アメリカタッグ選手権で活躍した赤き仮面超人。陽気で皮肉屋な若き才能は、まるで忽然と現れた彗星のよう。そんな超人評議会のエースパイロットを考察!
出身 | フランス |
超人強度 | 65万パワー |
必殺技 | 空手殺法 |
主な戦績 |
ザ・マシンガンズ△ |
彗星の如く現れた赤い超人
彼は『アメリカ遠征編』でのタッグ選手権で初登場しました。
超人評議会(WSC)のチャンピオン、ビューティー・ローデスのパートナーとしてフランスから呼び寄せられた彼は、
オオー!! ビバ! ニューヨーク
と、ジョン・F・ケネディ空港に降り立ちます。
そんなやや物見遊山的な訪米(笑)をはたした彼の出で立ちは、目の部分を仮面で隠した真っ赤なスタイルでした。
その姿は某大人気ロボットアニメの敵方エースパイロットを彷彿とさせ、
見せてもらおうか、連邦のアメリカ超人の実力とやらを
とでも言いだしかねない雰囲気を放つ登場でした(笑)。
おそらく彼を超人募集に送ったちびっ子は、そのエースパイロットをオマージュして彼をデザインしたと予想されます。
時代的にもピタリと合致していますからね(笑)。
さらにいうと、彼の首はコスチュームでタイトに覆われており、これもまた詰襟軍服姿のエースパイロットを彷彿させる一因となっております。
そんな彼の登場は、やや唐突感があったように感じます。というのも、彼がなぜ超人評議会の代表として選ばれたのか、についての描写が皆無だったからです。
ですので、空港に降り立った彼を見た読者に
…? 誰だ、こいつは?
と、その脈絡のない登場で少し戸惑いを感じさせたのも事実でしょう。
つまり彼は読者にとって突然に“彗星の如く現れた赤い超人”であり、それこそ『キン肉マン』における
と呼んでもあながち間違いではなかったのではないか、と思います(笑)。
人を食った自信家
彼のキャラクターは、陽気で人を食った自信家、といった感じです。
ニューヨークに降り立つや否や
サンキュー、プリティーガール
と、お見送りのCAに対して軟派な軽口をたたく一コマで、彼がどんなタイプのキャラか、という紹介はほぼ完了したも同然でした(笑)。
加えて派手好きで目立つ行為を好むようであり、入場時のきらびやかさの演出や、闘いにおけるポージングも積極的に行っています。
また対戦相手とのやり取りにおいても、彼はブレることなくそのスタンスを保ち続けました。
特に人を食ったような口の悪さは彼の真骨頂で、
ブタにゴリラにハゲタカ…まるで動物園だぜ!
と対戦相手をおちょくることで、精神的にマウントをとろうとしています。
これについては“虚勢を張ることで自己を守る行為”、もしくは“己の自信からナチュラルに発せられる行為”の、どちらともとることができます。
個人的にはおそらく後者であると思いますね。
というのも、当時の彼は若く、実力もおそらく伸び盛りで、さらにはそのルックスで女性にもモテモテだったと思われます。
…となると
という公式が彼を蝕んだのは、想像に難くありません(笑)。
つまり彼はタッグ選手権時、ちょうどこのような人生のバイオリズムにあり、一挙手一投足にその影響を与えていたと思われるわけです。
それはまさに“若さゆえの自分への過信”もしくは“恐れ知らずの若人”という言葉が当てはまるのではないかと思います。
ただ、もし年を重ねたジャンヌ・スティムボードにインタビューができたとして、彼が
認めたくないものだな。自分自身の、若さゆえの過ちというものを
と語ってくれるかどうかは定かではありません(笑)。
アメリカ制覇への逸材?
前述しましたが、彼はバックグラウンドの描写が清々しいほどスキップされています(笑)。
他の3チームのパートナー選手には
- テリーマン…ドラマティックなスカウトストーリーあり
- デビル・マジシャン…超人同盟入りの派手なエピソードあり
- ブラック・シャドー…イワオが不安感を覚える(笑)開発エピソードあり
といったエピソードがあるのに、彼だけそれがないんですよ。ブラック・シャドーですらあるのに(笑)。
そんな感じなので、この点において彼の扱いは相当軽いと言わざるを得ません。
よって彼がなぜアメリカ超人界の勢力争いの命運を握る一大イベントに抜擢されたのか、まったく謎なんですよね。
また彼が訪米したときには、タッグを組むビューティー・ローデスですら、彼のことをよく知らないようでした。
これについては子ども心にも
おいおい、そんな信頼関係ゼロでタッグ選手権大丈夫か!?
とツッコんだ覚えがあります(笑)。だってねぇ、アメリカを支配する、しないの重要なイベントですよ?
それについ最近知り合ったばかりの超人と一緒に勝ち抜こうだなんて、ちょっと現実的ではないなと。
しかしながら、超人評議会にはそうするしかない事情もありました。
というのも、超人評議会はタッグ選手権直前に、テリトリー内のチャンピオンクラスの超人を、キン肉マン扮するシャネルマンに総じて闇討ちされていたからです。
つまりローデスの隣に据える超人を、物理的に供給できなかったわけですね。
それはある意味ドーロ・フレアースの超人協会(WSA)の人材不足とたいして変わらない状況です(笑)。
そう考えると、この一大決戦において超人評議会は、実はかなり危ない橋を渡っていたような気がします。“出たとこ勝負”と言ってもいいかもしれません。
ただ裏を返すと、そんな危ない橋を華麗に渡り切る逸材、それがジャンヌ・スティムボードだった、と言い換えることもできるでしょう。
彼が抜擢された理由を推測する
ではそんな状況の中で、なぜ彼がローデスの横に抜擢されたのでしょうか。
彼を抜擢したのは、超人評議会会長のイヤデス・ハリスンで間違いないと思われます。
前述した通り、多くの手駒を失っていたイヤデスは、実はこのときかなり焦っていたのかもしれません。
師匠であるゴッド・フォン・エリックの提案に乗ってみたはいいものの、物理的に駒が不足している。しかもそれを補う時間はあまりない。
ゆえにパートナー超人の選定は、彼女の情報収集能力とネットワーク、そして交渉術にかかっていたわけです。
それは一超人団体代表としての手腕を大きく問われたことでしょう。
彼女はその立場上、常に世界中の目ぼしい超人をリストアップし、自分のテリトリーにスカウトしようとしていたに違いありません。
そう、某公国の公女の指揮官が、前途有望なエースパイロットを引き上げたように(笑)。
そしてそのリストの中から、ビューティー・ローデスの強みである
- タフさ
- パワー
- 威圧感
という項目以外の
- スピード
- テクニック
- クレバーさ
という点で優れているジャンヌ・スティムボードに、白羽の矢を立てたのではないでしょうか。
要はタッグチームとしてのストロングポイントの絶対数を増やし、その相乗効果で選手権制覇を狙ったわけです。
また、超人評議会はニューヨークを拠点とし、その華やかさでテリトリーを増やしてきた団体でもありました。
つまり超人プロレスにおいて、“華”と“クールさ”を重要視していた団体だったわけです。
そのような観点からも、スマートで女性ウケしそうなジャンヌ・スティムボードは、イヤデスのお眼鏡にかなったのではないでしょうか。
まあ団体のトップとはいえ、イヤデスが女性であることには変わりないですからね。ルックスがその選定理由の大きな要因になったとしても、なんの不思議もありません(笑)。
また、このタッグ選手権を勝ち抜いて全米を掌握したのちに、超人評議会の新たなるイケメンスターとして大々的に売り出すという、将来的な目論見も十分にあったのではないでしょうか。
ただし唯一、彼の“線の細さ”は憂慮すべき点だったかもしれません。
それについてイヤデスに指摘されたジャンヌ・スティムボードが
モビルスーツ体格の違いが戦力の決定的差ではないということを教えてやる
と自信たっぷりに返し、彼の抜擢が決定的になったかどうかは定かではありません(笑)。
赤い彗星の実力
そんな大抜擢をうけた彼のファイトスタイルは、オーソドックスな正統派、といった感じでしょうか。
アクセントとして“空手殺法”という攻撃があり、西洋レスラーにありがちな“東洋の神秘”をギミックとして持つパターンを彷彿とさせますね。
ただ言いようによっては
カラテ、サムライ、ニンジャ、トレビアン!
と、日本文化に対する中二病的な憧れを持つフランス人にも見え、やや滑稽でもあります(苦笑)。それこそ
どんな怪しい人から習ったんだよ、その空手?
ひょっとして通信教育?
なんてツッコミを受けかねない危うさを持っていたと、個人的には思いました(笑)。
とはいえ、超人同盟のホープだったデビル・マジシャンを、それなりに子ども扱いしていたという印象は強いですね。
にがすかい、このやろう~!!
と叫び、マジシャンをアンクルホールドで捕らえる様は、なかなかに勇ましいです。
そして宇宙一凶悪コンビ戦の試合展開も、圧倒的にエンペラーズが優勢だったと思います。
試合の局面が変わったのは宇宙一凶悪コンビが凶器を使い出してからだったので、“格闘”という純粋な視点では、彼らを凌駕していたとも言えます。
短剣を胸に刺されて失速したからといって、スティムボードの実力のなさを証明できるものではありませんからね。
そんな非道行為を受けた後に彼が
ヘルメ大胸筋を鍛えてなければ即死だった…
と呟いたかどうかは定かではありません(笑)。
そしてなんといっても、後に宇宙一のタッグチームとなる『ザ・マシンガンズ』と、60分に渡り互角に闘ったという事実は大きいと思います。
ダイジェスト的な描写だったため、細かい攻防を知ることはできませんが、ここでも格闘におけるポテンシャルは相当に高かったと推察できるわけです。
ただそんなゾーンに入った彼が
見えるぞ、私にも敵が見える…!
と言ったかどうかは定かではありません(笑)。
スポットを相方から奪取
そんな一定水準以上の実力を示した彼は、その華やかさからか、チーム内のスポットをチャンプであったローデスから奪い取ることに成功しています。
それは『ジ・エンペラーズ』の露出対象が、ローデスからスティムボードに移行していったことで証明されており、そのことは読み手にも伝わりました。
明らかに途中からアップ担当はスティムボードでしたからね(笑)。
ぶっちゃけローデスは一歩引いてしまった感が強く、タッグ選手権では
彼に食われちゃったかなあ?
といった印象があります。ローデスにとってはちょっと貧乏くじでした。
そしてその事実は、ジャンヌ・スティムボードが“華”の面において、イヤデスの期待に大いに応えたとも言えるでしょう。
ですのでもし超人評議会が全米を掌握していたら、頭角を現したスティムボードにローデスが嫉妬し、二人の抗争が始まっていた可能性もありますね。
これについても彼が
チャンスは最大限に生かす、それが私の主義だ
と語っていたかどうかは定かではありません(笑)。
その後の赤い彗星
以上のように、タッグ選手権シリーズにおいてはなかなかの存在感を示した彼ですが、残念ながら以降はその活躍を見ることはありませんでした。
まさに“彗星のように現れて、彗星のように去っていった”一発屋キャラとなってしまったわけです。
派手で目立ちたがり屋な彼が、後楽園球場で行われた超人体力測定会にひっそりと参加している様は、やや寂しい末路でしたよね(苦笑)。
それはまるで大々的にデビューしたアイドルが、鳴かず飛ばずで売れなくなり、数年後には『オールスター大運動会』の玉ころがしの大勢の一員としてブッキングされたかのような惨めさです(笑)。
ただし、それは他のアメリカ遠征編の登場超人も同様なので、彼だけが特別にキャラとしての魅力が劣っていたわけではないと思います。
やはりこの点においては、アメリカ遠征編連載時の人気低迷で、作品打切りの危機を迎えたゆで先生の、
心機一転しなければ…!
という気持ちの入れ替えが大きかったと思いますね。
“初心に返る”という心持ちから、不評だったシリーズの超人をあえて封印したのではないのかな、と思います。
まあ普通に考えればそうですよね。人気のなかったシリーズのキャラを、さらに膨らませる必要はないし、それこそそんな余裕は当時のゆで先生にはなかったでしょう。
なにせ崖っぷちでしたから(苦笑)。
そう考えると、彼は外的要因で作品の隅に追いやられた、不遇なキャラだったとも言えます。
ルックス、性格、ファイトスタイルの点で、よりキャラの深掘りができるポテンシャルを備えていたと思うので、少々もったいなかったですかね。
それだけに、当時の外的要因がなくなった昨今において、復活してほしいキャラの一人でもあります。
それこそ現在の中井画伯であれば、相当にカッコいいジャンヌ・スティムボードを描くことができるし、それに見合ったイカしたストーリーを嶋田先生がこさえてくれるはずです。
ただ40年という年月で生まれ育った強烈なキャラ群が、作品内をウヨウヨしている現状を見た彼が
今の私には、ガンダレギュラー超人は倒せん・・・
と、己のキャラ不足を冷静に考察しているかどうかは定かではありません(笑)。
おまけ
以上、ジャンヌ・スティムボードについての考察でした。いかがでしたでしょうか。
ただですね、この文章を書いていて、個人的に
惜しいな!!
と思う点があるんですよ。
それはキン骨マンに殴打されながらも、大好きなテリーマンの義足を守り通した車椅子の少年・ロバートを、イヤデスが介抱したことなんですよ。
彼女が優しくロバートを抱き「だいじょうぶ? ぼうや」と声をかけたその時に、おそらくスティムボードは
ぼうや…!? ぼうやというセリフはオレの専売特許だろうに…!!
と、地団駄を踏んだに違いないんです(笑)。
ここで彼が“ぼうや”と口にしていたら、ホント
おあとがよろしいようで
と、オチがキレイにまとまったのになあ。
ああ~、もう本当に惜しい…え? このシャアのくだり、もういいよって感じ? あ、シャアって言っちゃった(苦笑)。
※今回は上野さん、ミスターポテロングさん、HFさん、トーゴーさん、トンガリ博士さんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。
【リクエストはこちらから】
コメント
まさかの大佐いじり
今まで気が付きませんでした
スティムボードと言う名前
空手 ≠ カンフー
で リッキー・スティムボードがモデルなんだ程度にしか思ってませんでしたので
ローデスをリック・フレアーがモデルのキャラだったら良いのに…
なんて事を当時も考えてました
チームリーダー? のローデスよりも出番が多いのは気になってましたね(笑)
毒舌も当時は珍しかったので 目立て易かったのでしょうか?
ローデスが無口だから毒舌にしたかは分かりませんが
(顔を剥がされたから台詞が減ったかも)
今でも思うのが
「ブタにゴリラにハゲタカ」
の台詞です
ゴリラって イワオの事なんでしょうか?
妙にマッチョ化したテリーかとも思いました
ブタ… まぁ スグルの事でしょうが
アナタの隣にも居ますよ(笑)
作中の体型いじりはローデスが多かったし
アメリカ遠征編 好きなキャラが多いので人気が低迷したと聞いて残念な気分になります
初期のキン肉マン
超人に殆どギミックが無いので プロレス的な要素が濃かったからでしょうか?
マイナー超人考察
楽しませて戴いてます
ティーパックマンの様な 奇跡の復活は もう起きないのでしょうかねぇ
つかささん、こんにちは。
私も「誰かに似てるな~」とは思っていたのですが、それが赤い彗星だと気づいたのはごく最近です(笑)。
「ブタにゴリラにハゲタカ」については、今も謎が多いですよね(笑)。
ブタ…スグル、ローデス
ゴリラ…ローデス、イワオ、ブラックシャドー
ハゲタカ…スカルボーズ
という候補となると思うのですが、ゴリラがよくわからんのですよ。
パートナーを貶めることはないと思うので、イワオかブラックシャドーなのかなあ(笑)。
まさかテリーってことはないと思うんですけど…ひょっとしてローデスに対する悪口をねじ込んだのかな(苦笑)。
やっぱり ゴリラが不明ですよね
毒舌でも タッグパートナーを揶揄するとも思えないのでイワオが確定?
大佐っぽいデザイン
今 思ったのですが
彼だけがアニメに出れなかった原因?
当時の東映スタッフが慌てたかも知れないですね
こんばんは。スティムボード=某大佐、この発想はなかったですね。でも、マスクの形状は似てるかも?(笑)
で、全米タッグ開会式での『ブタにゴリラにハゲタカ』発言ですが、恐らくゴリラはテリーマンの事でしょう。凸凹ブラザーズは眼中になかったでしょうからね。
因みに、タッグ選手権に出場した超人のうち、彼とブラックシャドウだけアニメに出してもらえなかったんですよね。やはり、某大佐を彷彿とさせるマスクがいけなかったのでしょうか?(苦笑)