不屈の魂を持ちながらも、あまりにも脆すぎるその体。だってオラは人間だから。
颯爽としたデビューと大抜擢
彼は『黄金のマスク編』で初登場しました。ヘタレ超人カナディアンマンのキン肉マンに対するエゴイスト発言

どうせ死ぬんなら黄金のマスクを取り返してから死にゃあよかったんだ
に憤慨し、自身の生命維持装置をぶちやぶっての颯爽とした登場でした。
ページの4分の1を使ったその登場シーンに、アイドル超人のニューカマーとしての存在感を植えつけようとした、ゆで先生の意気込みを感じましたね。
彼がこのシリーズの大きなキーマンになることが確定した瞬間だったといえるでしょう。
事実、彼はウォーズマンの体内での悪魔騎士との対抗戦では5重のリングの最上階を陣取り、首領格のサンシャインと対戦するという破格のデビューをしています。
ロビンマスクやテリーマンといった実力者を差し置いての待遇の中で、ジェロニモ自身も自分の立場というものをよくわかっていたらしく、

この強敵サンシャインをオラの力で倒すことはあまりに大任すぎる…!!
と、プレッシャーを感じているセリフが見られました。
ちなみに私はこの“大任”というセリフを“大胆”と読み間違えて、アニキにえらいバカにされた思い出があります。
ちょっとエロティシズムを感じさせるこの読み間違いは、小学生当時の純な私にとっては耐えられない恥ずかしさでしたね。あ、どーでもいいんですけどね、こんな余談は(笑)。
デビュー戦での名勝負
ちなみにこのサンシャイン戦は、間違いなく名勝負といってよいでしょう。
未熟なジェロニモが、先輩超人のアドバイスを受けながらピンチを切り抜け、実力差のある敵の牙城を切り崩していくという展開もさることながら、砂超人という個性を存分に発揮したサンシャインの攻撃力も見ごたえがあり、ひじょうに噛み合っていました。
- 「砂は風に弱い!」といって、砂塵化したサンシャインを吹き飛ばした
- ジェロニモの汗を吸ったサンシャインのボディが、土に変わって重くなった
- 「砂は音にも弱い!」といって、『アパッチのおたけび』でサンシャインを破壊した
など、妙に理科チックな攻防が展開されたのも特徴的でしょうか。
ただサンシャインの体内に閉じ込められたジェロニモが、呼吸を止めて心音を消し去るという行動にでたのには参りましたね。
ええ、マネして息を止めてみたんですが、全然心音が消えないんで死にかけましたよ(笑)。途中でいい加減なデマを入れないでください、ゆでたまご大先生。
名勝負と名言の要因
そしてなんといってもこの試合をドラマチックにした大きな要因は、ジェロニモが実は人間だったという設定でした。
超人にあこがれている人間が、その強い正義感から超人以上のねばりと根性、そして不屈の魂を発揮したところにこの試合のよさがあるわけです。
超人よりも脆く傷つきやすい、ポテンシャル的に圧倒的に不利な立場のキャラクターが、最強に近い敵に勝利するというギャップ。そこに読み手は酔いしれたわけなんですね。
実際サンシャインの玉砕戦法をくらったジェロニモが

正義は必ず勝つ!
と生還したときは、素直にカッコいいなあと思いましたもんね。そんな設定があったからこそ、

だってオラは人間だから
という最後のカミングアウト発言が、作品を代表する名言になりえたわけです。
デビュー戦後の息切れ
ところがです。そんな100点満点のデビュー戦をはたしたジェロニモですが、その後が続かなかったんですね。
次のシリーズの『夢の超人タッグ編』では、テリーマンの助力を得て人間から超人に生まれ変わり、そのテリーマンから大きな期待をうけてニューマシンガンズの一員として参戦します。
序盤こそは新しく得た超人パワーを発揮し、テリーマンとも息のあった連携プレーを見せましたが、彼の本当の役割は、その未熟さ・若さでテリーマンの足をひっぱり、相手のはぐれ悪魔コンビに降伏するキッカケをつくるという、なんとも情けないものでした。
その後の『キン肉星王位争奪編』でもその扱いはよくなかったですね。
物語の終盤まで出番はなく、最後のフェニックスチーム戦でやっとキン肉マンチームに合流しますが、あっさりと相手のオメガマンに敗れてしまいます。
なんのために登場したのかさえもよくわからず、オメガマンの噛ませ犬と化した彼には、かつてのサンシャイン戦での勇姿はみじんもありませんでした。
彼が落ちぶれた理由とは
彼がここまで落ちぶれてしまった原因は、実は単純なことなんですよ。彼は“超人”になってしまったから落ちぶれたんです。普通に考えれば

人間の状態であれだけ強かったジェロニモが、ホンマもんの超人になったらいったいどのくらい強くなっちゃうんだろう?
と期待が膨らみますよね。それが大きな罠だったんです。実は彼の最大の個性というのは“人間であること”だったんですよ。
人間なのに超人を相手に闘う、くらいついていく、耐え忍ぶといった、ある種“超人以上のがんばりをみせる人間”だからこそ、そのキャラクターが評価され、光ることができたわけです。人間であることが他のキャラとの大きな差別化になっていたのです。
それがなまじ超人になってしまったがために、まわりのキャラクターと同一の土俵にあがってしまい、自らのその大きな個性を消してしまったんですね。
つまり超人になった瞬間にジェロニモの将来は消えた、といっても過言ではないと思うのです。
おわりに
そう考えると、ジェロニモの素質に惚れ込み、彼を超人に生まれ変わらせる手ほどきをしたテリーマンこそ、皮肉にもその将来を奪ってしまった張本人なのかもしれませんね。
※今回もたくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。


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