FILE.7 初代タイガーマスク

オレ流80's
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80年代に登場した革新的プロレスラー

金曜夜8時の衝撃

 その男は突然に現れました。

 いつものように金曜夜8時に合わせた10チャンネル(当時)の『ワールドプロレスリング』。

 観客にもみくちゃにされながら入場してきたその男の風貌は…なんか安っぽい虎? のマスクマン。

 アニメで『タイガーマスク2世』が先行放送されていたので、それがタイガーマスクを模していることは理解できたのですが、ちょっと笑いを誘うコスチューム。

 この時点では会場にいる観客、テレビの視聴者ともに

なんだアイツ(笑)

的なイメージを瞬間的に持ったと思うのですが…ひとたびゴングが打ち鳴らされ、彼が動き出すとそのイメージは一瞬にして崩壊し、

なんだアイツ(驚)

に塗り替えられるのです。

  まずリング上でフットワークを使い、サークリングしながら相手との距離をとります。

 かつてプロレスでフットワークを使うレスラーなど皆無でしたから、ボクシングやキックボクシングさながらのムーブに衝撃を受けるわけです。

 

 ちなみにこのサークリングをマネしているのが、ハリウッドザコシショウの“タイガーステップ”です。

 初めて見たときは、腹抱えて笑いました(苦笑)。すみません、余談です。

 そしてそこから繰り出されるキック攻撃、ローリングソバット。まあ見たことないアプローチですよ。

 プロレスのキックといえば相手を踏みつけるストンピング系が主流であり、彼のようなしなやかなロー、ミドル、ハイキックは存在しなかったんですね。

 そしてプロレスの定番である飛び蹴りのドロップキック。

 これがただのドロップキックではありません。その跳躍力たるやまるでゴムマリが跳ねたような感覚で、その弾力性に目を奪われます。

 組み合ってから展開されるレスリングムーブも今までにない速さがあり、目まぐるしく動くその姿に釘付けになりました。

 軽業師のような空中殺法も目を見張るものばかりで、浮いている時間が長い、という言葉が大げさでなく当てはまるような動きをするのです。

▲打点の高いソバット
▲異様に高い位置から
▲しなりの利いたジャーマン

 これらはすべて、プロレスリングにおける革命といってもいいくらいの、新しい価値観を築いたレスリングスタイルでした。

 そんな彼がプロレスという枠を超えた人気者になるのに多くの時間はいらず、まさに“タイガーフィーバー”ともいうべき社会現象を巻き起こしたわけです。

 そして彼は“正義の虎”、“ドリームヒーロー”的なキャッチフレーズとともに、絶対的ベビーフェイスとしてプロレス界で君臨し、連勝街道をばく進していきました。

無敵の虎を倒せ!

 ところがですね、私は強烈なアンチタイガーとしてプロレス中継に熱中していました、実は。

 まだ小学4年生くらいだったと思うのですが、すでに多数派に対して嫌悪感を抱くひねくれ思想が芽生えていましてね(笑)。

 アンチ巨人を筆頭に、強きものが下位のものに倒される構図、というものに快感を求めていたんですね。

 そんな感じですから、タイガーに襲いかかる数々の刺客を応援しました。ダイナマイト・キッド、ブラック・タイガー、小林邦昭などです。

 彼らは常にタイガーを窮地まで追い詰めるのですが、結果的には敗北してしまうので、私のストレスは溜まる一方でした(苦笑)。

▲ダイナマイトキッド
▲ブラックタイガー
▲小林邦昭

 そんな中テレビの前で一番熱狂したのは、小林邦昭がタイガーのマスクに手をかけ、その正体を暴こうとしたときです。

 いわゆる“マスク剥ぎ”という行為ですね。

いけーっ! ひっぺがしちまえーっ!!

なんて叫んでいましたから(笑)。

 タイガー憎し、という気持ちをそのような卑劣な制裁で消化しようとしていたんですね。嫌な子どもだなあ(苦笑)。

タイガーの正体は?

 しかし当時は本気で“タイガーの正体は誰なんだ?”という興味が湧いていました。

 そしてその疑問の回答を、刺客の方々が示してくれるのではないかと期待していました。

 結論をいうと、タイガーの正体は“佐山サトル”というレスラーだったのですが、当時は“確かに彼の可能性が高い”との噂はありましたが、実際のところけっこう謎だったんです。

 もちろん私が子どもで情報弱者だったからともいえるのですが、現代の覆面レスラーと比べると間違いなくその正体はわかりづらかったです。

 タイガーもインタビューなどでは外国語を使うとか、ずいぶんと自己演出していましたからね(笑)。

 当時少年サンデーで連載されていた『プロレススーパースター列伝』では、その正体にギリギリまで迫っていて、かなり興奮したものです。

 今考えると夢のあるいい時代だったなあ。

颯の如く消えた虎

  そんな感じで日本中を熱狂の渦に巻き込んだタイガーフィーバーですが、その終焉は意外と早かったです。

 デビューして2年半くらいでしたかね。大人の事情で所属団体である新日本プロレスから去っていきました。

 当時は大人の事情なんてわからないから、かなり残念でしたね。アンチのくせに、いなくなると寂しいという(笑)。

 裏を返せば私は彼の実力を存分に認めており、大好きだったんですね、彼が。

 実際、大学生になってからタイガーマスクのビデオ『猛虎伝説』が発売されたときは、レンタルしてVHSにダビングまでしましたから(笑)。

 その後それはDVDに再ダビングされるほどお気に入りのタイトルになっています。

 いやホント、今見ても彼の動きはまったくもって色あせていないんですよ。初見の方は衝撃を受けますよ、大げさでなく。

おわりに

 佐山タイガーが去った後、その虎のマスクは2世、3世、4世と様々な別レスラーに引き継がれていきました。

 それは佐山本人がいなくなっても、タイガーマスクというキャラクターには強大な商品価値が残ったことを示していたといえるでしょう。

 と同時に、初代タイガーマスクがわずか2年半の間で強烈な印象を世間に与えたことをも指し示しています。

 中身は違えど、その仮面ペルソナだけは引き継がれていくという現象は、プロレス界では初めてのことだったと思います。そこも革新的な部分だったといえますね。

 そうはいってもやっぱりオリジナルの初代・佐山タイガーが一番です。その革命的・革新的レスリングは、なかなか打ち破れないだろうなあ。

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