『キン肉マン』513話では、テリーマンがエンデマンに対し、めくるめくテリー流・技のフルコース料理を提供。信念が伴うその技の数々に、エンデマンの余裕は次々と奪われていき、とうとう星五つのメインディッシュが机に運ばれた…!
そんなシェフ・テリーマンの痛快料理を、今回も笑いと考察で深掘りします!
今週の注目ポイント
この記事にはキン肉マン週プレ最新話513(2025年12月1日配信分)の感想が記載されています。つまりネタバレ確実なため、十分ご注意ください。
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最新話はこちら↓のリンクから!!

今週のキン肉マン第513話「テキサス流フルコース!!」感想と考察
前回までのあらすじ
自分の心に正直に生きたことに後悔はないと、自分の憧れとして作られたエンデマンの肉体を完全否定したテリーマン! 元の姿に戻ったエンデマンを制し、マットに組み敷いた!! 前回の感想は☞https://oreryu.site/kinnikuman15-99
株価上昇スカイマン―一粒で二度おいしい演出
オモプラッタから華麗に新関節技である『テキサストルネード・リバースショルダークラッシュ』を極めたテリーマン。エンデマンの両腕がメキメキと悲鳴をあげます。
テリーのこの動きを見た解説のスカイマンは

うまい!
あれは古式柔道では体固腕拉ぎという技だ。僅かな力でパワー差のある相手でも制圧してみせる…

まさにテリーマンの真骨頂ともいえる新技だ!
と状況を説明し、古武道にも精通しているという、自身のアイデンティティであるルチャからはかけ離れた側面を見せます。
このルチャ×古武道という組み合わせ、異質感がすごいですよね。でもよくよく考えたら、ルチャにはジャベ(複合関節技)という個性もあるので、実は近しい組み合わせなのかもしれません。
下のブログはルチャのジャベ教則本から、柔術とリンクできる部分を紹介した記事です。今回のスカイマン発言を実践しているようで、とても興味深いですね。
そして何よりも、スカイマンが体の小さいテリーマンのことをよく理解した上で、彼のとる戦略の強みにフォーカスしている点が心地よいです。

さすがスカイマン、わかってるな

伊達に一度闘った間柄じゃないぞ
みたいな。
このように、オールドファンの琴線に触れる演出をしつつ彼の株も騰げるという、“一粒で二度おいしい”手法をサラッと見せるゆで先生、さすがとしか言いようがないです。
ある意味この瞬間のスカイマンにおいては、マスクの中身がゆで先生だったのかな、なんて(笑)。
実は大食漢ハンター?―テリーシェフの持ち味
完全に主導権を奪ったテリーは、この腕折りである程度エンデマンに悲鳴をあげさせると

しかしお前がこれしきでギブアップしないことは織り込み済み
と技を解き、電光石火の速さでヘッドロックに移行。
そしてロープ上段に足をかけ、その反動を使ってエンデマンもろとも高々とジャンプすると、

この程度で終わらせやしない!
これからお前にはテリーマンのフルコースを味わってもらうーっ!

どれもこれも小さな体で最も効果的にダメージを与えられるよう磨き続けた自慢の技ばかりだ。旨くて失神しちまうぜ~っ!
と叫び、ブルドッキング・ヘッドロックでエンデマンの頭を石のリングに豪快に叩きつけます。
さらにはダウンするエンデマンの足をとると、

まだ続くぜ。とくと味わえ
と、今度は十八番のテキサス・クローバーホールドでガッチリと極めるテリーマン。その流れるような技の移行は、まさに彼の言うところである“フルコース料理”そのもの。
つまりシェフ・テリーマンが提供する本日のコースは
【前菜】
テキサストルネード・リバースショルダークラッシュ
【スープ】
ブルドッキング・ヘッドロック
【魚料理】
テキサス・クローバーホールド
【肉料理】
シェフのきまぐれ肉料理
といったところでしょうかね(笑)。

そしてこのシェフの持ち味は、派手さはないが、素材(技)のよさを極限まで活かした調理法による、洗練された味わいの創出。
そんな無駄をそぎ落とした本質重視のフルコースに、今まで暴飲暴食を繰り返してきた多くの大食巨漢超人たちの価値観は、いつも覆されてきたわけですよ。
ゆえに彼についた二つ名が
(大食)巨漢(超人の価値観)ハンター
であることは、当然といえば当然なのかもしれません。
エンデマンの味変―味オンチの虚勢
価値観を変えられる料理を次々と食べさせられるエンデマン。しかし彼もフォアグラの鴨のように、延々と強制給餌をさせられるわけにはいきません。

なめるなーっ、刻の神より与えられし1億パワーを!!
と叫んで両腕を突っ張ると、その圧倒的脚力でテリーマンを吹っ飛ばし、技から脱出することに成功。
その抵抗する様は、繊細な味つけの料理ではなく、

オレはもっと大味のジャンクフードが食べたいんだ!
と主張しているかのようです。
そして再び暴飲暴食モードに入った大食漢超人は、

調子に乗るなよ、所詮お前はコバエだ!
と口汚くテリーを罵ると、彼をKO寸前まで追い込んだフェイバリットである『ナチュラル・ボーンスクラップ』に捕らえ、再び拷問監禁状態に。
その強引ながらもパワフルなペース奪取のやり方は、まるで味つけが薄いと、出された料理にマヨネーズやケチャップをなみなみとかける味オンチのようにも見えます(苦笑)。
つまり裏を返せば、彼も間違いなく追い詰められており、余裕がなくなっているがゆえの強引な味変、ともいえるのではないでしょうか。エンデマン自身は

バッコバッコ、多少回り道をしたが、再びこうなってはどうしようもあるまい
と、上から押さえつけるような物言いをして優位に立った気でいるのですが、それが逆に彼の“虚勢”をあぶり出しているようにも見えるんですよね。

あぶりと塩胡椒―劣勢でも続くテリーの調理
そんな綻びが見え始めたようなエンデマンですが、この好機を逃すまいと、その体勢のまま高々とジャンプ。

今度こそ地獄に送り届けてやる! これが貴様のエンドマークだ!
と、再びこの固め技のままリングに落下するという、エグい地獄のバックブリーカーを狙います。
しかしここで絶体絶命のはずのテリーが、エンデマンに対し

腹の内を読むことに長けているエンデマンさんにしては、おかしなミスを犯している

やはり体が戻ったことで少々心に動揺があるようだ
と、相手の不手際と余裕のなさを、逆に余裕のある表情でチクリと指摘。
そんな思いもかけぬ相手の指摘に

ミスだと……!?

動揺などという言葉はこの“五大刻”にはないわーっ!
と激高するエンデマン。しかし否定すれば否定するほど、自身の“虚勢”が益々あぶり出されていきます。
このあぶり出し…これはテリー、やってますね。まさにコースメニューのメインディッシュである
シェフのきまぐれ肉料理
のための下準備。絶体絶命の状態にありながらも、実はじっくりとお肉を炭火であぶっている…そんな状態すら見えてくるような、シェフの老獪な調理法。
そして次に

では聞くが、なんで今回は右足ではなく左足をクラッチしたんだ?
と、前回との相違点を鋭く指摘します。
確かに…よく見るとバレリーナ(笑)の上がっている足が、前回とは逆です。これは言われないと気づかなかったなあ。そしてテリーの左足とは…ご存じ義足の足。
この展開、完全にシェフが肉に塩をふり、レシピが進んでいる段階です。これ、見事に主格が転倒していますよね。だって数話前のエンデマンは
超巨体×精神攻撃
と、そのニッチな個性を評価されていたんですよ? 野村監督ばりの“囁き戦術”を繰り出す超人として。
しかし今はどうでしょう。精神的に優位に立っているのは、完全にテリーマンじゃないですか。彼特有の

チッチッチ。
ヘイボーイ! からかっちゃいけないぜ
モードなんですよ。しかも今回は意地と根性と虚勢の“ヘイボーイ”ではなく、本当に精神的優位性からくる“ヘイボーイ”なんですよ。これは心強い。
そんなテリーの挑発に

たまたまそうなっただけだーっ!
とミスを認めず、己を正当化することに必死なエンデマン。さらに自身があぶられていることに気づきません。
そのあからさまな虚勢を確認したテリーは

やはり動揺ありだ!
とビシィっと一喝。その言動は、まさにピリリとパンチが効いた、粒胡椒のよう。着実にシェフの調理は続いています。

キン骨マンの完全償却―罪の帳簿価額ゼロの感激
そしてその刹那、テリーの左足の義足がガシャっと外れるというアクシデントが発生。その状況だけを見ると、同じく義足が外れて試合続行が叶わなくなった、ジャスティスマン戦での悪夢を見るかのようです。
ところが今回のテリーはまったく動じていません。それどころか

アクシデント?
違う、ワザとやったのさ。以前なら一度外れりゃおしまいだった
と、エンデマンから義足を奪い取ると

しかしキン骨マンが改良を加えてくれてな。戦闘に耐えられるレベルでいつでも着脱可能になったのさ!
と、進化した義足を再装着。
いや、ここアツいな。ストーリーの流れの中で、自然にキン骨マンの仕事を賞賛し、感謝するという展開。40年前に犯した彼の罪が、まさに完全償却された瞬間ですよ。
もう来年の超人損益計算書に、キン骨マンの罪の減価償却費は存在しません。罪の帳簿価額、とうとうゼロです。やったなあ、キン骨マン(笑)。
これ、今回は描写がなかったですけど、おそらくこの模様を超人墓場のモニターで観ているであろう本人は、感激で号泣でしょうね。

アチキの罪が、とうとう赦されただわさ!
って。そのシーン、見たいなあ。ゆで先生、ぜひともお願いします!

テリーシェフのきまぐれ肉料理―左膝も添えて
そんな感慨無量なシーンを挟むや、テリーはすかさずエンデマンの背後移動。そして

さあフルコースの再開だ!
と、シェフはあぶっていたお肉への火力を一気にアップ。

この高さなら申し分ない。
これぞテリー一族のメインディッシュのひとつ!
と、エンデマンの後頭部に右膝をあてがい、必殺の『カーフ・ブランディング』の体勢へ。
しかし今日のメインディッシュは“シェフのきまぐれ肉料理”。ここでシェフの

さらにメインディッシュに付け合わせ(ガーニッシュ)を添えてーっ!
というきまぐれ(笑)が炸裂。なんと左膝をも後頭部にあてがうアレンジを即興で行い、出来上がった料理は『カーフ・ブランディング・ガーニッシュ』!
まさに天空から差し出されたメインディッシュにより、顎と胸から強烈に叩きつけられたエンデマン。その破壊的なお味で両肩の構造物が粉々に飛び散って次回に続く、です。
これは…決まったかな。もし次回、エンデマンが意地を見せてきたとしても、デザートで締められそうな雰囲気を感じるくらい、今回のテリーは力強かったです。
最終頁のアオリ文句でも書いてありますが、彼のフルコースはなにせ“五つ星確定”ですから(笑)。実際の話、両肩の星とレスパンに刻まれた星三つで、合計五つ星。うまいことできているじゃないですか(笑)。

テクパという個性―地味の深掘り
さて、ここで今回のテリーのフルコースを再録すると、
【前菜】
テキサストルネード・リバースショルダークラッシュ
【スープ】
ブルドッキング・ヘッドロック
【魚料理】
テキサス・クローバーホールド
【肉料理】
カーフ・ブランディング・ガーニッシュ
というお品書きとなるんですね。
これを見て感じるのが、

全部プロレスラーや格闘家が実用している技だな
ということなんですよ。もちろん高さをつけることで超人ぽさを演出してはいますが、ゆうてトンデモ技の類ではないですよね。
そしてこれこそが

テリーは地味だな

超人のくせに人間が使える技しか使えないテリー
といったような、テリーをネガティブにみる世論の大きな要因となっているわけです。
でも今回のテリーの闘いぶりや、彼自身が口にした矜持を見るに、ゆで先生はそれを承知であえてこの“地味”という個性を深掘りしてきているように感じました。
それを如実に表しているのが、今回彼が放った

どれもこれも小さな体で最も効果的にダメージを与えられるよう磨き続けた自慢の技ばかりだ
というセリフなんですね。これ、捉え方によっては、彼の

オレ、こじんまり行くよ
宣言にも聞こえるんですよ。つまりそれは、
- マッスル・スパーク
- 阿修羅バスター
- ハリケーン・ミキサー
といった、トンデモテイスト漂う超必殺技の使用を放棄するかわりに、現実味のある技をより深く磨いていくという、職人気質な闘い方を、彼が自身の理想に据えたようにも感じるんです。
そしてそれは、ゆで先生が彼のキャラクターを“派手”という、横に広がるものではなく、“地味”という、縦に広がる…つまり範囲は狭くとも、深掘りに徹することができるキャラに育てていこうと、挑戦をしているようにも思えるんですね。
いうなれば、これからテリーが目指す個性というものは、昨今流行っている“タイパ”や“コスパ”の延長線上にあり、彼の場合は“テクニック”のパフォーマンス向上を目指す
テクパ
にその個性を見出そうとしているのかもしれません。
テリーという個性橋―フィクションとリアルをつなぐ
しかしながら、それがとても厳しい道のりであることは、容易に想像がつきます。おそらくこれで彼の人気を回復させるには、時間がかかるでしょう。やはり“いぶし銀”キャラはブレイクしづらいですよ。
でもゆで先生はそんなこと、百も承知だと思うんですよね。でもあえて、テリーにはそれを挑戦させている。
その理由は、きっと彼がフィクションと現実の橋渡しをすることができる、とても貴重なキャラだからだと思うんです。だってそうじゃないですか。登場人物が全員トンデモ技ばかり駆使していたら、その作品は説得力を失うと思いませんか?
そう思う理由は、際限のない派手さが作品を現実からどんどん乖離させていくからです。そして乖離したスキマに“シラケ”という、フィクションにとっては天敵である魔物が忍び込んでくるわけです。
こうなるともうね、その作品に感情移入することはできないですよ。
ですので、フィクションの中でもある程度の現実を描写することがどうしても必要になってくるのです。そしてその役割を担うのが…人間型超人のエースであるテリーマンなんですよ。
でもただ現実を描写するだけじゃつまらないじゃないですか。だからこそゆで先生は、彼に“地味の深掘り”を“魅力ある個性”として開花させようとしているんじゃないのかなあ?
そう考えると、こうした“地味の深掘り”は、テリーマンというキャラの奥行きを描くうえで、ゆで先生が今回挑戦した新しい味付けなのかもしれません。

第513話感想とまとめ
以上、今回の感想と考察をまとめると
といったところでしょうか。
そして今回は惜しくもピックアップできなかったポイントが、まだまだあります。それらについては一言雑感ですが、次の項をご参照ください!
第513話の小ネタ感想―気になったシーンピックアップ
その他気になった点は
- エンデマンの『ジョイメカファイト』のような透明関節(笑)。
- でもメキメキいってるんだよな(笑)。
- テリーのブルドッキング・ヘッドロックは、『アメリカ遠征編』におけるカーフ・ブランディングに近い。
- エンデマンへのテキサス・クローバーホールドは、見た目的にサンシャインをギブアップ直前まで追い詰めたシーンを思い出させる。
- 足を四の字で抱え上げるだけで大変そうだ。
- 義足が外れるシーンは、やはりショックを受ける。
- テリーのモデルはテリー・ファンクというよりは、ディック・マードック寄りな気がする。
- ブルドッキング・ヘッドロック、カーフ・ブランディング、ブレーン・バスター…全部マードックの技だし。
- テリー・ファンクとディック・マードックを足して二で割ったようなキャラなのかも。
こんなところでしょうか。次回、エンデマンはエンデ(エンド)してしまうのか。それともデザートが控えているのか。いずれにせよ、テリーは最低でも引き分けは確約されたような気がしますね。
みなさんも今回感じたことやその後の展開予想などを、よかったらXやコメント欄に書いてくださいね!
お知らせ
超人批評のご案内
超人批評では新作がアップされております。今回は記念すべき超人批評100回突破シリーズとして、第1回の批評超人でピックアップしたウォーズマンの再批評を数回に分けてアップ。
そしてとうとう今回、ウォーズマン再批評が最終回を迎えました。今回は

ウォーズマンとは何者なのか
という、彼のアイデンティティの最深層に迫っていきます。
はたしてウォーズマンというキャラの根幹は何なのか。それについて、多くの事例と資料をふまえ、深々と考察をいたしました。
そしてありがたいことに、この批評は嶋田先生からも
という、ありがたいメッセージをいただいております。ご興味わいた方は、ぜひご一読くださいませ。
キン肉マン以外の雑文のご案内
キン肉マン以外でも興味深いコンテンツを探している方はこちら↓なんていかがでしょうか。
とある研究所のアイドル犬・豆柴マロが、所長と一緒に話題の本を読み解く「読書散歩」シリーズ。今回は、『病に好かれる人 病に嫌われる人』 を取り上げています。

平均寿命よりも健康寿命!?
そんな衝撃の一言を所長から聞かされたマロが、平均寿命の延びを最大限享受するならば、健康寿命こそ大事であることを、その理屈からゆるく、しかし鋭く掘り下げていきます。
会話形式で進むので、読書が苦手な方でもスルスル読める構成。例えを多用した所長の解説は、ちょっとおバカなマロ(笑)でも理解できるわかりやすさですよ。
老後の健全なる生活について疑問が生じているならば、ぜひマロの声に耳を傾けてみてくださいね。
コミックスのご案内
そしてコミックスは89巻が9月4日、90巻が10月3日と、二か月連続で発売されました。表紙カバーは89巻がウォーズマンの“ファイナルトランスフォーメーション”、そして90巻がネプチューンマンvsパピヨンマン!
どちらもカッコよすぎます。購入がまだの方はぜひ! それではまた。



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