80年代に電波を通じて念力を送った超能力者
ちびっ子のセキュリティホールを狙う黒船
子供のころというのは、えてして様々な超常現象に右往左往するという性質があり(笑)、良く言えば夢と希望にあふれた生活を送ることができ、悪く言えばコロリとだまされる生活をしているといえます。
私も御多分に漏れず、ちびっ子時代はそういった流れのど真ん中を生きていました(笑)。
そんなちびっ子のセキュリティホールを狙うかのような黒船が、80年代には襲来します。そう、スプーン曲げで一世を風靡した超能力者? ユリゲラーです。
彼は『水曜スペシャル』的な、ゴールデンの特番枠で派手に登場しました。
スプーンの付け根をシコシコと(この表現なんとかならんか(笑))なでるだけでグニャリと曲げてしまう様は、子供たちに衝撃と高揚心を植え付けました。
手品じゃない! 解明されていない何か別の力が働いているんだ!
と想像させるには十分なインパクトで、スプーンというありふれた日常品を使うことにより
ひょっとしたら自分にもできるかもしれない…!!
という期待感を持たせる演出法は秀逸だったと思います。
実際、これを見て台所にあるスプーンを手にとって念じたちびっ子は多かったことでしょう。
このように、“多数の人間を行動に移させる”という難題を、いとも簡単に実践してみた彼(テレビ局もか)の企画力は評価すべきであると思います。
念力を電波にのせるというギミック
彼の演出法で特筆すべき点は、生放送の電波に乗せて念力を送り、お茶の間で用意したスプーンを曲げる手助けをしたり、壊れた時計を直して見せる、と豪語した点です。
電波と念力をうまく融合させ、超能力を視聴者参加型のパフォーマンスにしたところが秀逸でしたね。
実際テレビの前にスプーンと時計を用意してしまいましたからね、私(笑)。まさに掌で転がされた状態です。
残念ながら私は彼の助力がありながらも超能力を発揮することはできませんでしたが、世の中ではいろいろ偶然があるんですね。
スプーンが曲がった!
時計が直った!
との報告が出てくるわけですよ。
そりゃ何万という壊れた時計が集まれば、1つくらいは電池の接触不良が回復して、チッチチッチ動き出すのもあったと思うんですよ。
でも“生放送”という演出と“偶然”がかけ合わされると、“信憑性”という答えが導き出せるんですね。なんか洗脳のテクニックとして使えるんじゃないかと思ってしまいますよ。
衝撃の“ジェリー藤尾事件”
個人的にこの特番で強烈に印象に残っているのは、番組のゲストとして自宅から中継で登場したジェリー藤尾です。
自分では『ジェリー藤尾事件』と勝手に呼んでいるのですが(笑)、彼はユリゲラーの念を見事キャッチし、スプーンを曲げて見せたのです。
スタジオにアラームが鳴り響き、番組MCが
おっと、ジェリー藤尾さん宅が呼んでいますよ!
なんていって、中継をジェリー藤尾宅に切り替えるわけです。するとジェリー藤尾夫人が
お父さんがすごいのよ!
なんて興奮して話だし、カメラがジェリー藤尾の座っている足元に散乱する、折れ曲がったスプーンを映し出します。
さっきから何本も曲げちゃうの!
なんていう夫人の解説の傍らで、ひたすらスプーンを擦るジェリー藤尾。
シコシコシコシコ…来たっ!!
と何かを感じるか否や、擦っていた手でスプーンをグニャリと曲げて見せたのです。
しかしその様は誰が見ても力技で曲げたのが明白であり、
強引すぎるぜ、ジェリー藤尾!
と、何百万人という視聴者が一斉に唖然とした瞬間でした。
日本中がそんな空気になっていることなど知る由もなく、ジェリー藤尾はさらなるスプーン曲げにトライし続けていました。
いまだに彼に何が“来て”いたのか、不思議で夜も眠れません(笑)。Mr.マリックならわかるのかな?
きてます!
って(笑)。
おわりに
その後ユリゲラーはペテン師だ、ウソツキだとさんざんに叩かれてメディアから消えていきました。
ただ彼が少年の記憶に夢のある時間を植え付けたことは確かであり、それが真実だろうとなかろうと、実害なく笑って当時を思い出せる記憶を残してくれたことには感謝しなければならないかもしれませんね。
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