第83回 ケビンマスク-その4

オレ流超人批評
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キン肉マンという作品史上、最強の人気を誇るのではないかと思われる超絶モテ超人! その人気はいったいどこにあるのかを考察するシリーズの第四回目は、彼の意外な根幹パーソナリティを暴く!
出身 イギリス
超人強度 117万パワー
必殺技

ビッグベン・エッジ
OLAP
タワーブリッジ
ロビンスペシャル

主な戦績 チヂミマン○
レゴックス○
イリューヒン○
キン肉万太郎○
デモリッションズ●
デモリッションズ○
ファイブディザスターズ○

 『キン肉マン』というシリーズ作品における“不動の人気者”であり、“稀代の色男キャラ”という名をほしいままにしているケビンマスク。

 なぜ彼がこんなにも読者を魅了し、かつ愛されているのか。その秘密を以下の6つの項目に分けてシリーズ解説をしていきたいと思います。

 前回の「その3」では、彼が持つ天性のルックスに、不良、孤高、一匹狼という“陰りあるパーソナリティ”が付加されることにより、彼がとんでもなく色気を持つキャラクターに成長したことについて考察しました。

 今回は“ケビンマスク4-陰りあるパーソナリティを形づくる正体”として、彼の根幹パーソナリティについてより深く迫っていこうと思います。

ケビンマスク4-陰りあるパーソナリティを形づくる正体

 彼の体からにじみ出ている、色気ある“陰りパーソナリティ”。彼を色男たらしめるこのパーソナリティですが、それを纏う理由として

あ~、彼は一度闇落ちしたからね…

と思う方は多いでしょう。

 しかし彼の言動をつぶさに分析していくと、実はある根幹パーソナリティがそれらを形成しているのではないか? という仮説が浮かび上がってきます。

 では彼の根幹パーソナリティとは何なのでしょうか。それは実は…

真面目

という、意外なパーソナリティだったんですよ。

 こう聞いて皆さんは

いやいやいや、ちょいワルな彼が真面目て…!

と思うかもしれません。私もそう思っていました。

 しかしながら、今では彼の根幹パーソナリティは“真面目”以外にあり得ないと断言できます。いや、もっと正確に言いましょうか。

彼はクソ真面目です

 それは作品きってのクソ真面目キャラである、あのジェイドさんと双璧をなすと言っても過言ではないほどに、です(笑)。

 ではなぜそのような仮説が浮かび上がってくるのかを、考察していきましょう。

“真面目”というパーソナリティ

 私は今回このケビンマスクを批評するにあたり、『キン肉マンⅡ世』のコミックス全29巻、そして『究極の超人タッグ編』全28巻を再読してみました。

 そしてその際、彼の言動をすべて抜き出して、表にまとめてみたんですよ。下のような感じで。

▲これで年末年始休暇が潰れました(笑)。

 …ん? 誰ですか? いま

ヒマだな~、アキラさん…

なんて思った人は(笑)! …まあいいや、その通りだし(笑)。

 で、その結果を見るに、彼の内面パーソナリティを構成する要素は、この“真面目”でほとんどを占められているという結論に至ったんです。正直な話、自分でもこの意外な結果に驚きました。

 そしてこの“真面目”という土台があるからこそ、彼の“孤高”や“不良”というパーソナリティは生まれることができ、その上でそのあふれる魅力を形成していることがわかるのです。

 ひとつずつ見ていきましょう。

真摯なワル

 彼が“孤高”というパーソナリティを手に入れる大前提として、自身の“あるべき理想の姿”、いわゆる“理想自己”を実現させるために行動する必要があります。

 彼は悪行超人養成所であるd.M.pからの脱退を表明するときに

オレはまだ超人レスラーとしては修行不足だ。もっと技術的にも精神的にも磨きがかかった時に再びおまえたちの前に姿を現すぜ…

と宣言をし、キン肉万太郎たちの前から姿を消しています。

 この宣言は、まさに彼が自分自身を見つめ直し、自分の未熟な部分を認め、理想に向かって行動を開始していく“キックオフ宣言”だったようにも思えます。

 そしてこの“理想自己”にたどり着くための行動において、彼は一切手を抜いていません。その点については、「その3」においてこれでもかと言わんばかりに考察してきましたよね。

 そんな彼の行動は、まさに“真摯”という言葉で形容できるものだと思うわけです。この真摯な行動力を、真面目と呼ばずに何と呼べばよいのか、私にはわかりません。

規範的なワル

 彼は家出をしたあとすさんだ生活を送っていたため、身にまとうオーラがアウトローのそれとなっています。いわゆる“無法者のワル”というイメージです。

 しかし彼の行動をつぶさに分析していくと、彼は“無法者”どころか、とんでもなくルールを遵守する“規範者”であることがわかります。いくつか例をあげましょう。

猛るMAXマンを制止

 以下は手負いのキン肉万太郎に、休む間もなく「次はオレと闘え!」と詰め寄ったMAXマンを制止したときの彼のセリフです。

万太郎は傷ついている。

今闘うのはフェアではない

正義超人と悪行超人との間には超人レスリング統一ルールがある。

正・悪超人レスリング統一規約第45条第7項だ。過去の悪行超人たちも…この45条だけは守り通した…

どんなに相手が憎くともあくまで相手と同じ条件で闘おうとするフェアな心…これは正義・悪行関係なく超人として持ち合わせなければならないスピリッツだ!

 ここでは彼の“フェア”という高潔な思想と、統一ルールの条項を隅々まで暗記しつつ、それを状況に応じて引き出し、かつ実行しようとする遵法精神の高さが見てとれます。

スカーフェイスの野望を阻止

 新世代超人の入替え戦において、悪行超人であることを隠して潜り込み、その再興を企んだスカーフェイス。

 しかし彼の過去を知るケビンが、その野望を阻止しようとしたときのセリフが

オレは不正は嫌いだ

であり、ここで彼ははっきりと“不正”を嫌悪しています。

 また、その不正の証拠をつかむため、八景島シーパラダイスの職員として園内に紛れ込んでスカーに揺さぶりをかけたり、入替え戦決勝前夜祭の会場ではボーイに扮してスカーを襲い、ここでも

オレは不正は嫌いだ。

いますぐ入替え戦を棄権しろ!

と、彼の規則破りを激しく糾弾しています。

 そしてスカーフェイスが万太郎に敗れた後、彼にかけた言葉が

オレのようになんの旗印も持たず、正当でフェアな方法で万太郎の首を狙うんだ

であり、またしても“フェア”という言葉が彼の口から漏れています。

 それらのことからも、彼が“不正”を嫌い、“公明正大”と“フェア”を是とした信念を持っていることがわかるわけです。

 なにせシーパラダイスの職員や、パーティー会場のボーイに扮してまで不正を正そうとするくらいですからね。その信念が相当なものであることが、その行動からわかろうというものです(笑)。

▲チャド言語を使って(笑)不正を糾弾。

 そしてそれはおそろく真面目で、規範的な精神を持っていなければ成立しない事象なわけです。

オリンピック開会式で逸る超人を抑止

 超人オリンピックの開会式において、血気盛んすぎて今にも暴れ出しそうなコマンドー・ジョーを中心としたいざこざに対し、彼は

ここで騒ぎを起こせば悪行超人とみなされ、超人オリンピック代表権も剥奪されてしまうぜ!

と、ピシャリとした苦言を呈しています。

 この一言によってコマンドー・ジョーは鉾をおさめ、結果セレモニーは問題なく閉幕します。ここで彼が発した言葉のトーンはワルのそれかもしれませんが、婉曲的に彼は

あなた、ルールをきちんと守りなさい

と言っているわけです(苦笑)。

 この行動はアプローチ方法は違えど、完全に学級委員長のそれであり(笑)、規範的、遵法的であることが彼のモラルであることを、端的に指し示していたといえるでしょう。

▲学級委員長・ケビンマスク

 そしてその姿は、同じく超人オリンピックにおいて、予選のジャンケンにぶーたれている超人たちに対し

いやなやつはここから出ていけ!!

と一喝した、彼の父親たるロビンマスクを彷彿とさせます。何とも血とはおもしろきものかな、という現象を垣間見た瞬間でしたね(笑)。

 このように、上記3つの例を見れば誰もが

ケビンてどんだけルールを守る人なん? 無法者キャラなのに…

という印象を受けると思うんですよ。そう、完全にやっていることがキャラクターのイメージと矛盾しているんです。

 その矛盾した様をあえて言語化するならば、

悪態をつきながら正論を言う

となるでしょうか。

 例えば車を運転中に赤信号につかまり、

チッ、赤信号かよ…!

急いでるから無視するぜ!

という、とんでもないドライバーがいたとするじゃないですか。そんな時に彼は

ダメですよ! 信号無視は!!

大事故が起きますよ!!

と注意するのではなく、

信号無視をしてお前が大事故を起こすのは勝手だが…それは運転技術に自信がない証拠だ。

一時停止というハンデを背負っても、いかにリカバリーできるかがオレたちの腕の見せ所だぜ…

と、ボソリと言う感じです。けっこうめんどくさい人ですけど(笑)。

 しかしながらこのような手法を取ることで、彼は“遵法”と“無法”という、二律背反する要素を見事に両立しているんですよね。

 他にも例えるならば、串カツのソースの二度漬け禁止については

カツの全体が見えていないから二度漬けするんだぜ…

全体をきちんと把握していれば、それに最適なソース量は狂うことなく算出できる…!

となるし(笑)、シルバーシートにどっかりと腰を下ろしている若者に対しては

お前の筋力は今座っている間にも、刻一刻と退化している。オレならばそんな退化は許せないね。

だったら今にもよろけそうなこのバアサンに席を譲った方がマシだぜ

となるでしょうか(笑)。悪態をつかれたバアサン、お気の毒ですけど(苦笑)。でも結果、優しいという(笑)。

▲悪態をつきながら正論を言うケビンマスク。

 そしてこの“悪態をつきながら正論を言う”というキャラクターは、彼独自の稀有なキャラクターとして根づき、他の超人たちとの大きな差別化となるのです。

ウブなワル(笑)?

 彼は行動力や判断力に優れ、かつ努力家なので、とても18歳とは思えない落ち着いた雰囲気があります。また、独力で生きてきたサバイバリティがあるため、濃厚なアダルトテイストも醸し出しています。

 しかしながら彼は意外と俗世間に疎く、会話の端々に初心うぶな一面が垣間見られることが多々あるんですね。いくつか例をあげますと

家出の理由は、親にエロ本が見つかったからだろ?

と、下ネタ系の冗談を言われて

そ…そんなことじゃない!

と、そのリアクションに困って憤慨したり、

d.M.pのTシャツカッコいい!

どこで売ってんの?

と、Tシャツの入手法という意外な質問をされて

い…いや、これは支給品だから…

と、言葉に窮しながらも真面目に返答してしまったり、

このチーム名はどう?

万太郎の“まん”にケビンマスクの“ケ”をくっつけて…

と、放送禁止級のワードが漏れそうになり

ああっ、それはダメだ~っ、口に出しては~~っ

と、慌てて万太郎の口を塞いだりしています(笑)。

 英国の超人なのに、日本語の放送禁止ワードにまで気を遣うという、彼の真面目ぶりの真骨頂を見た瞬間ですよ(笑)。

 また、時間超人の加速能力アクセレレイションに対抗するための作戦名を

ひっつき虫作戦だ!

と真顔で言い放ち、かつそのネーミングセンスがダサいことに気づいていないなど、なかなかに天然な一面も見せています。

 これらは彼がすべての物事に対して真剣に取り組んでいるからこそ出るリアクションであり、彼の“真面目”というパーソナリティを如実に示していると言えるのではないでしょうか。

 ただ彼のウブ要素をすべて引き出しているのが万太郎である、という事実も、作品中における二人の因縁や関係性の濃密さを強調しているようで興味深いです(苦笑)。

 そして唯我独尊的なキャラクターだと思われがちなケビンマスクが、

実はキン肉万太郎に振り回されていた、とても真面目なキャラだったんだな…

という実態が明らかになってしまったわけです。

▲実はかなりの被害者(笑)?

 この事実については、彼を批評すべく彼を深掘りすることで初めて気づいてしまったものであり、実は文章を書いている私も、その意外さにけっこう衝撃を受けている口です、はい(苦笑)。

究極のキャラ演じキャラ

 以上のように、彼の性格の根本には“不正”を嫌い、“規範”を遵守し、“物事”に真摯に取り組むという、どえらく真面目なパーソナリティがどっかりと腰を据えていることがわかります。

 彼にそのようなパーソナリティが根づいた要因には、ロビンマスクという高潔な超人の遺伝子を引き継いでいるという下地があること、そしてやはり幼い頃に受けたロビン家の教育による素養の影響が大きいと思われます。

 彼がどんなにロビン家を否定しようとも、高潔な遺伝子と幼少期に刷り込まれた教育は、例え道を踏み外したとしても彼の血肉となって身についているんですね。

 またそのことは、彼がどんなワルとなろうとも、彼から“真面目”というパーソナリティを奪うには至らなかったわけです。

 そしてその真面目さから生じる思考や信念、および行動が高潔であるからこそ、“孤高”や“一匹狼”という色気のある、魅力的なキャラクターを彼は構築でき、最終的には絶大なる人気につながっているのだと思われます。

 そう考えると、彼は家出をして親不孝を行う道を選びましたが、その時も

真面目に親不孝に取り組むぞ!

という意気込みだったのかもしれません。それこそ『完全親不孝マニュアル』といったような書籍を取り寄せて(笑)、

ふむふむ、まずは街中でケンカ三昧か

と学んでストリートファイトに真面目に勤しみ、

飲酒もマスト…と

と知ってマスク越しに液体をゴギュゴギュと飲み干す技術を真面目に手に入れ(笑)、

タトゥーを入れるのも効果的なのか!!

と悟って彫り師さんに

蜘蛛の巣をですね、こう背中全体に…ええ、そうですそうです。

そして…そうそう、一人ずつ追加していきたいんです!

なんて真面目に相談する、みたいな感じで、真剣に親不孝に取り組んだのでしょう(笑)。

 その姿は生まれついての“悪キャラ”というよりは、多分に“悪キャラ”になろうと演じている“悪キャラ”であると言え、その二つには大きな隔たりがあります。

 そして彼が生来持つ真面目な行動力は、不良化への真面目な反復行動につながり、それこそ彼が自分自身のことを

オレはろくでもないワルだぜ…

と錯覚するくらいに、“悪キャラ”としての完成度を高めたのだと思われます。

 その姿はもはや日々の真摯な努力によってワルになり切った、と言ってもよく、それこそ自己催眠に近いものだったのかもしれません。

 そしてその行動は結果的に

自分が真面目だということを忘れるくらい悪キャラづくりに没頭した真面目キャラ

という、わけのわからないパーソナリティを作り上げてしまったんですね(笑)。

 そして彼の根底に流れる“真面目”という性質は、誌面上で明確に認識することはできなくとも、彼の一挙手一投足を見ることで我々の頭には無意識に刷り込まれていたのではないでしょうか。

 それゆえ彼がどんなに悪ぶっていたとしても、

…でも本当は真面目で優しいんだよね

という無意識下での信頼感と安心感を我々に与えていたのではないかと、今さらながらに感じます。

 そして“根は真面目”という安心感をほのかに感じながら我々は、

ちょいワルでカッコいい!

孤高でセクシー!

という、彼の危険な香り漂うワルの魅力のトリコとなっていたのです。

 言うなればこの状態は

安全が担保されたスリルある火遊び

と表現することもでき、我々は彼の持つワルの魅力成分だけを、ぎゅっと濃縮された状態で副作用の心配なく安心して享受できた、とも言えるわけです。

 そしてそんな“根底に安心感のあるワル”だからこそ、彼は絶大な人気を博したのだと思います。

おわりに

 以上、ケビンマスクの魅力、特に彼の内面キャラクターの魅力を形成する根幹パーソナリティについて考察してみました。いかがでしたでしょうか。

 彼はワルになることに真面目に取り組んだことにより、自分自身が本当にワルだと勘違いするに至ったキャラクターだった気がします。

 そして“孤高”や“一匹狼”という色気ある彼の魅力は、ワルを演じることをとことん突き詰め、さらに高い理想自己を実現するために努力した結果、副次的に発生したものであることがわかります。

 つまり我々はその副次的産物にシビれてしまったわけです。その現象はある意味、彼のチャレンジが高い次元で達成されたことを証明したとも言えるでしょう。

 そして…ここで実は彼の前に、“真面目にワルを突き詰める”挑戦をした超人がいることに気づかされるのです。誰のことだかおわかりでしょうか?

 それは…ケビンマスクの父親であるロビンマスクです。彼は高潔な“貴公子”として八面六臂の大活躍をしていますが、一度闇落ちした過去があります。皆さんご存知のバラクーダ時代ですね。

 彼は2度キン肉マンに敗れた後、彼への復讐を果たすために、バラクーダとして悪に徹しようとしました。しかしそれに徹しきることはできず、その路線はとん挫してしまい、結局は本来のキャラクターである貴公子にターンするのです。

 そう考えると、ケビンマスクは“徹底的にワルを演じる”という、父親が達成できなかった挑戦を見事に達成し、己のパーソナリティとしたことが浮き彫りとなるのです。

▲ワルになりきり選手権では、見事父親に勝利。

 それはある意味彼が父親を超えた部分でもあると言え、父へのわだかまりを、家柄への反骨心を持っていた彼が、その復讐を果たした瞬間だとも言えるでしょう。

 そしてその復讐劇のクライマックスは、父親の親友の息子を打ちのめすこと、つまりキン肉万太郎に打ち勝ったときに他なりません。

 しかしその復讐の達成は、クロエの見事な導きにより、彼の積年のわだかまりを解消させる方向へと向かわせます。

 つまり彼は“真面目にワルを突き詰める”ことで親不孝を画策するも、逆に父の偉大さ、ロビン王朝の誇らしさを知ることとなり、結果的にあるべきポジションに回帰したキャラだったのではないかと思いました。皆様はどうお感じになられたでしょうか。

 さて、次回は多くのファンを魅了する、彼の“無敗伝説”という特別なる格闘ステイタスについて考察していきましょう。ではまた。

今回は高野さん、ぽんさん、サクラギさん、尾崎さん、愛知県26歳さん、myさん、yoshidaさん、K.JAGUARさん、TKマンさん、後藤さん、ケビンマスクさんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。

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