みなさん、こんにちは。
2023年4月17日の連載回で『キン肉マン』はとうとう連載800回を迎え、それをお祝いするお絵描き大会がTwitter上で企画されました。
その企画に便乗した私の作品が下の動画となります。
この動画制作に関するメイキングの第3回目(最終回)、動画作成編を今回はお送りしたいと思います。ちなみに前回の仕様確認編とイラスト作画編はこちらです。
ではさっそく続きをどうぞ。
スキャン&透過処理
雨漏り修繕発生
さて、出来上がったイラストをスキャナーでビシバシとスキャンしていきます。54枚のスキャン、意外と大変…(泣)。
そして取り込んだデータを、貼り付けしやすいように透過処理していきます。画像データをフォトショップに取り込み、背景や余白を切り抜いていくわけです。
でないと、イラストを貼る時に角版でしか利用できないし、複数のイラストを重なる演出がしづらいです。ところが…


ゲェェ~ッ!
上の図のように、イラストの境界線がしっかりしておらず、切り取り範囲がかなりイラスト本体に食い込んでいます。こんなに顔じゅうに点線が入りこんじゃダメなんですよ。これでは切り取れません(苦笑)。
理想は下の様な点線なんです。このレベルが一発で得られるかどうかで、その後の作業時間に雲泥の差がでます。

こうならないのは、イラストのアウトラインに、どこか抜けがあるということです。ここでアウトラインに黒を引かなかった演出が裏目に出たわけですね。
黒でアウトラインを引いていれば、イラストと背景でかなりはっきりとした差異が生まれやすいので、ここまで漏れ漏れになることはあまりないんですよ。
ですので、あらためて境界線を再度定めてあげないと、切り抜きができません。そう、手間が増えたということです(泣)。
その作業は、雨漏りをしている屋根に上り、漏れている個所をひとつづつ見つけては塞いでいく修復工事に近いです。
原因が一ヶ所であれば、そこにパッチをあてれば一気に解決するのですが、複数ヶ所塞いでも漏れる場合があります。
そうなると、結局フォトショップ上でアウトラインを引き直す羽目になります。もう、これは運次第です。
イラストの三枚おろし
そんな中、このイラスト切り抜きで一番苦労したイラストは、イラスト描画でも一番時間がかかった“超人の疾走”イラストでした。

やはり境界線が多いので、雨漏り修繕(笑)が大変だったことに加え、このイラストだけは三層作成をしなければならなかったからです。
動画をご覧になっていただければわかると思うのですが、このイラストは前列、中列、後列と、徐々に超人が増えるという演出を施しています。
この演出は、動画企画が立ち上がった当初から決定していました。それくらいやりたかった演出だったんですよ。
ですので、一枚絵を三枚におろすという(笑)作業が必要なわけです。3枚に複製したイラストを
- 前列イラストは中列、後列を消去
- 中列イラストは前列と後列を消去
- 後列イラストは前列と中列を消去
と、それぞれ2列ずつ消去していく必要があるんですね。
ただ途中で気づいたんですよ。

あれ?
これ前列、中列の加工だけでよくね?
と。何を言っているかというと、下の図のようなことです。

アニメーション設定をするときに、イラストの縮尺と座標をピッタリ合わせて重ねれば、後列は加工なしの一枚絵のままでいいことに気づいたんです。
だって…前列、中列はすでに表示された後なんだから、同座標でピッタリと重ねちゃえば差異がわからないし、後列だけ出現したように見えるじゃないですか。
この方式ならば、中列も前列、後列両方消す必要はなく、後列だけ消せばいいわけです。これで作業が半分に減りました。
そして最後は前列、中列が残ったデータを流用し、中列を消せば前列だけのイラストが出来上がると。

いやいや、当たり前でしょ
とおっしゃるかもしれませんがね。当事者、意外とヘッポコなこと多いです(苦笑)。いや~、気づけてよかった。
ゴミ処理部隊投入
そして、無事に切り抜きが終わったわけですが、新たな問題がまた生じます。バックに細かい汚れが多々ついている場合が多いのです。
紙をスキャンするので、白地背景に小さくついていた物理的なゴミや汚れも、そのまま画像にしてしまうんですよ。でもそれをスキャン前に完全に除去するって不可能です。
すると、イラストは無事に切り抜けたとしても、その周りに存在していた細かいゴミや汚れが切り抜かれないで残ってしまうことが多いんですね。

これに気づかずに部材として次工程に回しちゃうと、背景が濃い場所にイラストを載せたときに、妙に目立つ時があるんですよ。
ですので、これも消しゴム機能で可能な限り除去です。それでも残りますけどね…(泣)。
書き文字も透過データに
またイラストの他に、手書きの書き文字も独立した透過データにしました。原寸運用だと、文字が小さすぎて読めない、という最悪な事態を招くからです。
動画はおそらく8割以上の方がスマホで見るはずです。つまりスマホで再生される画面上で、目視できないと意味がないんですよ。
そのためにも、あとで微調整ができるようにしておくべきだと判断したわけです。

これも一つずつ、汚れをチマチマと除去していきました…なかなかにつらい。
そんな地味な作業を繰り返し、イラスト、書き文字の部材が透過データですべてそろいました。では次のフェーズへ進みましょう。

パワポレイアウト設定
次に、パワポの基本レイアウトを決めます。
今回は語り口調のアルバム動画なので、背景は作文を演出させる原稿用紙と鉛筆にしました。なにやら小学生の宿題っぽくて、ノスタルジックかなあと。
そして上に載せるイラストが浮き立つよう、濃度をある程度下げます。これが基本の台紙となるので、様々なイラストを仮置きして、一番邪魔にならない濃度を探るわけです。
次にテキストブロックの配置。作文演出なので、文字の向きは縦書きでしょう。そのテキストブロックを左右に配置し、真ん中をイラストスペースとしました。
テキストのフォント選定、および文字ポイントの大きさは重要です。これが見づらかったり、小さすぎたりすることは許されません。だって読みづらかったらおしまいですからね、動画。
しかもほとんどの方がスマホで閲覧する可能性が高いので、スマホの小さな画面でも、しっかりと文字が読めることが、絶対条件なわけです。
というわけで、確実性をとってフォントは太ゴシックにしました。全体が作文演出ということで、できれば教科書体を使いたかったのですが、文字の太さにいまいちパンチがないんですよ。
これで前述したような“読みづらさ”が生じると嫌なので、やめました。一発勝負はそれが怖いです。

テキストの面積は、左右2行までとしました。片方しかテキストブロックがない場合は3行も可です。要はイラストのスペースを一定にしたかったんですよね。
そしてテキストブロックの位置は、全スライド固定にします。テキストブロックの位置や大きさに差異があると、スライドがめくられたときにそのエリアが細かくブレているように見えて鬱陶しいので、それを避ける意味もありました。
文字ポイントもやや大きめに設定です。これもスマホでの読みづらさを絶対に回避する、という意志の表れです。
これにより、事前に書いたテキストがあふれる場合は、収まるように泣く泣くカットしたり、表現を変えたりと、何度かリライトを行いました。
基本的に文章が長くなる性質の人なので(苦笑)、この作業はよく発生します。もっとシンプルに文章が書けるようになりたい…。
イラスト配置・効果設定
ここまでできたら、次は各スライドに使用するイラストを、それぞれのスライドにとりあえず仮置きします。
そして影をつけた方が効果的だと思うイラストは、そのように設定しました。

影の種類もその時の構図に合わせて複数使い分けを行うことで、作品に変化を持たせたつもりです。

アニメ設定
ここまできて、ようやくメインの動画制作に入ります。
動画制作といっても、パワポ上に配置したイラストを
- どの大きさで
- どの位置に
- どのように出現させて
- どのようにアクションさせて
- どのように効果をつけるかという
- 一連のアクションの時間設定まで行う
という作業となります。
これをパワポの“アニメーション設定”で行うわけです。具体例をお見せしますね。
どの大きさで

こんな感じでロビンの大きさを決めます。
どの位置に

衝撃表現のイガイガ(笑)と、書き文字の大きさも調整し、3枚の材料のレイヤー順を決めてバランスよく効果的に配置します。
どのように出現させて

パワポの豊富な出現パターンから一つ選び、ロビンを画面にどのように出現させるかを設定します。
今回は「スライドイン」で上からドスンと。ここで下から『逆タワーブリッジ』っておかしいですからね(笑)。
でもってスライドが表示されてから「0.5秒後に入ってきて、0.3秒でドスンと全体表示、都合0.8秒使用」というような、表示秒数指示も設定します。
そして実際にどんな見え方になるのか再生して確認し、イメージ通りの演出やテンポになるまで微調整をします。
どのようにアクションさせて

次に“ドスン!”となったときの衝撃波を表現したかったので、ここは「ズーム」という効果アニメーションを設定しました。
落下してきたあと、“バイン!”と、心臓が脈打つようにイラストを拡縮することで、衝撃を表現したわけですね。
どのように効果をつけるかという

そしてさらに衝撃表現を派手にするために、激突と同時にロビンとイガイガを“ピカッ!”っと光らす効果「パルス」を設定しました。
これで『ドスン!→バイン!→ピカッ! 』の効果的な演出が設定できました。
一連のアクションの時間設定まで行う

このように様々なアニメーション設定を施し、一連の動作に何秒費やすか確認をします。
冒頭に書いたように、今回は“1スライド=3秒”を目安にしているので、効果がモリモリだと合計で3秒を超える場合があります。
その場合はどこかのアニメ設定を削ったり、効果の秒数を0.1秒単位で削ったりして、長くても2.8秒ですべての通しアニメーションが完了するように調整しました。
残りの0.2秒は、次のスライドまでの余韻とするわけです。アニメが終了と同時に次のスライドに進んでしまうと、あまりにバタバタしている印象となるので…。
以上、このような感じの作業を40スライド、すべてに対して行いました。
試写
アニメーション設定が一通り終わったところで、試験的にデータを動画に書き出してみました。
解像度設定をどうするか迷ったのですが
- 480P
- 720P
- 1080P
の3種類ですべて作成し、容量をチェックしてから決めようと思いました。
すると解像度の高い1080Pでも140MBと、規約上限の512MBに対して余裕であることが判明。せっかくですので高解像度の1080Pでいくことにしました。
試験動画ができ上ったので、ここで全体尺とアニメーションのおかしな部分をチェックし、さらにテキストの誤字脱字もないように校正をします。そんなチェックをしていると

スライドの切り替え…ページをめくるようなギミックが欲しいな…
と感じてきました。作文用紙をめくるような雰囲気が欲しくなったんですね。
それもパワポの「画面切り替え」設定の「ピールオフ」という効果を選択することで、思ったような演出を設定できました。

ただこの演出効果にかかる時間が40スライド分増えるので、尺を圧迫します。ですので、ちょっと高速かもしれませんが、めくり時間を0.3秒にしました。これならば
ということで、それまでの尺である120秒に12秒が加算され、
が全体尺となり、最大値の140秒に対してまだ8秒の余裕があります。最悪何かあっても、対応が可能なバッファとしてその8秒は確保しておきたいと思いました。
BGM設定
アニメーションの設定が完了し、全体尺がみえたところで、今度はBGMの選定に入りました。
前述したように、思い出アルバム風の動画なので、小田和正さんの『たしかなこと』チックな音楽が欲しいところです。
しかもその再生時間が、動画の尺である132秒(2分12秒)に近ければ最高です。そんな奇跡的なBGMを求めてネットを探っていると、こちらの素材サイト様を発見しました。

そして思い出系のBGM素材を探っていると、オルゴール風のやや切なげで懐かしい感じのするBGMである、すもち様作曲の『花束とクッキー』を発見しました。
しかもその再生時間は2分13秒! ほぼドンピシャです。おしりの部分は無音時間だから、1秒多くてもまったく問題ありません。
そしてさっそく楽曲をダウンロードさせていただき、パワポのファイルに「バックグラウンドで再生」で設定します。

そのあと再び動画書き出しをして視聴してみると…

よ…よくない? これ?
ちょっと自画自賛がイタイですが(苦笑)、楽曲の素晴らしさによって、私の稚拙な作品に大きな箔がついたことは間違いがありません。すもち様、ありがとうございます。
そして個人的に

ここ、特にイイ感じ!!
と感じたのが0分48秒の、曲調がより物哀しくなる部分です。
このときのシーンって、ちょうど大好きだったキン肉マンの連載が終了し、お別れをするシーンの開始部分なんですよ。そしてそのままⅡ世が始まるまでの、さびしい10年間が描写される部分なんです。

そんなドンピシャのタイミングでの曲調変化に、嬉々とした次第です…まあ偶然なんですけどね(苦笑)。それも奇跡だということにしておきましょう(笑)。
もしBGMをキャンセルして動画を観られた方がいましたら、ぜひ一度聴きながら観ていただきたいですね。
ちなみにすもち様のオフィシャルサイトはこちらになります。楽曲依頼のご相談等、できるようですよ。すもち様の優しい音楽に魅了された方はぜひ!
予約アップロード
以上をもちまして、イベント開催日時である2023年4月17日午前0時の2日前には作品が無事完成しました。あとはこれをTwitter上に予約機能を使ってアップロードするだけです。
ところがここで問題が生じました。アップロードが99%に到達したところで、何かに引っかかった感じで永遠に(笑)進まなくなるのです。


え!?
最後の最後でこのアクシデントって…!!
と、かなり困りました。何度やり直しても同じ結果になるんですよ。
いろいろと調べたのですがよく原因がわからなかったので、ブラウザ上でTwitterにアップできる動画ファイルに変換してくれる、無料の動画コンバーターサイトを使い、動画を書き換えました。
そしてその動画ファイルをアップすると…無事一発で成功しました。とりあえずホッと胸をなでおろしましたよ。いや~よかったです。
もし似たような現象が起きた方がいましたら、ぜひ参考にしてみてくださいね。
当日
あとは当日無事にお披露目できることを祈るのみです。やはり一番心配だったのが

…けっこう独りよがりの動画だからな…自己満すぎて引かれるかも…
という点です。
入れ込んだ作品ほど、客観的視点が盲目となる傾向があるので、それを恐れたんですね…と言いつつ、夜中の0時公開なので、当日はもうグーグー寝ていたんですけどね(笑)。
そして翌朝通知を見てホッとしました。私の想いに共感してくださるコメントが多かったからです。本当に嬉しかったし、2ヶ月におよぶ制作が報われた瞬間でしたね。
コメントしていただいた方々、いいね及びリツイートしていただいた方々、本当にありがとうございました。あらためて御礼申し上げます。
そして前述した通り、ゆでたまご先生からもありがたいコメントをいただけました。これにて今回の800回記念イベントも、大団円となったわけです。
おわりに
以上、私のお祝い動画は無事に世に出ることができました。実は公開後に、一枚イラストを載せ忘れていることに気づいて愕然としたのですが、大きな影響はなかったのでよしとします(苦笑)。
そして当日は私も含めてファンの方々のアートでTwitterのタイムラインは大賑わいをすることになります。本当にお祭り状態で、いろいろな方の作品を見るのが楽しかったですね~。
いくつかご紹介いたしましょう。
いかがでしたでしょうか。皆さん、キン肉マン愛にあふれていますよね。
以上、キン肉マンスグルシリーズ800回記念『祝スグルシリーズ800回お絵描き大会』に参加した話、およびメイキングでした。またこのような機会があれば、可能な限り参加してみたいと思います。
そして長らくお付き合いいただきありがとうございました。ではまた。


コメント
アキラさん、こんにちは。
サイトの方には初めて書き込みさせて戴きます。
色々と日々に余裕がなく、遅くなりましたがメイキング編全て読ませていただきました!
本当に熱量が物凄かったです。これに加えて日々のTwitter更新、サイトの更新(特に最近のキン肉マン感想はキレキレで楽しみにしてます)子育てに仕事など、全て並列処理していらっしゃるのが凄まじいです。
動画をパワポで、尺をキチンと逆算して秒数管理して計画を立てていく辺り、仕事出来る人なんだろうなぁと察せられます。それに加えて、40枚もの絵を(しかも楽しんで)描ける情熱にも嘆息しました。
ゆでたまご先生もそりゃ泣くよなぁ…。
最後、僕の拙作もリンクして戴いててありがとうございました。
これからもサイト更新を楽しみにしております!
ふくらはぎさん、こんにちは。
こちらでは初めまして、ですね。何やら不思議な気分です(笑)。
メイキングお読みいただきありがとうございました。熱量…とおっしゃいましたが、確かに充実した二か月間ではありましたね。時間を作る点においては、ぶっちゃけ奥さんの家事ありきが時間捻出の基礎となっていますので、ハミコさんに感謝となります。
今後とも楽しい発信ができればと思っています。お互いお仕事大変でしょうけど、少しでも笑える時間を増やしたいものですね。