週刊少年ジャンプ論 第五章 第三節

オレ流週刊少年ジャンプ論
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注)この論文は1994年のものです。

第三節 海を渡るドラゴンボール ~そして海外へ~

 1991年(平成3年)春、日本の出版社のもとに、韓国からの出版社の来訪が相次いだ。「人気マンガの版権が欲しい」。用件は皆同じである。

 現在、日本のマンガはアジア・東南アジア・ヨーロッパを中心として、大きな人気を呼んでいる。韓国では『ドラゴンボール』『北斗の拳』『シティーハンター』などが次々にコピーされ、ブームに発展した。

 ある少年マンガ誌が付録として『ドラゴンボール』のコピー本をつけたところ、それが大ヒットしたため、これを機にこのような海賊版が流通されだしたのである(図38)。

図38 韓国のコピー版(左)と、正式契約を交わした香港版(右)

 こういった状況は台湾や香港でも見ることができ、日本マンガがいかに大きなマーケットになっているかがわかる。

 やはりここでも『ジャンプ』マンガの人気が高いらしい。日本の出版社も、このアジアマーケットの野放し状態を懸念し、正式に現地の出版社と契約を結んで海外版の発行を許可する動きになっている。

 表24は世界各国での『ジャンプ』マンガの出版状況である。日本マンガが他国によく受け入れられていることがわかる。

 特に『ドラゴンボール』の人気ぶりがものすごく、世界共通で評価される、メジャー級のマンガとなっている。

表24 『ジャンプマンガ』の海外版状況

▲『ジャンプ』1995年2号より作成

 しかし規制の厳しい韓国などでは、日本マンガの暴力シーンや性表現が当地の常識を大きく超えたものとして、小中学生の母親たちが「日本マンガの流入反対」を訴えて、公園で集会を開くなど、まだまだ日本文化に対するアレルギーが見られ、社会問題にもなっている。だがそんな心配をよそに、子どもは『ドラゴンボール』に夢中になっているのである(図39)。

図39 子どもに人気の日本マンガ

 賛否はあるが、日本マンガが海外で大きなムーブメントになっていることは確かである。このような状況を『ジャンプ』編集長である堀江信彦はこう語っている。

 少年漫画の海外出版が、凄い勢いで伸びている。アジアやヨーロッパの国々で、少年たちが日本の漫画に熱狂しているのだ。

 閉塞気味の昨今の日本の状況の中で、なんと熱く夢のあることだろう。日本の少年たちが育てあげてきた文化が、大きく翼を広げ、限りなく高いと思われた壁を悠々と飛び越えていったのだ。

 少年達よ、胸を張れ! 今、きみたちが育てあげたこの本を通して、世界中の少年たちと感動を共有できるようになったのだ。

『ジャンプ』1995年1号

 日本国内でも批判の対象にされ、その文化性を確立するのに時間のかかったマンガであるが、ここにきて市民権を得つつあるところにきている。そして、そのマンガが日本発の文化として世界にその根を下ろそうとしている。

「胸を張れ!」

 この言葉が痛快に感じるのは、私だけではないはずだ。

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