コロナウイルス感染予防を目的とした緊急事態宣言において、一気にテレワークという働き方が日本中で進みました。東京オリンピック・パラリンピック期間における混雑緩和を目指したテレワーク推奨は、東京都を中心として昨年来から啓蒙活動をされていましたが、予想外のコロナショックにより、強引に推し進められることになりました。
ぶっちゃけテレワークなんて日本じゃ流行らないよ、なんて気持ちもありました。そんなことができるのは、インフラ整備に潤沢な予算を割ける大企業だけなんじゃないか、なんてうがった見方をしていたのも事実で、コロナショックが仮に起きなくて、順当にオリパラが開催されたとしても、テレワークを率先して行う企業なんて数えるほどしかなかったのではないかと思います。
そんな認識だったにもかかわらず、世の中の状況がそれを許さなくなり、私の会社でも時差出勤やWeb会議、在宅ワークという、いわゆる“働き方改革”のど真ん中を実践していくことになりました。今回は一通りそれらを体験した雑感を述べたいと思います。
なお、以下いくつかのサービスが出てきますが、私も知らないシステムや機能がありますので、無知な部分を晒してしまうかもしれないことについてはご愛敬とご理解ください(苦笑)。
Web会議
Web会議で一番面倒なのは、SkypeだろうがChatworkだろうが、コミュニケーションを取りたい相手側にアプリのインストールをさせて、設定までしておかなければならないところです。
特に相手側のITリテラシーが低いと、このスタート位置に立つまでに時間がかかることが多く、それをやるくらいだったらもうメールと電話でいいや、なんて思うこともしょっちゅうでした。
そんな中、ハードルが低いな、と思ったのがZOOMです。ZOOMは相手がアプリを用意していなくても、ホスト側が用意した会議部屋に招くということで、メールに記載されたルームへの参加アドレスをクリックするだけで会議に参加できるという気軽さが、前述の面倒くささを解決してくれています。
しかも無料登録で40分間までは会議が開催でき、画面共有による会議も可能と言うことで、非常に使い勝手が良い安価なWeb会議システムとなっています。最近そのセキュリティ面のずさんさが指摘されていますが、まあそこを無視すれば、かなりお金をかけずに遠隔会議が可能です。
個人的には画面共有が一番驚きましたね。うわ~、こんなことできるんだ、これはわかりやすいなあって。自分の見せたい画面を全員にリアルタイムで見せて、動かして、会話ができるので、事前資料を参加者がプリントアウトしたりする必要がないんですよ。遠隔プレゼンって感じですかね。
つい最近は、ベンダーさんと一緒に8人くらいの会議をしたのですが、音声面でも言うほどのトラブルもなく、通常の会議のクオリティとさして変わらぬ会議ができました。もちろん多少の違和感はありましたけどね。まあそれは言いだしたらキリがないので、必要なことはできるという意味では問題がないです。
ただあまり長くはできないなあ、という感覚を覚えました。その時は2時間のWeb会議だったんですが、終わった後は、かなりの疲労感を覚えましたから。2時間という会議時間自体が長いので、疲れるのは当たり前なんですけど、対面で行ったときの会議より疲れましたからね。まだ慣れてないからかもしれませんが。
余談ですが、その時の会議は在宅ワークで参加した人もいて、その服装のラフさに違和感を覚えました。対面会議であったら、全員スーツ等のオフィシャルな格好で会議していたはず、と思うと、パーカー姿で画面に現れ、ああだこうだと会議する様が珍しくて。まあ最近のベンチャーやIT企業などは、ラフな服装での会議も常識的かもしれないのですが、こちらはまだまだ不慣れというか、慣習にまだ縛られているので。
でも在宅ワークだと、急にその辺のドレスコードが緩くなるんですね。しかもそれを皆が許すという感覚に自然となってしまうという。さらに言うと、後から子どもの奇声がが聞こえたりしてね(苦笑)。アットホームだなあ、みたいな(笑)。なかなかに新鮮な体験でしたよ。
在宅ワーク
これについては、実際は難しいだろうなあと思っていました。通常は勤務先において行うべき仕事を、家で行うという働き方なのですが、どう考えても全てがそろっている勤務先と同等の仕事なんてできるわけない、と思いますからね。
やはり全ての資料がそろい、すべてのインフラがそろっている事務所は働きやすいですよ。いくらITが発達したとはいえ、それら資料をオンデマンドで見られる環境にはなかなかできないし、インフラに至っては、レーザープリンタを個人宅に用意させるのもまだまだハードルが高い。
もちろん資料関係をすべてデジタル化できれば、その辺もある程度クリアできるのでしょうか、長年かけて蓄積されたアナログ資料を、すべてデジタルアーカイブ化するのは現実的ではないし、なかなか難しいですよね。
もう一つの問題は、うちの会社のネットワークの関係で、社内のシステムに外から入れないことでした。これは在宅ワークを行う上では致命的な弱点で、これによってできる仕事内容が半減してしまうことになります。
これを解決してくれたのが、GoogleのChromeリモートデスクトップでした。いわゆるPCの遠隔操作を可能にする技術で、親PCと子PCという感じでPCが2台必要という弱点はあるのですが、それが整えばハッカーが他人のPCを遠隔で乗っ取るようなイメージで、自分の会社のPCを操作することができるわけです。
これも初めて体験したときは、すげえな~と思いましたね。私は自宅のPCで会社のPCを遠隔操作したのですが、自宅PCのディスプレイに、会社のデスクトップが表示され、システムも含めてすべてのソフトが操作できるんですよ。
つまり自宅のPCは、あくまで会社のPCを覗いている窓に過ぎず、実際のシステムやソフトは、会社のPCが動かしているという感覚です。ですので、自宅のPCに、会社のPCにインストールしているソフトやシステムを逐一入れて、環境をそろえる必要もないんです。まあ操作しているのは会社のPCなんで当たり前なんですが(笑)。でもこのあたりがとてもお手軽で、技術の進化に素直に驚いた次第です。
でもって、こちらも無料で使用できるんですよ。自宅にPCがある人はそれなりに多いので、2台目のPCを用意する必要が少なくてすむのもいいところです。ただこのサービスも、セキュリティがイマイチ怪しい、という点がアレなんですけどね(苦笑)。
使用感としては、やや動きがモッサリしているというか、コンマ数秒のタイムラグが気になります。これは自宅の通信回線のせいかもしれませんが…あと画面が一段階劣化している感じです。エッジににじみがあるというか、いわゆるコピー後の画面な感じです。
ただそれでも一般的な事務業務を行う上では、そんなに大きな問題ではありません。ストレスがないかっていったら嘘になりますが、慣れでなんとかなるレベルです。実際に様々な文書作成や、デスクワークを自宅からこなしましたが、ある程度できましたからね。
もちろん事務所での作業をまるまるイコールでできるわけではないので、在宅ワーク日を設定したら、その日に何をやるか事前に決めておき、それに必要な準備をある程度そろえて帰宅するなど、多少の気遣いは必要です。紙資料とかあった方が確実に効率がよい場合は、それを自宅に持ち帰るとか。そういった工夫をすれば、やりたいことの7~8割はできるかな、という感想でした。
事前に漠然と思っていた「できるわけないよ」という予測からすれば、思った以上にできる、という結果になりましたね。こればかりはやってみないとわからないもんだ、という、いい経験になりました。
その他在宅ワークで感じたことは、通勤という行動が不要だという違和感ですね。朝9時の始業ギリギリまで、家でゲームできるんですよ、極端な話(笑)。これはかつてない違和感でした。このゆとり感はけっこう病みつきになりますね(笑)。当然帰宅という行動もないので、PCを切ったらはい、仕事終了、みたいな。オンオフの切り替え早っ! ってな感じで、時間を有効に使えた感じがして、なかなかにスマートです。
ただやはり、衆人環視、という見えない鎖がないから、やろうと思えばかなりサボりながら仕事をすることも可能です。成果報酬でゴリゴリの給与システムならばそれはできませんが、ある程度その辺がうやむやな仕事をしている人には、少しくらいならいいか、的な誘惑はおきますね。こればかりはどれだけ自分に厳しいかが問われる瞬間でもあります。雇用側としては、基本性善説を信じるしかないかな…。
ちなみに自宅で会社のPCを動かしているとき、実際の会社のPCはどうなっているかというと、無人の席でPCの画面だけチャカチャカ動いているという、ある種ホラーめいた、シュールな情景を見ることができます(苦笑)。でもそれで「お、あいつきちんと働いてるな」なんてわかるんですけどね(笑)
それだけに、自宅であることの気の緩みから、「ちょっと休憩」なんていってエロ動画でも見ようものなら、赤っ恥をかく恐れがあるので注意してください(笑)。まあそれが嫌な場合は、会社PCのモニターの電源をOFFしておけばいいだけなんですけどね。
まとめ
いろいろと雑感を書いてきましたが、まず感じたのは、やってみると意外とできるもんだな、ということです。食わず嫌いというか、事前の安易な予想に引っ張られて、行動を起こさないというのは、あまりよろしくないことなんだと、改めて感じた次第です。
あと、いろいろとサービスを探っていくと、ある程度までは安価でできるものなんだな、とも思いました。もちろん制限はありますが、スモールスタートで投資リスクを最小限にしてまずはやってみる、ということができる時代になってきたということも、痛感させられた次第です。
ともあれ、今回の騒動で日本社会経済は、テレワークという実践を行うことができました。このコロナショックが収束した後、すでに経験値を積んだ世の中は、仕事の仕方が激変する可能性があります。それこそ来年に東京オリンピック・パラリンピックが開催される時期には、スマートにテレワーク体制に切り替えられるくらいの。
それくらい様々な経験、思考機会を国民に与え、新しい価値観を得る、エポックメイキング的な年になるのではないでしょうか。ひょっとしたら“コロナ前・コロナ後”なんて言葉すらできるかもしれませんね。
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