりづらくしている結果になってしまいました。

 どうせだったらわかりやすい“電気”押しで電気技のレパートリーを増やした方が、両肩のテスラコイルが彼の代名詞として、それこそバッファローマンのロングホーンのように定着したんじゃないかなあと、ちょっと惜しい気がします。

おわりに

 以上、パッとしない悪魔種子の最後の砦として期待のかかった彼ですが、以上の点をかんがみるに、もう一歩といった感じですね。

 花開くスペックは持っていたのですが、残念ながら開いた花は『NIKU ⇒ LAPニクラップ』という、キン肉万太郎&ケビンマスクの強烈ツープラトンでした。

 『キン肉マンⅡ世』史上でも、3本の指に入るほどの衝撃シーンの犠牲者として、彼は認知されてしまうんでしょうかねえ。

※今回はHAYAKAWAさんからリクエストをいただきました。ありがとうございました。

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